合格率トップの塾に聞く! 公立中高一貫校の入試と対策

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圧倒的な人気を誇り、激戦が続いている公立中高一貫校。その入学者決定で行われる「適性検査」では、大学受験でも必要とされる力“思考力・判断力・表現力”が試されます。その入試と対策について、都立中高一貫校10校と千代田区立九段中等を含めた11校の合格率トップの塾「ena」の小学部部長 青木先生に話をうかがいました。

公立中高一貫校入学を決めるのは「報告書」と「適性検査」

小学校からの“秘密”のお手紙「報告書」

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ena小学部部長:青木先生

公立中高一貫校への入学資格を得るためには、小学校が作成した「報告書」を受検する中学校に提出し、2月初旬に実施される「適性検査」を受ける必要があります。

まず報告書ですが、こちらには5・6年生次(4年生が含まれる場合がある)の各教科(国語・社会・算数・理科・音楽・図画工作・家庭・体育の8教科)の成績を3・2・1(もしくはA・B・C)の3段階評価したものや学習の記録、特別活動の記録、行動の記録、出欠の記録等が記載されます。この「報告書」は通知表とは別に作成されるものです。

報告書は厳封された状態で学校から手渡されるので、生徒も保護者もその内容を知ることはできません。中身がわからないので不安にもなりますが、青木先生は、「通知表の評価がよくて、授業態度も良い、提出物を期限まで出すなど生活態度も良ければ、3がつく可能性が高いでしょう」とのこと。お子さまの普段の学校生活の様子も保護者は気にしておく必要があるようです。

「適性検査」で試される力は“思考力・判断力・表現力”

次に「適性検査」ですが、こちらは私立中学校の入試で実施されるような教科別の試験ではなく、教科の枠を超えた総合的な力を測る問題が出されます。身の周りの事象や社会問題等を題材とし、文章・図等で表現する問題が中心で、総合的な学力・問題解決能力を試すことに主眼が置かれています。

適性検査は3種類あり、作文の問題を出す適性検査I、算数・理科・社会の複合問題を出す適性検査Ⅱ、理系の問題を出す適性検査Ⅲがあり、その3種類の適性検査をすべて課す学校もあれば、IとⅡだけの学校もあります(下記表参照)。

■2018年度入試 適性検査の実施概要

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出典:ena -都立中の入試概況-より https://www.ena.co.jp/chuko/examination/

適性検査Ⅲを導入している学校は、2018年度に初導入した白鷗を含めて2019年10月時点で現在6校。青木先生によると、「今後導入校が増える可能性もなくはない」とのことです。

さて、表には「独自」と「共同」とありますが、これは問題作成における過去の経緯が関係しています。都立中高一貫校が開校した2005年から2013年までは、すべての学校が独自で問題を作成していました。それが2014年の入試からは、共同作成した問題と各校が独自に作成した問題との組み合わせにより適性検査が実施されています。

ではなぜ、問題を共同で作成するようになったのでしょうか。

「適性検査の問題は、教科横断型・複合型の出題となっており、多くの問題が記述式の問題となっています。単純に正否が決まる記号問題などと違い、思考過程まで含めて採点の対象にすることができます。一方でそれは採点の公平性を保つことの難しさや、膨大な量の採点業務も生み出します。従来の適性検査の問題では、記述型の問題でどこまで書けば得点となるのか、複数の解答が考えられる問題において、いずれの解答であっても得点となるのか、などの不明瞭さがありました。しかし、現在の都立中高一貫校の適性検査の問題では、記述式の問題のメリットをそのままに、客観的に正解が決まる、指示に従って答えればその答えしかありえない、といった採点の公平性も保たれるような問題となっているのです」(青木先生)。

公立中高一貫校ごとに異なる!「報告書点」と「適性検査」の配点

続いて、報告書と適性検査の配点について学校別に見ていきましょう。

■学校別の報告書と適性検査の合計点

学校名 報告書(満点) 適性検査(満点) 満点合計
白鷗 200 800 1000
小石川 200 600 800
両国 200 800 1000
桜修館 300 700 1000
武蔵 400 1200 1600
立川国際 200 800 1000
大泉 200 800 1000
富士 200 900 1100
南多摩 200 800 1000
三鷹 200 800 1000
九段 200 800 1000

■学校別の報告書点と適性検査の得点比率

表2
出典:ena -都立中の入試概況-より https://www.ena.co.jp/chuko/examination/

わずかの差ではありますが、得点比率の違いから、学校それぞれに入試の特徴があることがわかります。また、私立ほどの個性はないにしても、学校独自に問題があるのは、学校の望む生徒像があるということです。

以上のことを踏まえると、公立でもお子さまに合った学校選びをすることが大切だと言えます。

公立中高一貫校受検対策、絶対外せないポイントとは?

適性検査の作文は「文章力」より問いに「正対」すること

3種類ある適性検査の中でも特に受検生が苦戦するのが「適性検査I」です。その作文の評価ポイントと対策について青木先生にうかがいました。

【評価ポイント】
読書感想文など、小学校で宿題として出される作文では、内容より文章力があるかないかで評価が相当左右されます。しかし、適性検査の記述問題はそういう観点では採点されません。たとえば「本文の内容を踏まえて、あなたの意見を自身の体験を踏まえて書きなさい」という問いだったとしたら、

・本文の内容の要旨を正確に捉えているかどうか
・自分の意見がちゃんとその要旨の方向性に従ったものになっているかどうか
・それを具体化したものとして適切な例が挙げられているかどうか
という部分で採点されるのが適性検査の作文なのです。

問題文で問われていることに対して、その答えとして適切なものを、適切な形で答える。それを、都立中の先生方は『正対する』とおっしゃいます。

【対策】
適性検査は45分間で行われます。その限られた時間の中でいかに表現したいことをまとめて書けるかということが重要になってきます。考えながら手を動かせるぐらいでないと、最後の問題までたどり着きません。時間内に書き終わらない、書くことがまとめられないというお子さんには「書写」が有効です。過去問の模範解答を写す、入手できるのであれば優れた文章を書く小学生の作文を写すとよいでしょう。写すことで書くスピードも身につきますし、文節でのまとめ方、表現の仕方が体得できます。

対策の大前提は、小学校の勉強を理解していること

作文以外の適性検査対策については、次のようなアドバイスがありました。

「共同作成の導入以降は同じコンセプトで問題を作成しているので出題傾向は例年共通です。つまり、過去問を初見で解いて点数を取れるようだったら合格できる試験になると思ってよいでしょう。

私立中の受験では、公立の小学校で習う範囲の算・国・理・社の入試にしてしまうと差が出ないため、難易度を上げた問題が出されます。一方、公立中高一貫校の適性検査の問題は、小学校の学習指導要領の範囲内で作られています。さらに適性検査という教科横断型のものにすることで、算・国・理・社の基礎的な力が身についているかどうかを測れるように作られています。

よって、大前提として小学校の勉強を理解していること。言ってしまえば当たり前ですが、これが最重要ポイントなのです。その上で、適性検査の独特な出題方式に合わせた解法を練習していきましょう」(青木先生)。

中学受験生に伝えたい! 塾講師からのメッセージ

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最後に青木先生から私立、公立中高一貫問わず、中学受験に取り組むすべての子どもたちに向けた温かいメッセージをいただきました。

「中学受験は、人生の中でも最も特殊な試験、受けなくてもよい試験です。でも、わざわざハードルを越える道を選んでいる。そこが一番重要だと思います。ハードルを越えようとする限りは、当然しっかり助走をしなければいけなくて、トレーニングをしなければならない。その上で、結果的にそのハードルを越えられても、越えられなくても、そこでトレーニングをしてきたことがとても大事なのです。そして、他の子が遊んでいるときに勉強しているっていう、精神的にも辛い局面を耐え抜き入試を迎えたこと。そこからくる成長がすごく大きいものだと思っています。

やるからにはちゃんと準備をして、本気で立ち向かってもらいたいなと思います。本気で立ち向かった経験であれば、それが合格につながろうと不合格につながろうと、そこで成長したことはなくなりません。未来がどういう形になったにしてもちゃんと成長につながるような試験にしてもらいたいなと思います」。

公立中高一貫校を目指そうかなと思った方も、私立中高一貫校を受検するけど公立も気になる…といった方も、情報収集することで新しい発見があるかもしれません。エデュナビではさまざまな学校情報や受験対策をご紹介していますので、ぜひ記事を参考にしてお子さまの進路選択にお役立てください。