【中学受験】「挑戦」することに、マイナスなんかない。スクールカウンセラーが回答するお悩みQ&A

中学受験をする理由は、ご家庭によって様々。今回ご紹介するのは、「地元から逃げるような受験」であることに悩むお母さまからご相談です。
公認心理師であり臨床心理士でもあるスクールカウンセラーの鈴木奈津子さんに回答いただきました。

小学校6年生女子のお母さまのお悩み

地方都市なので、中学受験をする子はほとんどいない小学校です。
近所のお友達とうまく行かず、仲間外れにあったので登下校も1人、塾のない日の放課後も遊びに行かなくなっています。クラスには仲のいい子がいるのですが、家が遠くて遊べません。

そのため、中学で離してあげたいと思い受験に誘導しました。(本人には、マイナスな受験理由は言っていませんが…)

説明会などで、学校の雰囲気を本人も親も気に入った私立の女子中の受験を決めたのですが、周りとうまくいかないから逃げるみたいで、悔しさというか、引っかかる気持ちがあるのは否めません。
このような理由での受験でも、子どものためになるのでしょうか。(小学校6年生女子のお母さまより)

環境次第で大きく変わる子どもの成長

環境次第で大きく変わる子どもの成長

中学受験があまり一般的ではない地方都市にお住まいで、受験を選択したとのこと。周囲の方たちとは違う視点を、日ごろからお持ちだったのでしょうね。お母さまがお子さんやお友達とのかかわりを見てきたなかで、最善と思って決めたことですから、その決断には自信を持って欲しいと思いました。

もともとのきっかけとして、ご近所のお友達とあまり合わない様子があるということから中学受験の選択肢が出てきたのだと思いますが、これはあくまでもひとつのきっかけに過ぎません。中学受験で得られる「メリット」については、お母さまご自身でもきっと色々と思い浮かぶと思いますが、敢えてお話しさせていただくと、お子さんに合った環境で学び、生活していくための機会を与えてあげられるということなのです。

学習環境というのは、非常に大事なものです。環境次第で、そのお子さんの持つ能力をより伸ばしてあげることもできますし、合わない環境に身を置いてしまうことで、そのお子さんらしさを奪ってしまうことにもなりかねません。

お子さんと相性のよい先生の存在

わかりやすい例をお話しします。

これまでの小学校生活で、お子さんが特に気に入って好きだった担任の先生や、教科の先生はいませんでしたか?習い事の先生でも構いません。お子さんが好きだった先生に教わったとき、教科の成績はどうでしたか?お子さん自身の表情や態度はどうでしたか?
きっと楽しくのびのびと学ぶことが出来ていたはずです。そしてその結果として、見違えるほどの効果をお子さんにもたらしたはずです。

お子さんと相性のよい先生の存在

これは塾や塾の先生にもいえることです。
フレンドリーで和気あいあいとした空気の方が馴染むというお子さんは、フレンドリーなクラスで学ぶことで、効率よく本人の能力を伸ばすことが出来ます。これは質問など個々の発言がしやすいことと、休み時間などに仲間と過ごす時間が楽しみになり、周囲との一体感が生まれることで塾へ行く動機付けにも繋がるからですね。

逆にあまり親しくなりすぎず、会話する機会が少ない方がかえって精神的に落ち着いて勉強に取り組めるお子さんもいます。同じクラスの子たちの志望校話や、うっかり誰かのテストの点を聞いて動揺するリスクも少ないですし、個人がそれぞれ自分と向き合うような雰囲気であれば、気を遣わないでよいというメリットもあるのです。

このように、お子さんに合った塾のスタイルかどうかは、本人の受験に大きく影響してくることがイメージできたかと思います。
これは進学する中学校でも、同じことがいえます。自分の求めている雰囲気や校風に対して肯定的な空間がそこにあるということで、お子さんが安心してその学習環境に身を置くことが出来るのです。このことが精神を安定させ、より一層の成長へと繋がっていくでしょう。

中学受験を選択できるのはラッキーなこと

受験をしない選択も当然否定することはできませんし、各ご家庭によってケースバイケースではあります。小さい頃から顔なじみの子たちと、同じ中学校へ進学することに価値を見出す方もたくさんいらっしゃいます。そういった環境の方がお子さんに合っているケースも、たくさんあります。

ですが、進学先の選択肢が多くてマイナスになることはありません。受験することを選べる環境にあったということをラッキーと受け止めて、ぜひ前向きにこの中学受験を捉えていってほしいと思います。