2020年中学入試結果分析 中堅男子校で受験者数が増加(3ページ目)

中学入試問題はより「考えさせる」傾向に

「2020年首都圏中学入試の結果と分析セミナー」では、算数と国語の出題傾向、理科と社会で求められる力として、次のようなことが伝えられました。

【出題傾向】

《算数》

・単元では、「割合と比」の出題する学校が目立った
・立体問題のバリエーションが増えつつある
・全体的に作業量が増加する傾向にある
・知識をベースに考えさせる問題が増える傾向になる

《国語》

・問題文のテーマとして、「他者や大人」に関するものが多くなってきている
・大人の恋愛、離婚、夫婦間の葛藤なども取り上げられている
・「弱者・病人・障害者」のテーマも今後増えていくと思われる
・自分で考える、想像する、発想する問題が増える傾向に
・科目横断的な問題も見られた

算数・国語ともに共通するのは、「考えさせる問題が増える傾向にある」ということ。今盛んに「思考力」と言われる中で、中学入試もその傾向が強くなってきていると言えます。

【求められる力】

《理科》

・身近な現象や小学校の教科書に載っていることを理解しておく
・基礎的な力を身に付けた上で、それをベースに、データを読み取る力、そして思考力を身に付ける
・さらに時事にも目を向けること

《社会》

・基礎学力を踏まえた応用力を問う問題が増加し、問題文が長文化する傾向にある
・語彙力、国語力(読解力)が求められる
・時事問題に関しては、大問まるごと時事問題という学校も増加
・秋以降に起こった時事についても出題された

理科・社会は基礎知識をベースに、関連知識を絡めて考え、答えを導き出す応用力や、長文を読んで理解する国語力が求められています。

たとえば理科では、麻布中学校では、お菓子を作る工程を科学的な知識をもとに考えていく問題、栄光学園中学校では、スパゲティを用いた実験結果が問題文として出され、それをもとに考察させる問題、聖光学院では、リニアモーターカーの仕組みに関する問題が出題されています。「【解答速報2020】2020年中学受験のおもしろ問題〜麻布、栄光、聖光の理科」より)

社会では、開成中学校では、2019年8月にお台場海浜公園にて開催されたオープンウォータースイミング大会での「トイレ臭」に関する問題、駒場東邦中学校では、ダイバシティ時代に必要な他文化への理解に関する問題、渋谷教育学園渋谷中学校では、新聞配達で取り入れられた新サービスに関する問題と、単なる時事問題ではなく、社会的な背景を踏まえ、考え抜いて答えを導き出すという問題でした。(「【解答速報2020】社会の問題・課題への関心が問われる 難関中学社会の入試問題」より)難関中学社会の入試問題」より)

また、入試問題は多くの学校で夏休みに作られるため、時事問題の出題範囲もその頃まで、いうことが言われてきました。しかし2020年の入試では、12月4日にアフガニスタンで銃撃され亡くなられた中村哲さんを取り上げた学校がありました。時事は入試のために勉強するのではなく、常に関心を持ってほしいという学校側からのメッセージであるようにも感じます。

中学受験は、大枠は変わりませんが、世の中の動向とも密接に連動し、少しずつ変化しています。親御さん世代の受験の様相とかなり異なっていることでしょう。こういった情報から得られる中学受験の知識は、志望校選びにも役立ちますので、ぜひ積極的に情報収集してみてください。