男の子が「幸せな人」になるために大切なこと

inter-edu’s eye
前回の記事「男の子を伸ばすヒントは『男子校』にあり!?」では、男子校の良さって何だろうという視点から、男の子の教育についてお届けしました。今回は、男の子が幸せな人生を歩み、「幸せな人」になるために、親は何を伝えてあげられるのか、おおたとしまささんの言葉から感じていただければと思います。

開成・灘・麻布・東大寺・武蔵は転ばせて伸ばす

今回取り上げた著書:「開成・灘・麻布・東大寺・武蔵は転ばせて伸ばす」
祥伝社新書

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自分軸で表現できることが「本当の自由」

教育ジャーナリスト: おおたとしまささん
受験や育児に悩む、お母さま方の気持ちに寄り添ったアドバイスが好評。

インターエデュ: 男子校で「女の子の目がない」ことについてもう少し詳しくお聞かせください。

おおたとしまささん: 男子校だと、女の子がいたら恥ずかしくてできないようなことでも、そこで失敗するリスクがないのでできてしまう。素の自分を出して、ひんしゅくを買ったとしても、そこは、単なる男同士のいがみ合いだけで、仲直りですんでしまいます。
もしこれが共学校だったら、女の子から「あいつってこういう男なんだ」っていうレッテルを貼られてしまうかもしれない。でも男子校にはそのリスクがない。逆に女の子の目を気にして、ちょいワルぶる必要もないんです。

インターエデュ: 本心で行動ができるのは、自由な感じがしますね。

おおたとしまささん: 異性の目を気にしないで、本当の自分は何をしているときが楽しいのか、何が好きなのか、そういう自分自身の素直な欲求を知ることができる。これは人生の中ですごく重要なことだと思います。
人からどう見られているのかを気にすることに、自分自身が囚われているとしたら、とても不自由で、人生を貧しくしているんじゃないかと思うんです。何をしているときが幸せなのかを分からない人ってたくさんいますから。

他人の視点ではなく、自分が何を欲しているのか、常に自分の軸で表現できることが本当の自由かと思います。 どう感じるのかを自分が常に問われている状態が自由で、「自由とは、問いの集合体である」と私は思っているんです。逆説的に言えば、問いから開放されない状態を「自由」と定義することもできます。
私が麻布で学んだことはそれなんだろうなと思います。

インターエデュ: なるほど! 「自由とは何か」を言葉にするのは難しいですが、これなら子どもにも伝えやすいですね。さて、ご出身の麻布の話がでてきたところで、おおたさんが思う麻布らしさとは何でしょうか?

おおたとしまささん: 麻布は、明治維新での負け組であった江原素六が創立した学校です。戊辰戦争で負け組となり、薩長に追われ沼津に避難して、水野泡三郎という偽名を名乗って潜伏しました。名前が「水の泡」っていうダジャレなんです。自分は貧乏な幕臣から成り上がってきたんだけど、世の中ひっくり返って、その努力が報われず水の泡になってしまった。そこでどうやって生きていこうかって考え、学校を作った。その生き様そのものが麻布の真骨頂だと私は思っているんです。

そういう意味では、例えば東大や一流企業といったエリート街道をつき進んでいるうちはまだ、麻布でもらった種は開花しにくい。自分の肩書きや身分を失って水の泡になったときにはじめて麻布で学んだことの真価が発揮されるんじゃないかと思っています。

私がフリーランスになったときに、はじめて麻布であることをいきいきと実感できたんです。自分を保証してくれるものはないぞと、自分の実力だけで生きていこうと思った時に根拠のない自信が湧いてきたんですよね。それを私は、「麻布という病」と呼んでいて、長所は「根拠のない自信」、特技は「屁理屈」、チャームポイントは「詰めの甘さ」と表現してるんです。

インターエデュ: 面白いですね! 麻布らしさが伝わります。

35億分の1以外の女性を尊重できる男性に

インターエデュ: 著書で「男子校のアキレス腱」という表現が気になったのですが、女の子がいないことでネックになることはやはりあるのでしょうか。

おおたとしまささん: 女の子が仕事、結婚、出産など将来のことをどれだけ真剣に考えていて、そこには時間的な制限があることを、男子校の生徒は知らずにいると思います。共学にいれば、女の子のそういったリアリティを理解できなくても、感じることはできます。男子校において、女の子の将来に対する希望や不安を感じる機会がないことが「アキレス腱」だと思ったんです。男子校にいるとそれらを学ぶ機会が著しく少ない。男子校ではそこを補う教育をしていくべきだと思います。

インターエデュ: 確かに、男子校でこのようなことが学べたら、女性への理解も深まりますね。結婚観についてはどうでしょうか?

おおたとしまささん: 結婚に関して言えば、異性とのコミュニケーション力を身につけることがよく言われますが、実はそれはあまり関係なくて、一対一の関係の中で、人として相手のことを思いやれるかどうかなんです。伴侶となる人は異性を超えた存在となって、最大限の尊敬とともに、お互い成長していくのが夫婦だからです。相手のことを本気で好きになれば、実はこれは誰でもできます。

これからの男性が意識しなければならないのはむしろ、特定の女性以外の、ただの友だち、仕事上のパートナーのような女性たちの置かれた社会的状況を想像し、彼女たちの価値観や生き方を尊重できるかどうかなんです。「異性コミュニケーション」といっても、恋人や結婚相手に対するコミュニケーションと、その他大勢の異性に対するコミュニケーションではまったく質が異なるわけです。男と女は100%理解はできないかもしれないけど、まったく分かり合えないわけでもない。分かり合う努力を惜しまないことが大切で、それを“自分が恋した女性以外”にもできるかどうかなんですよね。

インターエデュ: そう考えられる男性が増えれば、本当の意味での「男女共同参画社会」が実現しますね!

~取材を終えて~

おおたさんが著書を通じて伝えたかったことは、子どもだけでなく、大人も「人としてどう生きていくか」という話であったように思います。他人からの評価を気にすることなく、自分軸で物事を考えられて、パートナー以外の異性への心配りもできる。男性、女性に限らず、「幸せな人」になるために大切なことではないでしょうか。
著書では、男子校の先生とおおたさんが対談形式で、いきいきと「男の子の子育て」について語っています。難解な内容ではなく、どの親御さんにもすっと入ってくる内容です。ぜひお手に取ってみてください。

前回の記事「男の子を伸ばすヒントは『男子校』にあり!」はこちら

おおたとしまささん

おおたとしまささん
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。麻布中学・高校卒業、東京外国語大学英米語学科中退、上智大学英語学科卒業。株式会社リクルートから独立後、数々の育児誌・教育誌の編集にかかわる。教育や育児の現場を丹念に取材し、斬新な切り口で考察する筆致に定評がある。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許を持ち、私立小学校での教員経験もある。著書は『名門校とは何か?』(朝日新書)、『ルポ塾歴社会』(幻冬舎新書)、『追いつめる親』(毎日新聞出版)など50冊以上。

開成・灘・麻布・東大寺・武蔵は転ばせて伸ばす

おおたとしまささん最新著書:「開成・灘・麻布・東大寺・武蔵は転ばせて伸ばす」祥伝社新書

幼少期、中学受験期、思春期…。一般に男の子の発達の仕方は、女の子に比べると不規則的だともいわれています。自信をもって見守るのはとても難しいことです。母親からしてみると、男の子にふるまいが理解できないことも多いでしょう。父親からしてみても、戸惑うことが多いはずです。かって自分が子どもだったころと今とでは、社会環境が違うからです。「理想の男性像」を押し付けることは、男の子がいきいきと伸びていく上で足枷になることもあります。本書では、日本を代表する名門男子校の先生方に、男の子をどう育てたらいいのか、どう伸ばし、見守ったらいいのか、話を聞きました。特色ある教育で知られる名門校の先生方の話には、21世紀に生きる男の子の教育のヒントが詰まっています。