お話をうかがった方

KAKERU幼児教室 代表 宮澤裕介先生
複数の教室で幼児教育に20年以上携わる。講師として1歳児から年長児まで指導(体操・行動観察・総合クラス・ペーパー)。カリキュラム作成、模試運営、入試解析、保護者向けセミナー・願書添削等の業務を行う。講師育成にも力を入れ、研修会や、勉強会を定期的に開催。
エデュママ社員突撃隊

おすずさん 年間数百校以上の学校や塾を訪問する営業部長。小学校1年生と2年生のママでもあり、中学受験を目指しているのでママ目線で学校や塾選びを考える毎日。愛読書は受験情報誌
有名私立小に続々と合格する理由とは
おすずさん:慶應義塾幼稚舎、早実、暁星を始め、私立小学校を目指すご家庭が憧れているような有名校に続々と合格者を輩出しています。なぜこのような高い結果を出せているのでしょうか。

宮澤先生:近年の受験では「言われたことをやる子」ではなく、「言われたことの意味を考えてやる子」を求める傾向が強くなっています。KAKERUではこうした変化にいち早く着目し、指導していることが、志望校合格に結びついているのだと思います。
例えば行動観察の授業では自由遊びをさせることがあります 。自由遊びで「ボーリングの道具を使って自由に遊びましょう」と発問されたとします。実際に遊ばせると、知らない子同士でうまく遊べない子がいるわけです。その場合、一度遊ばせるのを止めて、自由とは何なのか意味を考えさせるのです。考えさせるといっても一から考えるのは難しいので、あらかじめ選択肢を与えて選ばせています。
①自分だけが楽しくて良いのか
②みんなが楽しいことが大事なのか
みんな②を選びます。②が大事なのであればその為にどんなことが必要かを教えます。そうすると、順番や投球方法などをバラバラに行った場合の方が楽しくないことが分かり、むしろルールがあった方が楽しいということに気付くのです。
次に、外の世界に目を向けさせます。社会にあるさまざまなルールに触れ、ルールはみんなが楽しくなるために作るもの、そしてその為にはルールを変えることもできる事を教え、社会にもルールがあることを気付かせます。
納得して行動する点、言われていることの意味を考えている点、さらには願書や面接での回答内容とリンクする点、この3点をしっかり身につけさせていることが、高い合格者数に関係していると思います。また、授業では、学校側が意図することを考えて、単にルールを守ることを教えるのではなく、社会や生活と結びつけて指導することを心がけています。
おすずさん:学習環境も整えていらっしゃいますよね。電子黒板を使った授業では、先生が作っている見本が大画面に表示されるのでとても分かりやすかったです。

宮澤先生:環境面にはこだわっています。ペーパー学習でつまずく原因のほとんどは、動いたらどうなるか想像できないところにあります。例えば、回転や重ね図形を教える際、動いたところを見たことがない子に、回ったらどうなるか、重なったらどうなるか、と質問して消去法などのテクニックを教えるだけでは証明ができない。数学で言うと公式だけ教えている状況です。その点、電子黒板を導入したことで、なぜそうなるのかテクニックだけでは推測の域を出なかった答えを立証することができます。生徒たちの理解度も確実に上がったと思います。
おすずさん:体操と行動観察の授業で使っていた教室がとても広いことにも驚きました。ここまでの広さの教室は珍しいんじゃないですか。
宮澤先生:体操の部屋は長辺16メートルあって、バトミントンのコートよりもひと回り大きいです。都内の幼児教室でこの広さを確保しているところは他にないかと思います。
おすずさん:スタート時の姿勢や、両足を揃えて着地しているかなどを先生がしっかり見ていて、うまくできていなかったら戻ってもう一度やらせるなど、細かく指導されていますね。


宮澤先生:体操で大事なことは、細かく指導しながらも、練習量をこなすことなんです。「失敗しても大丈夫!!」という言葉をよく聞きますが、それは何度もトライできる環境が整ってこそではないでしょうか。この広さであれば指導員を多く配し、10人以上の生徒がいても十分指導できます。幼児教室と体操教室に別々に通っている子もいると思いますが、ここではペーパーの授業も体操も行動観察も、すべてハイレベルの学習を同じ場所で受けられます。その為、お勉強と、体操教室を別々に通う必要がなくなります。
おすずさん:親御さんたちが熱心にメモを取っているのにも驚きました。
宮澤先生:子どもを預けて親は外で待つ幼児教室も多いですが、うちは必ず参観してもらいます。見ていなければ、子どもがどこにつまづき、どこができていないのか、先生がどういうふうに教えているのかが分からないですよね。
受験では、いろいろな噂が飛び交います。100点の指導というのはありませんが、指導法は多くあります。なぜその指導が間違えているのかを保護者が知らないとお子さまがかわいそうです。
例を挙げると、縄跳びの跳び方です。縄跳びがうまい人の跳び方を真似すればできるようになると考えてしまうのは危険です。なぜなら、うまい人が行っている跳び方=できるようになるやり方ではないからです。イチロー選手の打撃フォームや、意識していることを真似してもイチロー選手になれないのと同じです。
縄を回せないのに脇を締めたり、手首を意識しても縄は回りません。そうしたことが分からないまま何カ月も教室に通ってできなかったら、自分はダメなんだと思ってしまいます。私たちは家でも繰り返し練習できる方法を、保護者の方にも見て納得して欲しいと思い参観してもらっています。週1時間の授業と同じことを家で毎日1時間やれば7倍の勉強になりますからね。
行動観察で高評価を得るために大切なこと
おすずさん:行動観察は小学校受験ならではの試験科目です。親にとっても経験がない人がほとんどだと思いますが、ポイントはどこですか。
宮澤先生:行動観察は例えるなら、会社で仕事をすることにとてもよく似ています。結果を出すために、課題を理解し、計画を立て、チャレンジし、失敗を振り返り活かす、共有するなどまさに仕事をしているようなものです。
私たちは、実際の試験では、集団行動やグループワークを想定してテストを作っているのだと分析しています。以前は、発言力や、提案力だけ重視されていましたが、今では学校の授業のスタイルが変わり、小集団のグループワークが多くなってきました。そうしたことから相手の意見を尊重した上で、自分の考えを述べる、または確認する・共有するなど提案以外の行動も重要視されています。
ではどのように行動を身につければよいかが課題ですよね。
保護者からは「どうしてうちの子は確認をしないのですか?」とよく質問されますが、行動を人が身につけるためには「経験」が大事です。「経験」とはその行動に対する「振り返り」なんです。
「振り返り」では「確認」をしなかったことに気付かせ、「確認」をしたほうが良かった事を教えます。でもその前に、指導の準備段階として「確認」という行動自体をさせます。そして「確認」することのメリットを十分に理解させます。この段階を経てから「確認」したことが良かったと振り返ることができるのです。
おすずさん:今日の行動観察の授業では、チームでボウリングゲームをして、チームメイトにアドバイスしたり、倒れたピンを元に戻すのを手伝ってあげたりすることの大切さを指導していましたね。

宮澤先生:毎回、さまざまなテーマがあるんです。今日は「人に教える」というテーマでしたが、来週は「目配り気配り心配り」というテーマでやりますし、「挑戦する」というテーマもあります。
行動観察のテストの評価は非常に複合的です。人の個性や特徴は一つではない。アイデアを出すのが得意、話を聞くのが上手、意見をまとめるのがうまい、みんなを引っ張っていく力がある、気配りができるなどいろいろな個性があって、その個性はご家庭がその子をどう育てているかにとても影響されるのです。授業を受けてどんな特性がお子さまにあって、どの部分を伸ばしていきたいかによってお子さま自身が変わっていくと思います。
おすずさん:自分の子どもの個性を見極めて伸ばせばいいのでしょうか。
宮澤先生:それはとても大事です。ただ少し難しいのは、受験での行動観察は、グループになったとき、他の人がしない良いことができるということにポイントが高くつきます。集団の中でうまく立ち振る舞うには、メンバーによって自分の良さをうまく出せるかどうかが大切だからです。いつも真っ先に自分の意見ばかり言う人は社会ではうまくいかないように、集団行動においても同様です。さまざまなスキルを持っていて、意見を出すのが得意な人でも、みんなが意見を出しているときには、聞き役になって、意見をまとめる人が評価は高いですよね。僕は提案が得意だけど、そのほかにも聞く、教える、まとめることができる、というスキルをバランス良く持てたら一番良いですね。一つだけ突出していて他が全くできないということにならないように育てることが必要です。
おすずさん:ちなみに家庭学習では何をどのくらいしたらいいのでしょう。
宮澤先生:ペーパーでは、朝と夜1時間ずつはしたほうがいいですね。量についてはお子さまが理解期にいるのか定着期にいるのかによっても変わります。理解できていないのに量だけやろうとしても効果は期待できません。KAKERUではペーパーだけでなく、体操も、行動観察の対策も、家でも練習できる方法をお伝えしています。