受験生視点から描かれたもう一つの「二月の勝者」とは?

リアルな中学受験の実情を描いた漫画として大人気の「二月の勝者」。今年の10月からはドラマ版も放映スタートし、ますます話題になっています。そんな「二月の勝者」の初となるノベライズ版が10月6日に発売されました。

ノベライズ版の主人公は読者と同年代の受験生たち

ノベライズ版「二月の勝者」

ノベライズ版は、読者の多くが小学生の小学館ジュニア文庫から出されました。

漫画版では塾講師たちや、受験生の両親のことなど、大人たちの事情も含めて話が進んでいきますが、ノベライズ版で中心となって描かれるのは、成績上位のΩクラスに通う直江樹里、Aクラスの柴田まるみ、Rクラスの加藤匠とそれぞれクラスが異なる3人の受験生たち。原作と同様のエピソードが描かれていますが、ジュニア文庫世代にも読みやすいよう、同年代である受験生3人の視点で描かれているのです。

そのため、彼らが抱えている悩みや苦しみにフォーカスし、物語が進んでいくのが本書の特徴的なところでしょう。

子どもたちそれぞれの悩みと葛藤

本書では章ごとに話の軸となる子どもたちが書かれています。

第1章の主人公は鉄道が大好きな加藤匠。塾での授業中は勉強に身が入らず、本当にやりたいことを我慢しながら仕方なく勉強を続けていますが、次第に勉強に追い詰められ、塾にも行けなくなり、受験をやめたいとまで思うようになってしまいます。

第2章の主人公は登校児の柴田まるみ。彼女の親は無理なく行ける中学校をと考えていますが、通っている塾のあるOGとの出会いにより、現在の実力以上の学校を目指したいと思うようになり、クラスアップも果たしますが、周りとの差に苦しみます。

第3章は算数偏差値72をほこる直江樹里。行きたい学校をしっかり見据え、常に明るくポジティブな樹里は、算数はよくできるのに国語には難点がある状況です。しかし柴田まるみとの交流で自身の弱点に気付きます。

最終章ではまるみと樹里の話。成績は上がったものの、樹里との差に苦しむまるみと、自分にはない、まるみの良さに憧れる樹里。この二人が互いに刺激を与え合うことで、受験に向けてさらなるパワーアップにつながっていくのです。

そんな3人を導くのはやはり黒木先生を始めとした塾の先生たち。子どもたちの特性や性格を見抜き、生徒に合わせて指導していく様子は、頼れる先生たちという印象がより鮮明に見えます。

黒木先生たちにより、3人が中学受験に向けてどのように気持ちを切り替え、目標を見出していったのか、その過程が小学生にもわかりやすく表現されています。

同書の対象は「小学校高学年から」となっていますが、小説本文の漢字にはすべてよみがながふられているので、高学年からではなくても読めます。漫画版は保護者が、ノベライズ版はお子さまが読むことで、親子で『二月の勝者』の世界を共有できそうです。

小説 二月の勝者-絶対合格の教室-春夏の陣

著:伊豆平成  原作・イラスト:高瀬志帆

『小説 二月の勝者-絶対合格の教室-春夏の陣』

中学受験の関係者にこぞって読まれている超話題の漫画をノベライズ!
都内の中学で”御三家”と呼ばれる超名門校への合格者ゼロ、という残念な塾「桜花ゼミナール」吉祥寺校に、新校長としてやってきた黒木蔵人。
超名門受験塾「フェニックス」からきた元カリスマ講師だ。
彼は「生徒全員を第一志望校に合格させる」と言いきる。
そして黒木の下に新たに配属された部下が、新米熱血講師の佐倉麻衣。黒木の言動にいちいち違和感をおぼえるも、その実力を認めさせられる毎日を送っている。
そんな彼らのもとで受験勉強に励むのは、Rクラスで鉄オタの加藤匠、Aクラスで不登校児の柴田まるみ、そしてΩクラスで算数偏差値72の直江樹里ら新6年生だ。
3人の受験生達は、悩みもがきながらも、それぞれの天王山をむかえる。

著者

伊豆平成(いずの・ひらなり)さん

10月6日生まれのてんびん座。著書に『ふなっしーの大冒険 きょうだい集結! 梨汁ブシャーッに気をつけろ!!』、『NASA超常ファイル〜地球外生命からの挑戦状~』(ともに小学館)、『秘密結社でいこう!』、『テルマエ・ロマエ〜小説版〜』(ともにKADOKAWA)など。近著に『劇場版アニメ ぼくらの7日間戦争』ノベライズ(KADOKAWA)がある。日本バカカード協会会長。

原作・イラスト

高瀬志帆(たかせ・しほ)さん

漫画家。代表作に『おとりよせ王子 飯田好実』(徳間書店)などがある。週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて『二月の勝者−絶対合格の教室−』を連載中。