2021年入試に向けた公立中高一貫校の入試と対策

圧倒的な人気を誇り、激戦が続いている公立中高一貫校。その入学者決定で行われる「適性検査」では、大学受験でも必要とされる力“思考力・判断力・表現力”が試されます。その入試と対策について、都立中高一貫校10校と千代田区立九段中等を含めた11校の合格率トップの塾「ena」の小学部部長 青木先生に話をうかがいました。

公立中高一貫校入学を決めるのは「報告書」と「適性検査」

小学校からの“秘密”のお手紙「報告書」

ena小学部部長:青木先生
ena小学部部長:青木先生

公立中高一貫校への入学資格を得るためには、小学校が作成した「報告書」を受検する中学校に提出し、2月初旬に実施される「適性検査」を受ける必要があります。

まず報告書ですが、こちらには5・6年生次(4年生が含まれる場合がある)の各教科(国語・社会・算数・理科・音楽・図画工作・家庭・体育の8教科)の成績を3・2・1(もしくはA・B・C)の3段階評価したものや学習の記録、特別活動の記録、行動の記録、出欠の記録等が記載されます。この「報告書」は通知表とは別に作成されるものです。

報告書は厳封された状態で学校から手渡されるので、生徒も保護者もその内容を知ることはできません。中身がわからないので不安にもなりますが、青木先生は、「通知表の評価がよくて、授業態度も良い、提出物を期限まで出すなど生活態度も良ければ、3がつく可能性が高いでしょう」とのこと。お子さまの普段の学校生活の様子も保護者は気にしておく必要があるようです。

「適性検査」で試される力は“思考力・判断力・表現力”

次に「適性検査」ですが、こちらは私立中学校の入試で実施されるような教科別の試験ではなく、教科の枠を超えた総合的な力を測る問題が出されます。身の周りの事象や社会問題等を題材とし、文章・図等で表現する問題が中心で、総合的な学力・問題解決能力を試すことに主眼が置かれています。

都立中高一貫校の適性検査について見てみましょう。適性検査は3種類あり、作文の問題を出す適性検査I、算数・理科・社会の複合問題を出す適性検査Ⅱ、理系の問題を出す適性検査Ⅲがあり、その3種類の適性検査をすべて課す学校もあれば、IとⅡだけの学校もあります(下記表参照)。

■2019年度入試 適性検査の実施概要

適性検査Ⅲを導入している学校は、2018年度に初導入した白鷗を含めて2019年10月時点で現在6校。青木先生によると、「今後導入校が増える可能性もなくはない」とのことです。

さて、表には「独自」と「共同」とありますが、これは問題作成における過去の経緯が関係しています。都立中高一貫校が開校した2005年から2013年までは、すべての学校が独自で問題を作成していました。それが2014年の入試からは、共同作成した問題と各校が独自に作成した問題との組み合わせにより適性検査が実施されています。

なぜ、問題を共同で作成するようになったのでしょうか。

「適性検査の問題は、教科横断型・複合型の出題となっており、多くの問題が記述式の問題となっています。単純に正否が決まる記号問題などと違い、思考過程まで含めて採点の対象にすることができます。一方でそれは採点の公平性を保つことの難しさや、膨大な量の採点業務も生み出します。従来の適性検査の問題では、記述型の問題でどこまで書けば得点となるのか、複数の解答が考えられる問題において、いずれの解答であっても得点となるのか、などの不明瞭さがありました。しかし、現在の都立中高一貫校の適性検査の問題では、記述式の問題のメリットをそのままに、客観的に正解が決まる、指示に従って答えればその答えしかありえない、といった採点の公平性も保たれるような問題となっているのです」(青木先生)。

では実際にどんな問題が出題されるのでしょうか。「速報! 2020年度適性検査分析」の各学校の分析結果を見てみると、適性検査Iの共同問題では、文章1と文章2の二つの文章が与えられ、問題1、問題2では読解問題、問題3では作文問題が出題されます。2020年度入試の問題2では、文章1と文章2の両方を参照して答えさせる出題形式でした。問題3は例年どおり、問題の指示に確実に従い、かつ文章内容をふまえつつ、自分の意見を展開する形で作文するという問題でした。

適性検査Ⅱの共同問題の2020年度入試では、大問3題、それぞれの大問に小問3題の構成でした。文章や資料をもとに考察し、自分の考えを書くなど思考力が試される問題です。

適性検査Ⅲを課している学校はすべて独自問題です。大問2題、それぞれの大問に小問3題構成の学校が多いようです。解き方の説明、計算の理由を記述させる問題も出題されます。

このように問題数が少なく、記述が多いのが適性検査の特徴です。また例年から大きく出題傾向が外れることがないので、過去問をやることはもちろん、過去問に準じた問題演習をやることが対策として大切になります。

公立中高一貫校ごとに異なる!「報告書点」と「適性検査」の配点

続いて、報告書と適性検査の配点について学校別に見ていきましょう。

■学校別の報告書と適性検査の合計点

学校名 報告書(満点) 適性検査(満点) 満点合計
白鷗 200 800 1000
小石川 200 600 800
両国 200 800 1000
桜修館 300 700 1000
武蔵 400 1200 1600
立川国際 200 800 1000
大泉 200 800 1000
富士 200 900 1100
南多摩 200 800 1000
三鷹 200 800 1000
九段 200 800 1000

■学校別の報告書点と適性検査の得点比率

参照:都立中高一貫校入試の概況 | 都立中受検の手引き

わずかの差ではありますが、得点比率の違いから、学校それぞれに入試の特徴があることがわかります。また、私立ほどの個性はないにしても、学校独自に問題があるのは、学校の望む生徒像があるということです。

以上のことを踏まえると、公立でもお子さまに合った学校選びをすることが大切だと言えます。