最新の中学受験事情に迫る! 本当に役に立つ保護者ための「参考書」

2021年の中学受験も激戦で幕を閉じました。新しい夢に向かって歩き出す受験生がいる一方で、モヤモヤとした気持ちを抱えたまま春を迎える保護者も…。「もっと中学受験について知っていれば…」そんな声も聞こえてきます。
これから中学受験をするご家庭には、中学受験に対する正しい知識を持って、穏やかな春を迎えてほしい。その思いが書籍「令和の中学受験」として形になりました。
著者のスタジオキャンパス代表、矢野耕平先生にお話をうかがいました。

保護者の価値観で選ぶのではなく、学校について正しく知った上で選択を

インターエデュ(以下、エデュ):本を出された経緯についてお聞かせください。

矢野先生:ここ数年、中学受験ブームが続いています。今年は、新型コロナウイルスによる影響も予想されましたが、受験者数は昨年とほぼ変わらないほど中学受験熱は高まっています。
しかしブームともなると、不確かな情報が一人歩きをし、当事者の不安を煽るようなことも増えてしまいます。そこで、保護者には冷静な目を持って中学受験を考えていただきたいと思い、執筆に至りました。

エデュ:本書では中学受験の実態について、客観的事実を正確に伝えていますね。

矢野先生:保護者が学生の頃の中学受験とは異なっていることも多いですし、学校も変化をしています。保護者の思い込みで志望校選びをしないように、あらゆる角度から「中学受験」の実情をお伝えしています。

保護者の価値観で、子どもの進学先は共学校しかないと考えるのは、お子さまの可能性を狭めてしまいます。男子校、女子校が存在する意味や、大学付属校のメリット・デメリットなどを正しく知った上で選ぶということが重要です。

エデュ:学校の大学実績にも鋭く迫っていますね。

矢野先生:大学合格実績見るときにチェックしたいポイントがいくつかあります。拙書では、学校が公表している合格者数からさまざまな分析をしています。例として、偏差値がほぼ同等の吉祥女子と頌栄女子の大学合格実績について比較しています。現役合格者数だけでは見えてこない、理系・文系の進学者数や、真ん中くらいの成績の子がどのレベルの大学に現役合格しているのかなど、進学先の傾向をつかめるような情報をまとめています。

確実に合格を勝ち取るための「受験パターンの実践例」を詳しく紹介

エデュ:第四章の「中学受験期の親子関係」ではうまくいかなかったケースもたくさん紹介されていて、何につまずいてしまったのか、そのポイントがよくわかります。

矢野先生:うまくいったご家庭のやり方を真似しても、つまずきの根本原因を理解していないと、やはりうまくはいかないものです。うまくいかなかった事例から「わが家の何が良くないのか」を客観的に捉えていただきたいと思います。

また本章では、男子、女子別に、安全校の考え方や午後入試の組み方について「受験パターンの実践例」を詳しくご紹介しています。
第一志望校に合格するのは、三人に一人もいないという現実があります。わずかな差で合否が決まってしまうのが中学受験です。したがって、確実に合格を勝ち取るためには、受験校の組み方が非常に重要になってきます。

エデュ:最後に、本書に込めた想いをお聞かせください。

矢野先生:拙書タイトルを「令和の中学受験」としたところに意味を込めています。

「令和」の典拠は『万葉集』の「梅花の歌」の序文からきています。これは大伴旅人の御宅で行われた「梅花の宴」の様子を綴ったもので、長く厳しい冬乗り越えて春を迎えた穏やかな気持ちが表現されています。

厳しい中学受験を終え、本当にわが子は成長したな、良い入試だったなと穏やかな心持ちで春を迎えられるような、そんな中学受験をご家庭で築いていきましょうという願いを込めました。そのためには冷静な目を持って落ち着いた姿勢で中学受験に臨むことが大切です。サブタイトル「保護者のための参考書」とあるように、本当に“参考”にしていただけたらなと思います。

令和の中学受験 保護者のための参考書

矢野 耕平著 講談社α新書 900円+税

令和の中学受験 保護者のための参考書

少子化、一流大学の合格者削減、そしてコロナ。令和に入って第3次ブームといわれる中学受験のルールが激変。親世代の「中学受験の常識」で臨めば、親子ともども不幸な結果に。中学受験専門塾で27年にわたって教鞭を執る著者が、令和版・中学受験「合格の法則」を披露する。わが子を苦しめないため、中学受験生の保護者に送る最新マニュアル。

序章 中学受験ブームがやってきた
第一章 中学受験向きの子、不向きな子
第二章 志望校の選び方
第三章 中学受験塾という世界
第四章 中学受験期の親子関係
終章 令和の中学受験

矢野 耕平(やの・こうへい) さん

1973年、東京生まれ。中学受験指導スタジオキャンパス代表、国語専科・博耕房代表。
大手進学塾で13年間勤務の後、2007年にスタジオキャンパスを設立し、代表に。自らも塾講師として、これまで27年にわたり中学受験指導を行っている。
主な著書に『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文春新書)、『旧名門校VS.新名門校』(SB新書)、『LINEで子どもがバカになる』(講談社+α新書)などがある。