学力の根幹「漢字力」を家庭で伸ばすノウハウとは?

お子さまは、漢字を覚えるのが好きですか、嫌いですか。もし好きではなさそうと思われるなら、ぜひ手にとっていただきたい新刊があります。現役の小学校教諭が書いた『家庭学習で100倍「漢字力」を伸ばす!』です。今の小学生が置かれている状況を踏まえて、どうすれば漢字の習得がスムーズにいくかをバッチリ教えてくれます。

「漢字力」は、あらゆる学力の根幹

『家庭学習で100倍「漢字力」を伸ばす!』を読んで最初に驚いたのは、「漢字学習が好きか嫌いか」アンケートの結果でした。なんと2年生では半数以上の子が「好き」と答えているのに、6年生になると「好き」はたったの15%、「嫌い」が28%と逆転していました。

基本、子どもは、大人ができることは自分も早くできるようになりたいと思っているものです。それに新しいことを知るのが大好きです。だから低学年のうちは、漢字に対してもそんな素直な気持ちでいたのが、学年を重ねるにつれて何らかの理由で、漢字は「面倒」「つまらない」と思うようになってしまうようです。

その結果、習った漢字が書けるかどうかの調査では、全学年の平均正答率が59.0%とのこと(P.26)。つまり習った漢字の約40%を身につけないまま中学校に上がる子が多数存在するということです。身についていない漢字がたくさんあると、作文はもちろん他の教科の成績にも影響が出てきます。しかもその影響は大学進学後、社会人になっても続きます。書物やネットでの情報入手の時、メールやレポートを書く時などに、不安やコンプレックスのもとになるかもしれません。

しかしながら、現在の小学校では漢字学習にさける時間がほとんどないそうです。そのため漢字ドリルが宿題になるわけですが、実は漢字の習得には、学校の授業より家庭学習のほうがメリットがあると、土居先生。漢字は家庭学習で、その子の進度に合わせて進めてほしいとおっしゃいます。

小テストは満点でも不安が残る

本書の著者、現役小学校教諭である土居正博先生は、第一章「漢字嫌いな子はこうして生まれる」で、子どもが漢字嫌いになる原因について明らかにされています。

多くの小学校で漢字ドリルが毎日の宿題になり、それを毎日続けているうちにマンネリ化、子どもにとっては、マスを埋めるだけの苦行になってしまうことがよくあるそうです。以前、漢字ドリルのすべてのマスに、まずへん(偏)だけを書き、あとで残りのつくりを一度に書いてマスを埋める子の存在を聞いてとても驚いたことがありますが、このようなやり方では、漢字を覚えるという意識はほぼゼロ、先生や親御さんに叱られないためにこなす作業になりはてているのでしょう。子どもの貴重な時間を、成果のない苦行にしてしまうことは、なんとしても避けたいですよね。

さらに注目したいのは、ニセ「漢字が得意な子」が数多く存在しているとのこと。ニセ「漢字が得意な子」とは、学習直後の出題範囲が決まったテストではいい点をとるけれど、範囲が特定されない抜き打ちテストでは間違ってしまう子のことです。中高の期末テストを一夜漬けで乗り切って合格点はとれたものの、知識は何も身についていないといった状態と同じでしょう。

つまり、ドリルを毎日きちんとやって直後のテストでいい点がとれているだけでは、漢字が習得できているかどうかはわからないということです。お子さまに少しでもこうした兆候があるなら、すぐにも、この本を読んで対策を講じていただきたいと思います。

家庭学習で、漢字の運用力を高めよう

土居先生は、第二章「漢字の学習はなぜ大切なのか」で、漢字の読み書きが、語彙力・思考力の土台となっていることを、力説しておられます。

漢字は、ひらがなやアルファベットのような表音文字ではなく「表語文字(表意文字)」だから、漢字を身につけること自体が、私たちの思考に、教養に、生活の質に大きな影響を及ぼします。漢字は読み書きができるだけでは足りない、漢字を使いこなせる力=「運用力」が身について初めて「漢字力」がついたと言えるわけです。

では、漢字の「運用力」を高めるには、どうしたらいいのでしょう。漢字ドリルだけでは足りないのでしょうか。いや、そうではありません。漢字学習には、「望ましい学習の仕方」というものがあり、それを子どもたちが「自主的」かつ「効果的」に進めていけば、多くの子が漢字を使いこなせるようになると、土居先生は断言しておられます。土居先生が指導した生徒たちが、抜き打ちテストで平均点がいつも90点を超えるようになったというのですから、実証済みです。

第三章は、いよいよ、その「望ましい学習の仕方」の解説です。その詳細は本書を読んでいただくとして、絶対に守っていただきたいことは、漢字学習を子どもにとって楽しいこと、やりがいのあることにすること、そしてその子の習熟度にあわせた進度で進めることです。

日本語が母語である私たちは、日常会話の中で、同音異義語(例:家庭、過程、仮定など)を一瞬のうちに判別しています。それは小学校でスタートした漢字習得の成果です。小学校から大学までの成績はもちろん、社会に出てからも知性や教養の根幹となって人生を左右しかねない漢字力。その習得に頭の良し悪しはほとんど関係ありません。テストでいい点とるだけではない、楽しく漢字を学べる家庭環境を、本書を参考にしてぜひ整えてあげてください。お子さまの一生の宝となると思います。

家庭学習で100倍「漢字力」を伸ばす!

著/土居正博 小学館刊 定価1,650円(税込)

漢字力をぐんぐん伸ばす家庭学習法を大公開! 宿題としてほぼ毎日のように学習しているにもかかわらず、定着率が低く、学年が進むにつれて漢字嫌いになる子が多い漢字の学習。
本書は、今までの漢字学習の問題点を説き明かしながら、漢字嫌いの子どもも、宿題の漢字ドリルや練習ノートを使いながら漢字力を楽しく確実に身につけられる、とっておきの方法を紹介します。
子どもの漢字学習に悩んでいる保護者の方、学校の先生にぜひお薦めしたい1冊です。

〈 編集者からのおすすめ情報 〉
著者は小学校教諭として、漢字が苦手な多くの子どもの指導に当たってきた国語指導のスペシャリスト。イラストや図も満載でわかりやすく書かれているので、小学校高学年から読めます。