中央大学の子ども向け講座に潜入取材! テーマは「哲学」!?(2ページ目)

保護者も思わずうなった振り返りタイム

振り返りの時間には保護者が同席。子どもたちの議論の結果に感心していました。
振り返りの時間には保護者が同席。子どもたちの議論の結果に感心していました。

2度目の休憩の間に教室のレイアウトが変更され、最後は保護者の前で子どもたちがこの日考えたことや感想を発表しました。
教室は、子どもたちと先生だけの打ち解けた空気から、授業参観日のような少し緊張感があるものに変わりました。これまでの90分で、いかに竹中先生が巧みに「遠慮なく自分の意見を出せる場づくり」をしていたのかがわかります。
保護者を前にやや緊張しながらも、子どもたちは一人ひとり立派に自分の考えを述べ、我が子の姿に驚き、感心するパパ、ママが続出。終了後には「これは定期的にやらないんですか?」などとスタッフに尋ねる保護者の姿もありました。

知的財産を社会に還元することも大学の使命

「こどものための哲学教室」終了後、この日の講師を務めた竹中真也先生と、クレセント・アカデミー事務室の杉本育美さんにお話を伺うことができました。

インターエデュ: 今回の講座の狙いは何だったのでしょうか?

杉本さん: 実はクレセント・アカデミーとしても、こういった「こどもアカデミー」の開催は初の試みでした。ですが、今後も続けていきたいと考えています。
これまで本学クレセント・アカデミーでは、在学の学生はもとより、社会人向けの様々な講座を開催してきました。「法科の中央」らしい法学関係の講座だけでなく、人文科学や自然科学、外国語、スポーツの講座もあります。実は中央大学は哲学でも実績のある大学です。総合大学として、大学の「知」を社会に還元することも、大学の使命だと考えるからです。昨年(2018年度)からは新たに、知的財産を提供していく対象を小・中学生にまで広げていこうと考えました。
今、世の中には、凶悪犯罪とか、紛争とか、どう考え、対処していけば良いのかわからないような出来事があふれています。そんな不条理な、意味のわからないことの多い世の中にあっても、ていねいに物事に対峙し、考えていかなければなりません。その時に必要なのは今回の哲学教室を通じて得られるような「知」の力であり、それを子どもたちに身につけさせるのも、大学の役割なのではないかと考えています。

竹中先生: 現在、テクノロジーの発展はまさに日進月歩で、特に情報通信機器――パソコン、スマホ、ipadなど――の発展には著しいものがあります。その結果、多くの、あまりにも多くの情報がわたしたちに送られてきます。そうした情報をひたすら「消費」しているのがわたしたちの現状でしょう。しかし、そんな世の中だからこそ逆に、立ち止まり、冷静に目の前の出来事について考えを深めていく必要があるし、そうすることで経験したことのない新たな出来事に対処する力も身につくと考えています。慌ただしい日常生活の中で、一つのテーマについてあれだけ時間をかけてじっくり考えていくことはなかなかありませんが、今日の子どもたちには、そうした経験をしてほしいと思っていました。みんな本当に自分の言葉で、考えを深めてくれて、その点はとてもよかった。人前で自己表現をする経験というのは、この先どんな将来を選択したとしても子どもたちの中に残ると思います。

インターエデュ: 普段は大学生やシニア層の講義を担当していらっしゃるということで、難しさもあったのではないでしょうか?

竹中先生: そうですね。大人以上に、「出たとこ勝負」の難しさはありました。なので、アニメを見てもらったり、子どもたちを下の名前で呼んだりして、和やかな「場づくり」をすることを意識していました。

杉本さん: 今回、クレセント・アカデミーの講師陣の中でも受講生たちからの信頼の厚い、竹中先生にぜひにとお願いさせていただいたのですが、大成功でした。子どもたちとの接し方に、「愛」がありましたよね。

竹中先生: 哲学って、「とっつきにくい」とか「何の役に立つの?」とか思われる方も多いかもしれません。でも僕は、小・中・高生に哲学的な議論のやり方を伝えることはすごく有用なんじゃないかと思っているんですよ。議論の流れを作っていけるような人が、これからの社会で求められるのではないでしょうか。

インターエデュ: なるほど。本日は貴重な機会をありがとうございました!

竹中真也先生
竹中真也先生
1978年石川県生まれ。哲学博士。中央大学文学部兼任講師、中央大学 クレセント・アカデミー講師。

「総合大学の『知』を社会に還元することも、総合大学としての使命」。記者はこの言葉にハッとさせられました。その大学の発信を、私たちも受け止めていきたいものです。多くの大学で、学外に向けての公開講座が開催されています。お近くの大学について調べてみてはいかがでしょうか。