中学受験、夏休みの学習の進め方!タイプ別・塾別・学年別(2ページ目)

これからの中学受験は、子ども自身が主体的に臨む姿勢が今まで以上に大事になる

番今日している子ども

4年生・5年生の夏休みをどう過ごすかという前に、馬屋原先生は、ご家庭で話し合ってほしいことがあるといいます。それは、「何のために中学受験をするのか」ということ。なぜなのでしょうか。

馬屋原先生:2022年以降に中学受験をされるご家庭は、新型コロナウイルスの影響がどうなるかわからない中での受験生生活が続きます。想定したくない事態ではありますが、今後、緊急事態宣言が出され、また授業が全面的にオンラインとなるかもしれません。

多くの塾では、オンライン授業のクオリティを上げるために試行錯誤を繰り返しています。ただ、リアルの授業と比べたとき、オンライン授業は、受け身の姿勢で受験勉強をしている子や、塾に行って周囲の雰囲気や、先生の声かけを受けてなんとか勉強に向き合ってきた子たちと、自分の意志で勉強している子たちの差が広がってしまいがちです。

「何のために中学受験するのか」「誰のために受験勉強をがんばるのか」を、周囲の大人の言葉ではなく自分の言葉で意識できている受験生が「強い」のは確かです。6年生に比べればまだ時間のある夏休みに「何のための中学受験なのか」、親子でしっかり認識を合わせておけると理想的です。まだ、そういった話し合いができる精神年齢に達していない場合は、大人の側で準備だけでもしておきましょう。イレギュラーな事態が起こることが想定される分、日ごろから保護者間である程度の認識をすり合わせておくことが大切です。

夏休みは、中学受験の勉強と繋がる「実体験」を積む機会に

6年生は受験勉強一色の夏休みになります。6年生の夏期講習の学習ボリュームを100とすると、5年生は60~70、4年生は40ぐらいのイメージです。比較的余裕がある4年生・5年生のうちに、習ったことを実際に体験する学習をしてほしいと、馬屋原先生は強調します。

理科・社会は実体験と結びつくと知識が定着する

馬屋原先生:理科については、大手塾の授業で、「天体」の単元を4年生で1回、5年生で1回、合計2回扱います。天体はつまずくお子さまが多い単元です。よって、実際に星の動きを観察することをおすすめします。理想は星がきれいに見える山の上での天体観察。プラネタリウムでもよいでしょう。

社会については、今年はコロナ禍で気軽に旅行をオススメできないのが難しいところです。とはいえ、実際に歴史的な文化財などをその目で見るのは貴重な経験です。車があって移動できるようでしたら、稲荷山古墳や富岡製糸場など、今後の歴史の学習などで登場する史跡に行ってみるのもよいでしょう。
しかし、まだ授業で教わっていない史跡に連れて行っても、お子さまの印象に残りにくいのも事実です。外出にこだわらず、映像や資料を見るなど、家の中でできることを考えてみましょう。

こういった単元に紐づけた外出でなくてもよいです。たとえば深い森の風景を目にする、滝を訪れる、水平線に沈む夕日を眺めるという、自然を体で感じることが受験勉強にも活きてきます。
動物園、水族館で生き物をじっくり見て観察するという経験もよいでしょう。特に4年生のうちに、お子さまに実体験を積ませてあげるというのが、夏休みの過ごし方の最大のポイントです。

プラスαで4年生・5年生の夏休みに取り組みたい学習

3年生の2月から塾通いをはじめた4年生は、ようやく塾にも慣れてきたころです。5年生は、塾の授業の内容がぐっと難しくなってきています。
そこで、夏休みは前期の勉強を振り返りつつ、ステップアップをするためのポイントを押さえた学習がおすすめです。

4年生は「勉強の基本の技術」を身につけよう

馬屋原先生:4年生の夏休みは「実体験」にプラスし、お子さまが勉強の基本の技術を身につける機会にするとよいでしょう。
たとえば、「テスト直し」です。テストを受けたら受けっぱなしではなく、直しをするというのは、1回教えただけでは身につきません。テスト直しを当たり前にできるようにするには、4年生のうちが勝負です。できないことをできるようにするとは、どういうことか、根本を理解しているお子さまは6年生になっても成績が上がっていきます。

5年生は算数・国語で一気に難しくなる学習を重点的に

馬屋原先生:5年生の算数では、「比と割合」の単元で、実数ではなく割合で考えることを理解できず、苦手意識をもつ受験生が多くいます。習う最初の段階がとても重要なので、時間がある夏休みに復習しましょう。

国語については、問題として取り上げた物語文、論説文などが、子どもにとって身近な話題ではなく、体験したことのない話が多くなります。
すると、今まで自分の主観で答えて正解だった問題がとれなくなります。文章中の人物はどう思っているのかという客観的に読むトレーニングが必要となるので、夏休みに重点的に行うとよいでしょう。

edu’s point

これから暑さも本格的になります。体力が落ちてきて思うように勉強がはかどらない、やる気が継続しないなど、さまざまな悩みの種が出てくる頃です。保護者の方もイライラすることが多くなるでしょう。馬屋原先生は、塾の先生に早めに相談することをすすめています。親子だけで解決しようとせず、第三者の意見を取り入れながら、暑い夏を乗り切っていきましょう! エデュナビでも、中学受験専門家からのアドバイスをお伝えしていきます。

今馬屋原吉博(うまやはら よしひろ)

中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1社会科教務主任。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。大手予備校・進学塾で、大学・高校・中学受験の指導経験を積み、現在は完全1対1・常時保護者の見学可、という環境で中学受験指導に専念している。開成、灘、桜蔭、筑駒といった難関中学に、数多くの生徒を送り出す。

必死に覚えた膨大な知識で混乱している生徒の頭の中を整理し、テストで使える状態にする指導が好評。バラバラだった知識同士がつながりをもち始め、みるみる立体的になっていく授業は、生徒はもちろん、保護者も楽しめると絶大な支持を得ている。
著書に『CD2枚で古代から現代まで 聞くだけで一気にわかる日本史』(アスコム)、『頭がよくなる 謎解き 社会ドリル』(かんき出版)、『中学受験 見るだけでわかる社会のツボ』(青春出版社)などがある。