難関校への合格者を多数輩出する塾長が語る。子どものために、未来を見据えた中学受験にするためには

関西を中心に教室を展開する希学園。数多くの塾生を難関校へ送ってきた学習塾の学園長が、中学受験の意義や、第一志望校合格を達成するために必要なことをアドバイスした本が話題になっています。勉強の意味とは? 親としての心構えは? 日常生活でできることとは? 第一志望校への合格を目指す親御さん全員に読んでいただきたい内容です。

親子で考えていただきたい中学受験の意義

親子で考えていただきたい中学受験の意義

今回ご紹介する本の書名は『未来につなぐ中学受験』。著者は、大学時代から塾講師として子どもの教育に携わってきた黒田耕平さん。自ら「スーパーエリート塾」を標榜し、灘中学をはじめとする最難関中学校への合格実績を多数持つ希学園の学園長です。本書は下記のような構成になっています。

第1章 中学受験にかくされた本当の意義

第2章「人間力」が入試の結果を左右する

第3章 やる気と主体性は環境によって育まれる

第4章 思考力の原点は「聴く・話す・読む・書く」

第5章 幼少期とは変化させるべき親のかかわり方

第6章 子どもの未来につなげる中学受験にするには

一見すると、中学受験対策マニュアルのようにも見えますが、受験テクニックを磨くためのハウツー本とはかなり違います。むろん、進学塾の理念やカリキュラムをベースに語られていますから、勉強法に関するアドバイスも随所に記載されていますが、メインテーマは「中学受験の意義」です。

中学受験は、子どもがはじめて直面する大きな壁です。それを自らの力で乗り越えることができれば、人間として大きく成長することが可能となる。せっかく大きな壁に挑戦するならば、「合格」の先にあるものを見据えて準備をしようと、中学受験に臨む親子に呼びかけた本なのです。

親は補助線の役割を果たす

章ごとに、やる気と主体性を引き出す方法や、読書の効用、子どもの努力に対する評価のしかたなど、テーマごとに解説されていますが、「こうすればいい」「ああすればいい」という、具体的なアドバイスは多くありません。

日常生活で可能なことでは、集中力は「好きなことを好きなだけやらせる」ことで養える、評価をするときは最終的にプラス評価をする、といった具合に具体的なアドバイスがあります。

たとえば「学力を伸ばすために必要なこと」。著者は「知識力」「作業力」「思考力」の3つをあげていますが、中でも重要なのは「思考力」と述べています。しかし、著者は「普段から子ども自身に考えさせること」と記すだけで、具体的な手法を示してはいません。

しかし、大人が補助線の役割を果たすことは「子どもの思考力養成にはすごく重要」ということは述べています。子どもが迷ったとき、すべきことがあったとき、手取り足取り親が導くのではなく、ヒントだけを出してあとは子どもに考えさせておく。その体験を積み重ねることでしか思考力は養えないということです。

親御さん自身も、「この場合の補助線は何か」と考えなければいけないわけです。2度、3度と本書を読み返してみると、読み手を考えさせる部分が多く、しかも、自分自身の問題としてとらえ、考えるためのヒントは必ず得られる。本書は“親が考えるための補助線”を描いていることに気づくのです。さすが、難関校の合格者を多数輩出している塾の学園長が執筆した本だと、あらためて感じました。