【中学受験】合格へ導く過去問対策、親がやるべきこととは?

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中学受験では6年生の10月から本格的に過去問に取り組みます。ところが、中学受験塾では過去問対策に多くの時間を割きません。生徒それぞれ志望校が異なるので行うべき対策が異なるからです。つまり、過去問対策には親のフォローが必要不可欠なのです。
そこで、過去問対策において「親がやるべきこと」「親子でやるべきこと」について、準備・実践・メンタル面それぞれのポイントを算数教育家・中学受験専門カウンセラーの安浪京子先生にアドバイスをいただきました。

過去問対策:準備編

親がやるべきこと その1.過去問の入手

はじめに過去問の入手方法です。入手する際にも親が押さえておくべきポイントがあります。代表的な入手方法は3つです。

1. 過去問題集(※以下:赤本)を購入する
2. 学校で配布している入試問題をもらう、もしくは購入する
3. 四谷大塚のサイトでダウンロードする
※「赤本」とは学校別に入試問題を集めたものの通称

しかし、3つのいずれかの方法で過去問が入手できていればよい、というものではありません。それぞれに入手の目的が異なるからです。注意点も合わせて見ていきましょう。

1.「赤本を購入する」について

赤本には過去数年間分の全科目の問題・解答用紙・解説、過去の入試結果表(掲載のない学校もあり)・学校情報が含まれています。受験校の入試傾向をつかみ、対策をするための必要な情報がそろっています。
赤本は売り切れたら増版がないので、10月の時点で手元になければすぐに入手しましょう。また、必ず最新版を購入するようにします。学校や受験に関する情報が更新されていたり、直近年度で出題傾向に変化がある可能性もあるからです。

2.「学校で配布している入試問題をもらう、もしくは購入する」について

入試問題は学校によって、文字の大きさ、フォント、紙のサイズ、解答欄のレイアウトなどが異なります。赤本で解いて点数が取れても、実際の入試に使われた問題用紙で解くと様子が違って点が取れないということもあります。必ず本物の入試問題を最低1年分は入手しましょう。

3. 「四谷大塚のサイトでダウンロードする」について

本物の入試問題と解答用紙をPDF化してあり、誰でも無料でダウンロードできます。入手の時間短縮がメリットではありますが、解答はあっても解説はないので、あくまで①や②で過去問を入手した上で補助的に利用するようにしましょう。
また、実際のサイズまではわからないため、問題を解く際は、プリントアウトしてから「2.」で入手した実物のサイズを参照して拡大しましょう。

親がやるべきこと その2. 問題用紙・解答用紙の準備

実際に駒場東邦中学校の2019年の入試問題・解答用紙実物と赤本(声の教育社)の問題・解答ページを見比べてみました。

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実物の問題用紙(左)と赤本の問題ページ(右)

文字の大きさはほぼ同じですが、実物の問題用紙は大問1だけで1ページ使われており、解くスペースに余裕がありますが、赤本では1ページに大問1と2が収まっています。

次に解答用紙を見てみましょう。

表1
実物の解答用紙(左)と赤本の解答ページ(右)

解答用紙は大きさが異なります。実物はB4サイズに対し、赤本はB5サイズです。

「なるべく実物に近づけるように拡大コピーをすること」という安浪先生のアドバイスをもとに、実際に赤本の解答ページを実物と同じサイズのB4に拡大コピーしてみました。

表1
実物の解答用紙(左)と赤本の解答ページを141%でB4にコピー(右)

実物と同じサイズのB4にコピーすると、解答欄が若干小さくなります。

次に、赤本の解答ページに記載されている、実物大で印刷するための%に従ってコピーしてみました。駒場東邦中学校の赤本の算数解答用紙には「拡大169%」と書かれています。

表1
実物の解答用紙(左)と赤本の解答ページを169%でA3にコピー(右)

解答欄の大きさは実物とほぼ同じ大きさになりましたが、用紙が大きいので少々違和感があります。

コピーしても実物とまったく同じようなものを用意するのは難しいので、やはり実物を入手し、手触りや用紙の色も含めてお子さんに確認してもらうのがよいでしょう。
特にコピー機を扱うのが苦手の方は、直前期となると時間もなくなり焦りも出てくるので、早めにコピーをそろえておくことをおすすめします。

※出典:声の教育社「2020年度用 駒場東邦中学校 10年間スーパー過去問【別冊】2019年度算数解答用紙および2019年度算数入試問題」

過去問対策:実践編

親子でやるべきこと その1. 目標点数を決める

赤本には「配点」「合格最高点」「合格最低点」「合格平均点」「受験者平均点」とたくさんの数字が並んでいます。これらのどの数字を、どのように参考にしたらよいのでしょうか。

  国語 算数 社会 理科 合計
  120 120 80 80 400
2019年合格平均点 68.4 89.1 53.5 48.8 259.8
2019年受験者平均点 63.7 78.4 50.5 45.2 237.8
目標点数 70 90 55 45 260
年度 合格者最低点
2019年 236
2018年 226
2017年 249
2016年 228
2015年 252

※出典:声の教育社「2020年度用 駒場東邦中学校 10年間スーパー過去問【別冊】入試問題解答用紙編 入試結果表」より抜粋

安浪先生は次のようにアドバイスします。
「最も大事なのは『合格最低点』。この点数をクリアすれば合格できるのです。直近5年間分の合格最低点を参考に合計目標点数を決め、教科ごとの目標点数を決めることが『親子でやるべきこと』です。
仮に合計目標点を260点に設定するとします。教科ごとの目標点数の決め方に関しては、例えば理科が苦手であれば、合格者平均点も参照しながら、配分を国70点、算90点、社55点、理45点に設定します。すると、『理科は45点取ればいいんだ!』とお子さんは安心もするし、そこで頑張れます」。

また、「目標点に到達していれば、その過去問は再度やる必要はありません」とのこと。
合格体験記などで「過去問を3巡した」という話を見聞きします。時間があれば行ってもよいですが、多くの受験生は時間との勝負になってくるので、なるべく無駄は省いて効率よく対策することが大切です。

親子でやるべきこと その2. 過去問の振り返り

では実際に問題を解いてみて、結果理科が目標点数に達せず、たとえば40点しか取れなかった場合はどう対策したらよいのでしょうか。
「それにはあと5点稼ぐために、どの問題を取れるようになればよいかを子どもに考えさせることです」と安浪先生。

その手順を安浪先生にレクチャーいただきました。
「まず問題に取り掛かるまえに、約1分で問題にざっと目を通し、解ける問題を『○』、まったく歯が立たなそうな問題に『×』をつけます。判断がつかないものは何もチェックしません。最初は時間がかかるかもしれませんが繰り返すことで、1分もかからず判断できるようになります。お子さんがその『問題識別眼』を身につけることが大切です。」

振り返りのポイントは、採点結果と「○・△・×」を照らし合わせ、〇と△のどれを採ればあと5点いくかを考えることです。このとき×は無視します。例えば「○」をつけたのに点が取れてなかった場合は、わかると判断した問題を落としたということ。間違えた理由を振り返らせ、どうすれば〇が取れたのかを考えさせます。

過去問対策:メンタル編

最後は、過去問に取り組む際の「メンタル面」について。
安浪先生は「過去問は『疲れているときには絶対やらない』が鉄則です」と強くおっしゃいます。

「たとえば、平日の塾が終わってから赤本に取り組ませると、疲れているため集中力もなく、取れるはずの点数が取れないことが往々にしてあります。点数を見て親が焦ってしまい慌てると、お子さんはますます点数が取れなくなるという悪循環に陥ります。いつもの実力が出せていなかったのならば、それはなかったことにしますが、これは単に時間を無駄にしただけでなく、貴重な過去問を浪費し、本人の自信を失わせることになります。過去問に取り組むのは、学校のない土曜日の午前中や、なるべく塾のない日に行うのが得策です」とのこと。

これから6年生は最後の大詰め、親御さんのほうも気持ちの焦りが出てくる頃。お子さんのメンタル面をサポートできるのは親の大事な役目です。安浪先生のアドバイスをもとに1日、1日を大切に過ごしていただければと思います。

※「過去問対策」については、安浪先生のご著書「中学受験 大逆転の志望校選び」により詳しい内容が掲載されています。ぜひご参照ください。

書影

「中学受験 大逆転の志望校選び」
中学受験で最も重要なのは、その子に合った志望校選びと、その学校の入試問題に応じた志望校対策です。
塾では偏差値での志望校選びが主流ですがそればかりにとらわれるのはナンセンス。本書では、首都圏や関西の主な学校を、管理型-自主性、革新・体験-保守・知識 の2つの軸落としこんだ、史上初の「校風マトリクス」を作成し、偏差値ばかりでなく校風も合わせて志望校を選ぶことを可能にしました。
また、志望校対策に役立つ3種の過去問分析マトリクスを作成。算数の問題傾向が分かる「算数マトリクス」、国語の記述量が分かる「国語マトリクス」、要求されるスピードが分かる「処理力マトリクス」から成り、志望校の問題傾向が、子どもの得意なタイプの問題なのかそうでないのかが一目瞭然で分かり、志望校対策の方向性が見えてきます。
もちろん、ご家庭でできる過去問対策のやり方も、手取り足取り、詳しく解説!

安浪京子先生 算数教育家/中学受験専門カウンセラー
神戸大学発達科学部卒。関西、関東の中学受験専門大手進学塾にて算数講師を担当、生徒アンケートでは100%の支持率を誇る。プロ家庭教師歴約20年。2011年、中学受験算数を専門としたプロ家庭教師集団プレスティージュパートナー(株式会社アートオブエデュケーションの前身)を設立。きめ細かい指導とメンタルフォローをモットーに毎年多数の合格者を輩出している。