人の身体を治療する行為であるリハビリテーションを行うには、高度な専門知識としっかりとした技術が必要です。
そのため、この仕事に就くためには、国家試験に合格することが必要になってきます。
まずは指定の養成所(大学や専門学校)で必要な知識や技能を修得し、国家試験受験資格を得た後、国家試験に合格しなくてはなりません。この最後の難関ともいえる国家試験については、内容や難易度が気になるところでしょう。
ここでは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、義肢装具士の国家試験の概要や合格ライン、過去7年間の受験者数、合格率などを見ていき、合格するために大切なことは何かを探っていきましょう。
試験は例年2月中旬~下旬
マークシート形式で専門職として必要な知識が問われる
理学療法士・作業療法士
理学療法士、作業療法士の国家試験は、例年、2月下旬の日曜日※に行われます。どちらの試験でも共通なのが、一般問題では解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション医学、臨床医学大要の科目。
これに加え、理学療法、作業療法それぞれの専門的な知識が問われます。また、実習や実技で学んだ内容が出題される「実地問題」もあり、合格ラインは総得点の60%程度。出題範囲が広いうえに問題数も多いので、着実に勉強を積み重ねていく必要があります。
※2021年は2月21日(日)に実施。
言語聴覚士
試験は例年、2月中旬~下旬の土曜日※に実施されます。試験科目は基礎医学、臨床医学、臨床歯科医学、音声・言語・聴覚医学、心理学、音声・言語学、社会福祉・教育、言語聴覚障害学総論、失語・高次脳機能障害学、言語発達障害学、発声発語・嚥下障害学及び聴覚障害学。医学分野だけでなく、音声学、言語学や心理学など、幅広い領域から問題が出されます。2020年の国家試験の配点は1問1点で199点を満点とし、120点(60.3%)以上が合格となりました。
※2021年は2月20日(土)に実施。
義肢装具士
試験は例年、2月中旬~下旬※に、東京の1会場のみで実施されます。試験科目は、臨床医学大要、義肢装具工学、義肢装具材料学、義肢装具生体力学、義肢装具採型・採寸学及び義肢装具適合学で、理学療法・作業療法を含めたリハビリテーション全般に関わることや、工学分野の知識も問われます。年によって変動はありますが、一般問題を1問1点、実地問題を1問2点とした合計130点満点で、合格基準は78点(60%)以上です。
※2021年は2月19日(金)に実施。
視能訓練士
試験は例年、2月中旬~下旬※に、東京・大阪で実施。試験科目は基礎医学大要、基礎視能矯正学、視能検査学、視能障害学及び視能訓練学です。配点は一般問題が1問1点で129点満点、臨床問題が1問2点で40点満点となっています。2020年の国家試験では、169点満点で102点(60.3%)以上が合格。合格率はリハビリテーションに関する職業の中では最も高く、98%を超える年もあります。
※2021年は2月18日(木)に実施。
国家試験に合格することで、専門家としての第一歩を踏み出すことができます。今回この冊子で紹介した大学・専門学校は国家試験対策に力を入れている学校ばかりですので、学校が行ってくれるサポートも積極的に活用し、計画的に勉強を進めていきましょう。また、国家試験は問題数が多く、受験時間も長丁場になります。
試験中に最後まで集中力を保ち続けるのは簡単なことではありません。また、いくら実力があっても、必要以上に緊張してしまっては合格を手にすることは難しいでしょう。本番でも普段の実力を発揮できるよう、模擬試験や過去問対策で、問題の形式や試験独特の雰囲気に慣れておくことも大切です。
リハビリテーション職の国家試験にはに、既卒生よりも現役生の方が、合格率が高いというデータがあります。学校で学んだことを着実に身につけ、現役合格をめざしましょう。
国家試験の受験者数 合格率の推移は?
リハビリテーションに関わる職業の国家試験。2月に実施された後、毎年3月下旬に合格者発表があります。合格者は登録などの必要な手続きを経て、4月からは病院やリハビリ施設などの職場で治療家として働き始めることになります。
リハビリ職の社会的なニーズが高まっていると言われますが、実際のところ受験者数や合格率に変化はあるのでしょうか。2014~2020年の7年間の推移を見てみましょう。
リハビリテーションに関する職業の国家試験の受験者数と合格率(2014~2020年)
理学療法士 | 作業療法士 | 言語聴覚士 | 義肢装具士 | 視能訓練士 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
2020年 | 合格者 | 10,608人 | 5,548人 | 1,626人 | 804人 | 164人 |
受験者 | 12,283人 | 6,352人 | 2,486人 | 837人 | 208人 | |
合格率 | 86.4% | 87.3% | 65.4% | 96.1% | 78.8% | |
2019年 | 合格者 | 10,809人 | 4,531人 | 1,630人 | 819人 | 235人 |
受験者 | 12,605人 | 6,358人 | 2,367人 | 834人 | 263人 | |
合格率 | 85.8% | 71.3% | 68.9% | 98.2% | 89.4% | |
2018年 | 合格者 | 9,885人 | 4,700人 | 2,008人 | 889人 | 198人 |
受験者 | 12,148人 | 6,164人 | 2,531人 | 910人 | 232人 | |
合格率 | 81.4% | 76.2% | 79.3% | 97.7% | 85.3% | |
2017年 | 合格者 | 12,388人 | 5,007人 | 1,951人 | 775人 | 221人 |
受験者 | 13,712人 | 5,983人 | 2,571人 | 832人 | 254人 | |
合格率 | 90.3% | 83.7% | 75.9% | 93.1% | 87.0% | |
2016年 | 合格者 | 9,272人 | 5,344人 | 1,725人 | 833人 | 196人 |
受験者 | 12,515人 | 6,102人 | 2,553人 | 886人 | 233人 | |
合格率 | 74.1% | 87.6% | 67.6% | 94.0% | 84.1% | |
2015年 | 合格者 | 9,952人 | 4,125人 | 1,776人 | 788人 | 238人 |
受験者 | 12,035人 | 5,324人 | 2,506人 | 886人 | 264人 | |
合格率 | 82.7% | 77.5% | 70.9% | 88.9% | 90.2% | |
2014年 | 合格者 | 9,315人 | 4,740人 | 1,779人 | 863人 | 183人 |
受験者 | 11,129人 | 5,474人 | 2,401人 | 953人 | 221人 | |
合格率 | 83.7% | 86.6% | 74.1% | 90.6% | 82.8% |
2020年 | |||
合格者 | 受験者 | 合格率 | |
理学療法士 | 10,608人 | 12,283人 | 86.4% |
---|---|---|---|
作業療法士 | 5,548人 | 6,352人 | 87.3% |
言語聴覚士 | 1,626人 | 2,486人 | 65.4% |
視能訓練士 | 804人 | 837人 | 96.1% |
義肢装具士 | 164人 | 208人 | 78.8% |
2019年 | |||
合格者 | 受験者 | 合格率 | |
理学療法士 | 10,809人 | 12,605人 | 85.8% |
作業療法士 | 4,531人 | 6,358人 | 71.3% |
言語聴覚士 | 1,630人 | 2,367人 | 68.9% |
視能訓練士 | 819人 | 834人 | 98.2% |
義肢装具士 | 235人 | 263人 | 89.4% |
2018年 | |||
合格者 | 受験者 | 合格率 | |
理学療法士 | 9,885人 | 12,148人 | 81.4% |
作業療法士 | 4,700人 | 6,164人 | 76.2% |
言語聴覚士 | 2,008人 | 2,531人 | 79.3% |
視能訓練士 | 889人 | 910人 | 97.7% |
義肢装具士 | 198人 | 232人 | 85.3% |
2017年 | |||
合格者 | 受験者 | 合格率 | |
理学療法士 | 12,388人 | 13,712人 | 90.3% |
作業療法士 | 5,007人 | 5,983人 | 83.7% |
言語聴覚士 | 1,951人 | 2,571人 | 75.9% |
視能訓練士 | 775人 | 832人 | 93.1% |
義肢装具士 | 221人 | 254人 | 87.0% |
2016年 | |||
合格者 | 受験者 | 合格率 | |
理学療法士 | 9,272人 | 12,515人 | 74.1% |
作業療法士 | 5,344人 | 6,102人 | 87.6% |
言語聴覚士 | 1,725人 | 2,553人 | 67.6% |
視能訓練士 | 833人 | 886人 | 94.0% |
義肢装具士 | 196人 | 233人 | 84.1% |
2015年 | |||
合格者 | 受験者 | 合格率 | |
理学療法士 | 9,952人 | 12,035人 | 82.7% |
作業療法士 | 4,125人 | 5,324人 | 77.5% |
言語聴覚士 | 1,776人 | 2,506人 | 70.9% |
視能訓練士 | 788人 | 886人 | 88.9% |
義肢装具士 | 238人 | 264人 | 90.2% |
2014年 | |||
合格者 | 受験者 | 合格率 | |
理学療法士 | 9,315人 | 11,129人 | 83.7% |
作業療法士 | 4,740人 | 5,474人 | 86.6% |
言語聴覚士 | 1,779人 | 2,401人 | 74.1% |
視能訓練士 | 863人 | 953人 | 90.6% |
義肢装具士 | 183人 | 221人 | 82.8% |
※ena新セミ「合格ガイド2021」より作成
受験者数は増加傾向 職種により合格率にはばらつき
今回取り上げた5つの職業のうち、最も受験者数が多いのは理学療法士で、毎年12,000人前後が受験し、約10,000人が合格。7年前と比べると受験者数、合格率とも増加傾向にあります。一方で、義肢装具士の受験者数は多い年でも260人程度。2020年はこの7年間で最も少ない208人でした。将来性が高い職業ですが、受験資格を取得できる大学や専門学校が限られていることもあり、大幅な増加にはつながっていないようです。
合格率をみてみると、毎年のように90%を超え、5つの職業の中で最も高い割合なのが視能訓練士です。大学や専門学校でしっかりと学習を進めれば、十分に合格を狙える資格といえるでしょう。これとは対照的に、合格率がやや低めなのが言語聴覚士です。
特に2020年は65.4%と、この7年間で最も低い割合でした。言語に関する分野は専門性が高く、直感的に理解しにくいこともあって、難易度が高くなるようです。
コンテンツガイド
特集
- 01Special Talk
リハビリテーション職の可能性 リハビリテーションのお仕事紹介
- 02理学療法士・インタビュー
- 03作業療法士・インタビュー
- 04言語聴覚士・インタビュー
- 05その他のリハビリのお仕事
- 06国家試験について
リハビリテーション関連の職業をめざせる!
学校図鑑- 07東京都
- 08関東6県
- 09養成校一覧
-
- リハビリテーションのお仕事紹介
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- 作業療法士・インタビュー
- 言語聴覚士・インタビュー
- その他のリハビリのお仕事
- 国家試験について