男子校で男子が伸びる本当の訳【男子校の先生座談会・後編】(3ページ目)

男の子が家で学校のことを話さないのは普通なの?

エデュ: 子どもが家で何も話さないことを保護者が心配している点については、どう捉えていますか?

京華中高・町田先生: 男子のタイプに2通りあって、学校でおしゃべりだけど家ではしゃべらないタイプと、学校ではおとなしいけれど家ではベラベラしゃべってしまうタイプ。圧倒的に前者が多く、このタイプのお母さんはしゃべらないことを心配します。一方後者のお母さんはうちの子どうしよう…とは当然なりません。

高輪中高・真壁先生: 男の子は学校のことを何もしゃべらないのが普通です。むしろ全部しゃべる子どもの方が心配ですね。

京華中高・町田先生: しゃべらなくなるほうが成長している証拠だとお母さん方には伝えたいですね。男の子は根本的には優しいから大学生くらいになると頼りになります。男の子が学校のことをしゃべらなくなったといっても慌てずにドンと構えていてください。そうしないと子どもが親離れしようとしているのを阻害してしまいます。

エデュ: 昔から子離れできない親のことは何かと言われてきましたが、今と昔と違う点はありますか?

京華中高・町田先生: ここ数年でまた差が出てきましたように感じます。全部知りたがる親御さんがとても多くなってきました。子どもや先生の一言一言が気になってしかたがない。たとえば、子どもが何かに合格したとき。先生が「お前頑張れよ、次もあるから」というと、親は「先生はこの子が合格したことを褒めてくれなかった。次のことばかりいって子どもがかわいそう」と言ったということを耳にしました。

こういったお母さんが増えてきているのは、お父さんの父性の喪失も影響しているように思います。「そんなことは気にしなくていいんだ。ちゃんと育っているんだから」というお父さんが今少ないですね。お父さんも一緒になって心配してしまう。だから余計母性が強くなって、お母さんが子離れできなくなることを増長していってしまいます。

エデュ: そういった親御さんが、お子さんのことについて先生に言ってくるときには、「大丈夫ですよ」と言ってもわかってもらえない気もしますが…。

高輪中高・真壁先生: 親御さんと同じ世代、もしくはそれ以上の教員が「大丈夫ですよ」と言うのと、若い教員が言うのと違います。やはり年上の教員の方が安心感もあって、思いを伝えやすい部分はあると思います。子どもたちを担任だけが見ている状態を学校は作ってはダメなんですよね。さまざまな年代の教員たちが学年、クラス関係なく、子どもを見ているというのを親がわかってくれると安心するように思います。

日大豊山中高・上沢先生: 本当にそうですよね。それだけではなくてお母さん同士のつながりでわかってもらえる部分もあると思います。たとえばいろいろ知りたがる新入生のお母さんに対して、先輩のお母さんたちが「学校に入れたんだから安心して。大丈夫だよ」と言ってくれたりもします。日大豊山にはPTAではなく「育友会」という制度があるのですが、そこでは、親御さんと教員、親御さん同士が上手くやっていけるように協力していこうという雰囲気があります。お互いをフォローしながら、みんなで子どもたちを支え合っていくような組織になっていてとてもいいですね。

edu’s point

子どもが自立できるように、子どものことを第一に考えて保護者を支える。時代が時代なので難しい部分はあるにせよ、そこを乗り越えていくためにはどう保護者と接するのがよいのかを学校全体で考えて、みんなで子どもを育てていくという学校の姿勢が伝わってきました。
大学進学のための学習サポートが手厚い学校を「面倒見の良い学校」とはよく言いますが、それだけではなく、保護者の子離れ、子どもの自立をサポートする学校が本当の意味での「面倒見の良い学校」と言えるのではないでしょうか。

学校の「面倒見の良さ」は、その空気感を肌で感じることでより一層理解できると思います。今回の座談会に登場した3校も参加する「男子中フェスタ」は、2020年6月14日(日)に日本大学豊山中学校を会場に行われます。都内男子校のほとんどが参加する大規模イベントです。男子校志望のご家庭はもちろん、男子校は選択肢にないご家庭も思春期の男の子を知る貴重な機会なので、ぜひ訪れてみてください。