男の子が「幸せな人」になるために大切なこと(2ページ目)

35億分の1以外の女性を尊重できる男性に

35億分の1以外の女性を尊重できる男性に

インターエデュ: 著書で「男子校のアキレス腱」という表現が気になったのですが、女の子がいないことでネックになることはやはりあるのでしょうか。

おおたとしまささん: 女の子が仕事、結婚、出産など将来のことをどれだけ真剣に考えていて、そこには時間的な制限があることを、男子校の生徒は知らずにいると思います。共学にいれば、女の子のそういったリアリティを理解できなくても、感じることはできます。男子校において、女の子の将来に対する希望や不安を感じる機会がないことが「アキレス腱」だと思ったんです。男子校にいるとそれらを学ぶ機会が著しく少ない。男子校ではそこを補う教育をしていくべきだと思います。

インターエデュ: 確かに、男子校でこのようなことが学べたら、女性への理解も深まりますね。結婚観についてはどうでしょうか?

おおたとしまささん: 結婚に関して言えば、異性とのコミュニケーション力を身につけることがよく言われますが、実はそれはあまり関係なくて、一対一の関係の中で、人として相手のことを思いやれるかどうかなんです。伴侶となる人は異性を超えた存在となって、最大限の尊敬とともに、お互い成長していくのが夫婦だからです。相手のことを本気で好きになれば、実はこれは誰でもできます。

これからの男性が意識しなければならないのはむしろ、特定の女性以外の、ただの友だち、仕事上のパートナーのような女性たちの置かれた社会的状況を想像し、彼女たちの価値観や生き方を尊重できるかどうかなんです。「異性コミュニケーション」といっても、恋人や結婚相手に対するコミュニケーションと、その他大勢の異性に対するコミュニケーションではまったく質が異なるわけです。男と女は100%理解はできないかもしれないけど、まったく分かり合えないわけでもない。分かり合う努力を惜しまないことが大切で、それを“自分が恋した女性以外”にもできるかどうかなんですよね。

インターエデュ: そう考えられる男性が増えれば、本当の意味での「男女共同参画社会」が実現しますね!

取材を終えて

おおたさんが著書を通じて伝えたかったことは、子どもだけでなく、大人も「人としてどう生きていくか」という話であったように思います。他人からの評価を気にすることなく、自分軸で物事を考えられて、パートナー以外の異性への心配りもできる。男性、女性に限らず、「幸せな人」になるために大切なことではないでしょうか。
著書では、男子校の先生とおおたさんが対談形式で、いきいきと「男の子の子育て」について語っています。難解な内容ではなく、どの親御さんにもすっと入ってくる内容です。ぜひお手に取ってみてください。

前回の記事「男の子を伸ばすヒントは『男子校』にあり!」はこちら

おおたとしまさ さん

おおたとしまさ さん

教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。麻布中学・高校卒業、東京外国語大学英米語学科中退、上智大学英語学科卒業。株式会社リクルートから独立後、数々の育児誌・教育誌の編集にかかわる。教育や育児の現場を丹念に取材し、斬新な切り口で考察する筆致に定評がある。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許を持ち、私立小学校での教員経験もある。著書は『名門校とは何か?』(朝日新書)、『ルポ塾歴社会』(幻冬舎新書)、『追いつめる親』(毎日新聞出版)など50冊以上。

おおたとしまささん最新著書:「開成・灘・麻布・東大寺・武蔵は転ばせて伸ばす」祥伝社新書

「開成・灘・麻布・東大寺・武蔵は転ばせて伸ばす」

幼少期、中学受験期、思春期…。一般に男の子の発達の仕方は、女の子に比べると不規則的だともいわれています。自信をもって見守るのはとても難しいことです。母親からしてみると、男の子にふるまいが理解できないことも多いでしょう。父親からしてみても、戸惑うことが多いはずです。かって自分が子どもだったころと今とでは、社会環境が違うからです。「理想の男性像」を押し付けることは、男の子がいきいきと伸びていく上で足枷になることもあります。本書では、日本を代表する名門男子校の先生方に、男の子をどう育てたらいいのか、どう伸ばし、見守ったらいいのか、話を聞きました。特色ある教育で知られる名門校の先生方の話には、21世紀に生きる男の子の教育のヒントが詰まっています。