義父の介護のため、中学受験を断念。  息子(小6)には何と言ったらいいか…

塾・学校の実態に精通する教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが、「中学受験を家族にとってのいい経験にする」というコンセプトで、中学受験のさまざまな相談にアドバイスしてくれます!
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育児・教育ジャーナリストおおたとしまさの中学受験 心すっきり相談室 vol.34

Q.義父の介護のため、中学受験を断念。  息子(小6)には何と言ったらいいか…

今6年生の息子は、4年から大手の進学塾に行って難関校を目指していましたが、受験を断念することにしました。主人と相談して決めたのですが、先日、義父が突然倒れて私が介護をしなければならなくなったのが原因です。

それに、成績が思うように伸びず偏差値が志望校(御三家)にはとても届かない状態で、塾の先生からも別の学校をすすめられていたこともあり、主人とは高校受験に変更しようということになったのです。

まだ息子には言っていません。どう言ったらいいか悩んでいます。本人は受験にはあまり乗り気ではなく、友だちと一緒に公立中に行きたいと思っているので、受験をやめるといったら喜ぶと思いますし、遊び放題になるのではないかと・・・。でも、それではこれまでの勉強が無駄になってしまうのではないでしょうか?

いやいやながらも毎日勉強する習慣がついていたのが、元の木阿弥かと思うと、どうしたらいいのか・・・、おおたさん、こういうときはどうしたらいいのでしょうか? アドバイスをお願いいたします。(ako)

回答はこちら

A.まず息子さんの意志を確認したいです。どちらにせよご両親には、「いい経験」として締めくくる責任があると思います

お義父さまが倒れて要介護になられたとのこと。私の父も、15年近く前にくも膜下出血で倒れ要介護になっておりますから、お気持ちお察しいたします。お義父さまも大変ですが、介護する側も大変ですね。その影響で、中学受験を土壇場で断念するとのこと。志望校に届きそうにないという状況があるとはいえ、複雑な心境でしょう。

介護のためにどうしようもないというのであれば、息子さんに状況を説明し、理解してもらうしかありませんね。選択肢はありません。仮に息子さんが「いやだ、中学受験したい!」と言っても、「無理なの」と説明するしかありません。真摯に説明すれば、息子さんも最後は納得してくれるのではないかと思います。

しかし、あくまでも可能性の話ですが、お義父さんが倒れたことを言い訳にしているということはありませんか。本当の理由は、「御三家には入れそうにないから。がっかりするのが嫌だから」ではないですか? 本当は、息子さんより先に、ご両親の心が折れかけているだけということはないでしょうか。もしそのような状況でご両親が勝手に中学受験の中止を決断してしまったら、息子さんは大きなショックを受けるかもしれません。

ご相談を読む限り、ご両親の頭の中には御三家以外の選択肢がないように見えますが、それは危険な発想です。このことは私の著書の中でも、このコーナーでも何度も申し上げていることです。御三家に入れないなら中学受験を回避して高校受験でリベンジをというのも、さらに数年後の子供にプレッシャーをかけることになりかねません。

ご自身の胸に手を当てて、もし少しでも思い当たる節があるようなら、もう一度「なぜ中学受験をするのか」を考えてみてください。拙著 『もし中学受験で心が折れそうになったら』『中学受験という選択』を参考にしてみてください。

いずれにしても、まだ、息子さんご本人の意志は確認していないのですね。そこは慎重に行いたいですね。受験に乗り気ではないといっても、いざ親から一方的に中止を宣告されたら息子さんも複雑な心境になるのではないかと思います。客観的な状況と選択肢を説明し、まずは息子さんの意志を確認してもいいのではないでしょうか。

ひょっとすると中学受験をやめたくないというかもしれません。ご両親の期待ほどには成績が伸びていないことに負い目を感じ、「あんまりやる気がしない」なんて言ってみている可能性だってありますから。本当はなんとかご両親の期待に応えたいと思っているかもしれません。

「中学受験をやめると決断したら遊び放題になってしまう」というのはたしかにもったいないですね。本当に中学受験をやめるとしても、勉強は続けてほしいと思います。ご両親としてもそのことはしっかり伝えるべきかと思います。

また、仮に中学受験をやめることになっても、今までの努力が無駄になることは決してありません。そのこともしっかり伝えてあげてください。今までの息子さんのがんばりを、最大限に讃えてあげてください。みんなより一足早く、中学受験勉強の打ち上げをしてもいいですね。

続けるにしても、やめるにしても、「いい経験」として締めくくる責任が、ご両親にはあると私は思います。

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