読み聞かせで思考力や読解力がグングン伸ばせる!? ハーバード流「読み聞かせ」のメソッドとは(2ページ目)

なによりも大切なのは「やりとり」の楽しさ

ただ、このメソッド、静かに読み聞かせをしていた人がいきなり実践しようとしても、なかなか難しいかもしれません。著者もこう記しています。

「実際にやってみるとわかりますが、ダイアロジック・リーディングを真剣にやろうとすると、大人は『どんな問いかけをすべきか?』『どんな受け答えをすべきか?』といったことを瞬時に考えなくてはいけないので、かなり頭を使う必要があります」

日本の場合、子どもが言葉を覚えたころから読み聞かせを行うケースが多いのですが、いったん慣れた手法を変更するよりは、言葉を発する前から実行したほうがスムーズにダイアロジック・リーディングを導入できるそうです。

すでに読み聞かせをしているお母さんやお父さんの場合は、無理をしないほうがよさそうです。これは著者も随所で強調しているのですが、慣れてしまった子には、これまで通りの読み聞かせを行い、同じ本を「読んで」とせがまれたときに、少しずつ質問をしていくほうが、子どもにとっても親にとっても負担が少なく、慣れも早いそうです。このあたりの実践方法については、本書をぜひ読んでみてください。

ただ本を音読するだけではなく、子どもに質問したり、子どもの言葉を受け取って同意したり、次の質問につなげたりと、親にとっては負担になることは確かですが、「子どもにとってはメリットしかありません」と著者は断言しています。

むろん、従来型の読み聞かせにも、言葉のシャワーを浴びせるという大きなメリットがありますから、音読の途中で無理に質問をはさむ必要はないでしょう。著者もこれまでの読み聞かせは、まったく否定していません。

しかし、本書を読み終えて、なるほど、ダイアロジック・リーディングは日本の読み聞かせの弱点を補うものだということがよくわかりました。また、ごく自然に親子で絵本を題材にさまざまな話ができれば、読み聞かせの時間がますます楽しいものになるのではないかとも感じました。本書をヒントに、少しずつ言葉の「やりとり」を増やしてみてはいかがでしょうか。

思考力・読解力・伝える力が伸びる ハーバードで学んだ最高の読み聞かせ

大人が絵本などを音読する読み聞かせ。多くのお母さんたちが実践していますが、日本の読み聞かせの場合、親が絵本を読み、子どもがそれを静かに聞くケースが多いと思います。ところがアメリカでは、読み聞かせの最中に子どもも大人もよくしゃべる。言葉のやりとりがきわめて多いのです。
日本とアメリカで読み聞かせの研究を続けてきた著者が、日本で行われている「いつもの読み聞かせ」に、アメリカの「ダイアロジック・リーディング」の手法を追加することで従来型読み聞かせの弱点を補えることを解説したのが本書です。
その秘密は、親子で「やりとり」をしながら絵本を音読すること。たったこれだけのことで、「自分で考える力(思考力)」や「読解力」「自分の意見を言う力(伝える力)」など、社会を生き抜くために必要なさまざまな子どもの能力を育むことができるのです。
今の子どもたちには、ネットやメディアにあふれている情報を解読し、自分の頭で考え、その結果を論理立てて説明する力が求められています。
本書では、ハーバード大学をはじめ、アメリカの大学で長年研究されてきた、子どもの能力を伸ばす絵本読み聞かせのメソッド「ダイアロジック・リーディング」を紹介します。

加藤映子(かとう・えいこ)さん

大阪女学院大学・短期大学学長/大阪女学院大学国際・英語学部教授。Ed.D(教育学博士)。ボストン大学を経て、ハーバード大学教育学大学院(教育学修士・博士)に入学。同校で、本書のテーマである「ダイアロジック・リーディング」に出合い、研究を重ねる。1998〜2001年、フルブライト奨学生。専門分野は「言語習得」と「最新テクノロジーを活用する教育」。
現在は、「子どもとことば」「絵本を通してのことばの発達」を研究課題としており、絵本の読み聞かせにおける母子のやりとりや読み書き能力の発達に関する親の意識調査などを行う。一方で、教員を対象とした「子どものことばを育てる読み聞かせ」ワークショップも行うなど、日本における「ダイアロジック・リーディング」の第一人者として普及活動に尽力している。
季刊絵本新聞『絵本とことば』(H・U・N企画)への寄稿や、『世界一受けたい授業』(日本テレビ)に過去3度出演するなど、メディア出演多数。本書が初の著書となる。