中学受験、夏休みの学習の進め方!タイプ別・塾別・学年別

今年は夏休み期間が学校によって異なることを受け、大手塾でも地域ごとに夏期講習の調整が行われました。特に6年生は、塾によって、進め方や確保できる家庭学習時間の違いが顕著です。そのため、今夏はよりわが子に合った夏休みの学習スタイルを見つける必要があります。
中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1の副代表、馬屋原吉博(うまやはら よしひろ)先生に、お子さまのタイプ別、塾別、学年別の夏休みの学習の進め方についてアドバイスをいただきました。

実りある夏にするための重要ポイント3つ!

最初に、馬屋原先生が挙げる重要ポイントを3つにまとめました。

①目標を設定すること

馬屋原先生
馬屋原吉博先生:SS-1の副代表・社会科教務主任。少人数制社会科授業「最速社会」で多くの生徒から支持を集める

この夏、何をすれば「がんばった」ことになるのか、具体的な目標を設定しましょう。まだ決めていないご家庭は、今からでも大丈夫です。これまでなかなか勉強に打ち込めなかったお子さまであれば、「宿題をやり切りながら、講習会に最後まで通い続ける」ことを目標にするのもよいでしょう。達成することができれば大きな成果となります。
テストを目標とする場合は、塾生全員が受けるテストに照準を合わせるのと、学校別オープンに照準を合わせるのとでは、夏後半の時間の使い方が変わります。具体的に決めていきましょう。

②塾の先生に相談をすること

多くの塾で夏期講習が進んでいます。「どうしても宿題が終わらない」というお子さまも出始める頃です。その場合はご家庭だけで悩まず、できるだけ早く塾の先生に相談しましょう。塾の先生がどんな意図でどんな授業をされているかは、同じ塾でも校舎やクラスによって異なることが多いため、聞いてみてはじめてわかることもあります。

③元気な状態で授業に臨めるようにすること

夏期講習に限らず、日々の勉強をうまく進めるコツは、塾の授業に元気な状態で臨むことです。夜遅くまで宿題をした結果、次の日の学校で疲れてしまって、塾の授業を聞けないという状態では、元も子もありません。特に夏は暑いので、体力も消耗しやすいです。睡眠時間をしっかり確保して、積極的に休息も取るようにしましょう。

6年生、塾別・お子さまのタイプ別夏休みの過ごし方

大手塾、SAPIX、日能研、早稲田アカデミーの6年生の夏期講習を見てみると、授業時間数に大きな差があることがわかります。

  夏期講習合計時間/分※1 夏期講習日数/日 夏期集中特訓合計時間/分※2 夏期集中特訓日数/日 学校がない日の講習開始終了時間
SAPIX 5400 18 1500 5 16:00~21:00
日能研 9280 30 0 0 14:00~20:35
早稲田アカデミー 9180 26 2700 5 8:50~21:30

インターエデュ調べ。
※テスト時間を含む。休憩等授業以外の時間は含まない。
※夏期集中特訓のSAPIX正式名称は「夏期集中志望校錬成特訓」。

日能研と早稲田アカデミーはSAPIXの倍近く、講習時間があります。また授業開始時間もそれぞれの塾で異なっています。
馬屋原先生は、「どの塾に通っているか、また、お子さまのタイプによっても夏休みの過ごし方は変わります」といいます。

そこで、お子さまの「タイプ別」・「塾別」でどのような生活パターン、学習のイメージになるのかを馬屋原先生が示してくださいました。

【お子さまのタイプ】

●タイプA

理解が浅かったり定着していなかったりする分野がまだ多く、「解いて弱点を見つけて埋めていく」という勉強よりも、誰かに教えてもらいながら総復習を進めた方が、現時点では効率が良いと考えられるお子さま。

●タイプA×SAPIX

SAPIXにお通いの場合、夏のメインテキストの内容が志望校の問題に比べて難しすぎるというケースがあります。どうしても家庭学習がうまく進まないようでしたら、塾に電話して家庭で復習するべき教材の優先順位を確認しましょう。講習の内容が消化しきれていない状態で錬成までやり切ると、達成感は得られるかもしれません。しかし、8月マンスリーで力を発揮するのは難しいことが多い傾向にあります。もちろん「それでもよし」(成果は秋に出てくる)と覚悟を決めて、ひとまず目先のことに集中するのもひとつの選択です。

●タイプA×日能研・早稲田アカデミー

保護者の方のお仕事や、小さいお子さまが家にいらっしゃるなどの都合で、家での勉強のクオリティを上げるのが難しいお子さんにとっては、日能研や早稲田アカデミーの拘束時間の長さは魅力です。しかし、今年は多くの学校が夏休みを短縮しているため、睡眠時間をしっかり確保するスケジュールでいくと、家庭での学習時間はほとんどとれません。したがって、秋以降の学習メニューに反映させるために、親御さんは1回1回の授業の内容の理解度を、さりげなくチェックしておいた方が良いでしょう。

●タイプB

SAPIXの模試偏差値が50後半、四谷大塚や日能研であれば60以上。今までの勉強がある程度うまくいっていて、9月以降、学校の名を冠したオープンが用意されている学校の合格を目標に勉強しているお子さま。

●タイプB×SAPIX

夏期講習でやることは少なくないとはいえ、授業がすべて16時からというスケジュールは、一度適応さえしてしまえばやりやすいでしょう。難関校受験生(に限りませんが)にとって、もっとも大切な時間は、難問に対し自分の頭でじっくりと考える時間です。これを確保しやすいのがSAPIXのスケジュールの大きな強みです。早起きする習慣ができているお子さまは、午後、仮眠をとってフルパワーで授業に臨むこともできます。錬成までやり切るのは大変ですが、マンスリーは通過点、本当の勝負は9月の学校別オープン、という意識で駆け抜けましょう。

●タイプB×日能研・早稲田アカデミー

家で落ち着いて勉強する時間を確保しにくいのが気にはなりますが、そこを嘆いても仕方ありません。授業中にしっかり頭を働かせられるよう、体調・体力最優先で臨みましょう。特に今年の日能研の夏は連休がありません。負荷が目に見えて身体に出ているようでしたら、思い切って半日~1日休むのも手です。それが何か「致命的」な結果をもたらすことはありません。ある程度身体を動かさないと調子が出ないお子さまは、事前にきちんとそのための時間をスケジュールに入れておきましょう。

6年生は夏期講習に全力投球を!

本

6年生は、連日の夏期講習と塾の宿題をこなすので精一杯というスケジュールも見えてきました。馬屋原先生は、「6年生は、空いた時間でやりたいと思っていた勉強は、ほぼできないと考えた方が良いでしょう。」といいます。

また、「夏休み期間の家庭学習は、算数で50%、残り50%が国語・理科・社会という配分になることが多いようです。SAPIXをはじめ、夏の算数の問題は難度が一段上がります。その中で、解法の暗記に終始しない理解を伴う勉強を進めるためには、やはりある程度時間が必要です。国・理・社に関しては、毎回の授業の確認テストの準備が最優先、+αの勉強をするのであれば何か1つか2つ、コレというテーマを決めてやり切りましょう」というアドバイスもありました。

6年生は、夏期講習ではじまり、夏期講習で終わる夏となるでしょう。しかし、「わかる」を「できる」に変えるには、どうしても一定量の家庭学習が必要になることが多いため、夏のがんばりが、すぐに結果として表れないことも多いようです。特にタイプAのお子さまは、8月や9月頭の模試のテストの結果を意識しすぎない方が良いケースがあると馬屋原先生はいいます。たとえ気持ちのよい結果がでなくても、夏のがんばりなしに秋以降の成績アップはありません。「できるようになったこと」「やり切れたこと」に目を向けながら、自信につながる夏休みにしていきましょう!