親を振り回すやんちゃ坊主が開成を受けたいと。親の私は対処できるでしょうか

塾・学校の実態に精通する教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが、「中学受験を家族にとってのいい経験にする」というコンセプトで、中学受験のさまざまな相談にアドバイスしてくれます!
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育児・教育ジャーナリストおおたとしまさの中学受験 心すっきり相談室 vol.18

Q.親を振り回すやんちゃ坊主が開成を受けたいと。親の私は対処できるでしょうか

おおたさん、やんちゃ坊主がつらい世の中ということを本に書いていらっしゃいましたよね。息子が、まさにソレ。私は息子のやることに驚いたり悩まされたり続きの毎日です。

女ばかりの3人姉妹で、やんちゃ坊主という存在を知らないで母親になってしまったのです。私立の女子中・高・女子大の温室育ちです。就職して職場結婚して、出産して・・・息子が幼稚園に入った頃から、息子のすることは信じられないことばかり、お友達をたたいたり、怪我させたり(あとであやまりに行きます)、えっなんで?と思うようなことばかりなので、実家の母を頼ってやってきました。落ち着きがなく発達障害?の心配もしましたが違いました。男の子に慣れているママ友には、「それくらい想定内よ」と言われたこともあります。今は私のほうが母親としての能力不足と思います。それから訳あって昨年離婚して現在シングルマザーです。

そんな息子が友達に影響されたらしく「受験して開成に行きたい!」と言い出しました。気がコロコロ変わる子ですから、どこまで本気かわかりません。でも、理系の能力は高そうなので、ちゃんと勉強すれば開成とはいかなくてもそれなりの学校に入れるかもしれません。息子の学校の成績ですが、算数と理科はほとんど満点で、それ以外の科目はまんなかと極端です。

やんちゃ坊主の言うことをどこまで本気にしたらいいかも悩みますし、「受験するなら嫌いな科目も勉強しないといけない」というと、そういうときだけ、「必要ならちゃんとする」と答えるのが、すごく半信半疑な感じです。この前近所の進学塾に入る手続きはしました。でも、私の頭のどこかに「塾に通いはじめたら、こんなはずじゃなかった。やめた!」と言い出すだろうという気持ちがあります。今フルタイムで働いていますが、母が近くにいるのである程度面倒はみてくれます。

今の中学受験は昔と違ってすごく過酷と聞いています。それに私は働いています。素直なふつうの子のではなくて、算数と理科だけが好きでそれ以外の科目は勉強したくない、そんな落ち着きのないやんちゃ坊主の中学受験で、親の私は、どんな心構えでいたらいいのでしょうか? 私も中学受験経験者ですが参考になりそうにありません。おおたさんにアドバイスいただきたく、おねがいいたします。やんちゃ坊主にふりまわされずに、息子をいい学校に行けるように導く方法、少しでも身につけられればと願っております。(やんちゃ坊主ママ)

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A.親子で最善を尽くす訓練することこそ、中学受験の真の価値です。振り回される覚悟をして親も親として成長しましょう

息子さんから開成に行きたいと言い出すなんて、頼もしいですね。そんな息子さんに、「ひょっとしたら……」と素直に期待をするお母さまも素敵だと思います。

男の子には振り回されっぱなしになりますね。中学受験をするにしても、振り回されっぱなしになるでしょう。自分から「やる!」って言ったのに、全然勉強しなかったり。。。でもそれが子育てでしょう。そういう性格であれば、スイッチが入れば伸びるでしょうけれど、そうでなければコツコツやるタイプではなさそうですよね。ふがいない成績を取ってくることもあるかと思います。それでもそういう息子さんを受け止めて、励ますという経験を積むことで、親も親として成長できます。

どんなやんちゃな子でも、いつかスイッチは入ります。それが5年生なのか、6年生なのか、受験の直前なのか。早ければ早いほど、成績が伸び始めるのが早くなりますが、こればっかりは親がおしりを叩いてもしょうがありません。むしろ逆効果になることも多いかと思います。中途半端な状況を見てやきもきするのも親に与えられた課題です。でも、ひとたび息子さんがやる気になってくれたら、その真剣な横顔を見たら、それだけで「中学受験をやって良かった」と思えるはずです。

これはなかなか理解されないことですが、中学受験は本当に結果じゃないんです。思い通りにならないことを受け入れつつ、それでも最善を尽くそうとする訓練です。親子双方にとって、です。中学受験を通して、子供も親も精神的に成長することが本来的な価値です。その末の結果であれば、すべて神様が与えてくれたベストな道です。逆に、そう思う自信がないのなら、中学受験はやめておいたほうがいいんじゃないかというのが私の考えです。

ちょっと移り気だけどたくましい息子さんに恵まれたのですから、振り回される覚悟で、中学受験に臨んでください。子育てなんて振り回されるうちが華です。思い通りにしようとか、ベストの中学受験をしようとか、「このレベル以上の学校じゃないとダメ」とか、親が自分の価値観で判断をし始めると、中学受験はつらく残酷なものになります。でも、ありのままを受け入れて、親子共に少しでも良くしていこうと努力を重ねることができれば、どんな結果であれ、中学受験はいい経験になります。

中学受験に限らず、子育てはすべて同じですよね。子供は親の思ったとおりには育ってくれませんが、必ずその子らしく、何者かには育ちます。親がそれをそのまま認めて励ましてあげられれば、失敗だろうが回り道だろうが、すべてはいい経験になります。小学5年生まで男の子を育てられて、そんな感覚、これまでにも何度か感じたことがあるんじゃないかと思います。中学受験もその心意気で臨まれるといいかと思います。

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