新4年生に向けて考える塾選び。注意点を中学受験のプロが教えます!

中学受験を行うご家庭が増える中、中学受験塾へ入塾するご家庭も増えてきています。そうした中、初めての塾選びの際は、塾の知名度や合格実績に目が行きがちです。しかし、教育家の小川大介先生は、そうした選び方に警鐘を鳴らしています。どの点に注意したらいいのでしょうか。

【お悩み】2月からの入塾じゃなくてもいい?

小学校3年生男子のお母さまのお悩み

【お悩み】2月からの入塾じゃなくてもいい?

4年生より通塾を考えています。周りのお友達も普通に塾に入るような話をしていますが、近所のサピックスはすでにいっぱいで、4年になる2月に入らないと厳しいという噂があります。

わが子は後から追い上げるのが苦手なタイプです。コツコツと努力をすることは得意ですが、パワーがあまりないタイプです。そのため、早めに入れてペースをつかみ、アドバンテージを付けてあげたほうがその後がスムーズなのではないかと思いますが…。
4年生であれば、時期をそこまで気にしなくてもよいでしょうか?

【小川先生からのアドバイス】我が家はどうするかを丁寧に考えましょう

合格実績と「よい塾」を結びつけない

今回のご相談は首都圏ならではの内容と言えるでしょう。ここ数年、塾の席を確保するために早い学年のうちから入れようと、入塾する学年がどんどん下がるという現象が起きています。しかし、このご相談の前提として、入る塾をサピックスにするかどうかは気にしないでよいと思います。

良い塾というのはお子さんががんばれる塾です。かつ親御さんが可能な範囲で手伝えて、家族で納得できる受験の日々に伴走してくれる、そういった塾がその家庭にとっての良い塾となります。各塾の合格結果に左右されるのはわかりますが、それは通っている子どもたちががんばった実績であって塾の実績ではないのです。合格できる子がたくさん集まった塾は、合格実績が伸びるというだけです。そこを錯覚しないほうがいいですね。

周りに流されず子どもに合った学びを

まずはお子さんの学習タイプ、気質、どんな夢を持っているかを確認してください。それらを考慮した上で、お子さんが学ぶ理由や学び方の選択肢を検討し、選ぶことがとても大切です。
お子さんのタイプはコツコツ積み上げていくタイプで、一気に馬力を出すタイプではないと把握されているので、あとは各塾の学ばせ方を比較検討してご家族で話し合うことです。

また「周りが始めるからうちも」というのは危険な考え方だと思うので注意してください。20~30年前でしたらそれで良かったのかもしれませんが、今の時代は違います。一人ひとりの持ち味を伸ばして、その子の道を開くうえでどういった人とのつながりや環境、考え方と出会わせたらよいのか、プロデュースする観点が今の親には必要です。周りを見ているよりも、自分の子や今の社会環境を見る方がよっぽど重要です。

3年生の1月中にはスタートラインを決めておきたい

そのうえで、「うちはサピックス」と決まったなら入塾したら良いと思います。その場合は4年生のカリキュラムが始まる3年生の2月からスタートするのがいいと思います。四谷大塚系列もそうです。4年生で行う塾の学び内容は、質も量も学校や一般家庭で取り組めることよりはるかに多く深いです。そのため対策もなく4年生になれば何とかなるかもと対策もなく入塾を遅らせるのはリスクが非常に高いです。
塾で行われる4年生のカリキュラムは、各塾の予習用教材を入手して、あらかじめ親が確認しておくといいでしょう。その内容を見て、まだ塾に通い始めていない間はどのように学習をカバーするか、またどんな土台作りを家庭で行うのか、そこを考えた上でスタート時期を考えたらよいと思います。

それらのことをいろいろ考慮した上で2月から入塾するとなると、今度は塾中心の生活となり、お子さんは今まで大好きだった習い事などにかけていた時間が減ってしまう場合もあります。それが子どもにとってハッピーかどうかはその子によって違ってきますので、わが子の場合はどうかもよく考えましょう。

3年の1月中までに、よくよく考えたうえでスタートラインを決められたらいいと思います。固定観念に縛られずに丁寧に丁寧にわが家はどうするかを考える時間になさってください。

小川 大介(おがわ だいす)先生

教育家。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。
京大法を卒業後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設。子どもそれぞれの持ち味を瞬時に見抜き、本人の強みを生かして短期間の成績向上を実現する独自ノウハウを確立する。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。メディア取材も多く、「親も子も幸せになれる はじめての中学受験」(CCCメディアハウス)など著書も多数。