灘校の伝説の授業を再現した、国語読解力「奇跡のドリル」

関西の名門・灘校を東大合格者数日本一にした、伝説の国語授業を再現した国語ドリルがベストセラーになっています(小学校1・2年向け)。この2月には小学校3・4年向けも発売。読解力を身につけるベストな方法がわかる、その名も『奇跡のドリル』をご紹介します。

1つの物語を最初から最後まで、3回読む

『奇跡のドリル』をご存知ですか? 正しくは『国語読解力「奇跡のドリル」小学校1・2年』という国語ドリルで、読解力を独特の手法で伸ばすことができると話題になっています。この『奇跡のドリル』をご存知ない方でも、『奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち』というノンフィクションならご存じかもしれません。

『奇跡の教室』は、関西の名門・灘中高を、目立たない私立校から東大合格者数日本一に押し上げた伝説の国語教師、故・橋本武氏の『銀の匙』授業をレポートして、スローリーディング・ブームの火付け役となったノンフィクションです。『銀の匙』授業とは、中学3年間、教科書を使わず文庫本『銀の匙』だけを読んでいく授業。1950年代から1960年代に灘中学で行われ、その授業を受けた生徒の中から、東大総長・副総長、最高裁事務総長、弁護士連合会事務総長、神奈川県知事など各界のトップを輩出しています。

『奇跡のドリル』は、『奇跡の教室』の著者である明治大学教授の伊藤氏貴先生が、『銀の匙』授業をなんとか再現したいと考え、伊藤教授ご自身が作成したドリルなのです。『銀の匙』授業同様、1つの物語を繰り返し読み解いていくスタイルで、小学校1・2年では、新美南吉の『手袋を買いに』、この2月に発売される小学校3・4年向けでは、O・ヘンリーの『最後の一葉』が採用されています。

国語力・読解力を身につける学び方がわかる

1つの物語だけを読み解いていって本当に国語力がつくのだろうか?と思われる方は、ドリルの表紙をめくったところにある「おうちの方へ」をぜひ読んでください。そこには、国語力とは総合力であること。漢字や語彙や文法がわかるだけでは国語の力があるとはいえず、それらを総合する力が必要であること。その総合力を身につけるには、「精読=遅読」が不可欠であることが書かれています。他のドリルと異なる点としては、1つの物語を最初から最後まで読むこと。もうひとつは、同じ物語を3度読むことがあげられています。

ドリル内の随所にある「おうちの方へ」

「大きな声で読んでみましょう」と促します

本文のドリルは【解答と解説】も含めて96ページ。1・2年向け、3・4年向けとも、レベル1、2、3の3章に分かれ、それぞれの目的が以下のように記され、問題が展開していきます。

小学校1・2年

レベル1:音読、大意の把握、語意の確認
レベル2:細部の理解、論理的読解
レベル3:論理の把握、記憶、想像、発展的知識

小学校3・4年

レベル1:音読、語意の確認、ストーリーの把握
レベル2:細部の把握、心情の理解、論理的読解
レベル3:推論、記憶、想像、発展的知識

このように各レベルの目的を見れば、なるほど国語力とは総合力なのだと納得できます。各レベルのトビラにも「おうちの方へ」というメッセージがあり、ここでお子さまへのサポートの仕方がわかります。

最初になるほどと思ったのが、読解力の最初の一歩は音読することと、わからない言葉をチェックすることだということです。考えて見れば当たり前のことですが、たくさんの問題を解けるようになりたいと思ってドリルにむかうと、ついおろそかになってしまいがちなことではないでしょうか。

このドリルの問題の中には、物語には書かれていない一般常識を問う問題があります。そして「知らなければ調べてみましょう」と促しています。今正解がわかっている必要はないということ、これから学んでいけばいいということなど、『銀の匙』授業と同じスタイルです。それに国語力を育てるドリルですから、算数のように問題の解答はひとつではありません。想像力・思考力を駆使して自分なりの答えを導きだす問題も数多くありました。そうした問題は、【解答と解説】にある解説を、ママ・パパが読んでサポートしてあげるといいと思います。

このドリルは、テストでいい点をとるために解き方のパターンをたくさん覚えるという勉強とは正反対の学び方を教えてくれます。子どもたちは、このドリルで「精読=遅読」を覚えることで、国語という教科を超えて考えを巡らせていくこと、さまざまな教養を身につける方法を覚えていくでしょう。当然、ママ・パパのサポート法にも質的な変化が起きてくるはずです。

大人社会にも読解力は必須

実は、小学校1・2学年向けの『奇跡のドリル』を、大人が自分のために購入するケースがずいぶんあると聞きました。YouTubeで、このドリルを推奨している謎解き統計学のサトマイさん(フォロワー41万人)も、子どもだけでなく大人にもすすめています。※参考:奇跡のドリル特設サイト

確かに、昨今SNSを見ていると、メッセージの意味を取り違えたり、わからない言葉を無視したり、自分の都合のいいところだけピックアップしてわかった気になるということが頻発しています。それがトラブルを招くことも多く、読解力は大人にとっても必須の能力だとしみじみ思います。大人のママ・パパも、ご自身の読解力を確かめるのに、このドリルを活用してみるといいかもしれません。

最後に、今の時代、小学生向けの学習ドリルにも、さまざまなスタイルのものがあり、選ぶのに迷ってしまいがちです。国語力をアップさせるドリルとして、この『奇跡のドリル』はベストだと思いますが、それでも、お子さまの個性によっては気乗りしないということもあるでしょう。そういうときにおすすめなのが、子どもと一緒に「おすすめ教材診断」ができるサイト「イロトリドリル」です。ここならゲーム感覚で自分にあったドリルや参考書が選べます。自分でチェックしたドリルなら、お子さまもきっとやる気になるのでは?

国語読解力「奇跡のドリル」小学校1・2年

著/伊藤氏貴、小学館刊、定価880円(税込)

たった一つの物語を読むだけで読解力アップ。灘校を東大合格者数日本一に導いた伝説の教師とその授業の全貌を書いた単行本『奇跡の教室』の著者・伊藤氏貴明治大学教授による小学校1・2年生向け国語ドリル。『ごんぎつね』の作者、新美南吉の『手袋を買いに』をテキストとして使用し、この一つの物語だけを繰り返し読み込みながら、読解力のほか、文法、語彙力、漢字の学習、さらには想像力を向上させる。国際学力調査(PISA)での「読解力」の順位の低さや「子どもが『教科書が読めない』」という危機感に対して、義務教育の段階からしっかりと「読む力」「考える力」をつけさせることを狙いとする。

<編集者からのおすすめ情報>
通常の国語読解力ドリルは、さまざまな文章の一部を使って問題に答えていきますが、このドリルは、たった一つの物語だけをテキストとして使用し、最初から最後まで繰り返し読み込みながら、A、B、Cの三段階のレベルで設問に答えていくという形式をとっています。かつて灘校で伝説の国語教師として知られた橋本武氏の流儀をまとめた『奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち』(小学館文庫)の著者である伊藤氏貴 明治大学文学部教授が、橋本氏の流儀にのっとって新たに小学校低学年用に作成しました。保護者の皆さまには『奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち』をあわせてお読みいただくことをおすすめします。

国語読解力「奇跡のドリル」小学校3・4年

著/伊藤氏貴、小学館刊、定価1078円(税込)※2月28日発売

たった一つの物語を繰り返し3回読み解くだけで読解力が向上する『国語読解力「奇跡のドリル」小学校1・2年』の中級編。中級編では、O・ヘンリー『最後の一葉』をテキストとして使用し、この一つの物語だけを繰り返し読み込みながら、読解力のほか、文法、語彙力、漢字の学習、さらには想像力を向上させる。

<編集者からのおすすめ情報>
本書はかつて灘校を東大合格者数一位に押し上げた伝説の国語教師、故・橋本武氏の授業をなんとか再現できないか、という明治大学 伊藤氏貴教授の思いからできあがったドリルの中級編です。学年は小学校3・4年生向けとなっていますが、まだこの「奇跡のドリル」を体験されたことがないお子さんには、初級編の『国語読解力「奇跡のドリル」小学校1・2年』からはじめていただいてもいいと思います。子どもの読解力低下がしばしば話題になる昨今、保護者の皆さまには、『奇跡の教室 エチ先生と『銀の匙』の子どもたち』をあわせてお読みいただくことをおすすめします。