中学受験か高校受験かで、夫婦が対立。大学入試の影響はあるのでしょうか

塾・学校の実態に精通する教育ジャーナリスト・おおたとしまささんが、「中学受験を家族にとってのいい経験にする」というコンセプトで、中学受験のさまざまな相談にアドバイスしてくれます!
TOP

育児・教育ジャーナリストおおたとしまさの中学受験 心すっきり相談室 vol.37

Q.中学受験か高校受験かで、夫婦が対立。大学入試の影響はあるのでしょうか

子ども(小2男子)の進路について夫と意見が分かれてしまいました。

私自身は、中学受験で私立女子校に通って大学受験をしました。おおたさんが本で書いておられるような伝統と自由な校風を肌で感じて育ち、大学受験もあまり無理しなかったのに希望校に入れたのは学校のおかげだったと思っています。

でも夫は地方で公立中から県立の高校(県TOP校)にあがって大学受験も成功した人です。

私は、東京に住んでいるのだから私と同じように中学受験をして御三家などの名門校に通わせるのが当然のように思っていたのですが、先日塾をどうしようかと相談してみたら、夫は男の子なんだから公立でたくましく育てるべきと考えていたのです。夫がそんなふうに思っていたとは想像してもいなかったので、びっくりしたのもあって、けんかになってしまいました。

夫は息子の年だと大学入試が変わってからだから、そのころには私立優位は終わっているとかも言いました。それが本当ならば中学受験はやめたほうがいいですよね。でもそれって本当なのでしょうか。このまま夫と同じ話をしても、どちらも自分の体験がベースなのでまたけんかになりそうです。

まだ先のことですが、塾に通わせるとなると息子のためにも方針はきめておいたほうがいいと思います。中学受験と高校受験のどちらがいいか、息子が大学受験するときのことも考えて、どう考えて決めたらいいのかアドバイスしてください。何卒宜しくお願いします。(JC-AYA)

回答はこちら

A.判断基準はさまざま。よく話し合って結論を出してください。大学入試改革は、大方の推測では、中高一貫校が有利です

ご夫婦で中学受験をするかしないかの判断が分かれることはよくあることです。特に父親が地方の公立進学校出身の場合が多いです。JC-AYAさんのご夫婦もまさにそのパターンですね。

「夫がそんなふうに思っていたとは想像もしていなかったので、びっくりしたのもあって、けんかになってしまいました」とのこと。お互いにびっくりしたのでしょうね。仕方ありません。改めて落ち着いて、それぞれの考えを「聴き合う」といいと思います。ただし相手の考えを否定したりしないこと。どちらが正しいか白黒付けるのではなく、お互いの考えを「聴き合う」姿勢でのぞむことが大切です。

中学受験をするのがいいかどうかは、いろいろな判断基準があります。ここで簡単にお答えすることはできません。ご夫婦でじっくり話し合って、お互いに納得できる結論を出してください。

しかし、中学受験勉強を始めるなら、小3の3学期くらいから塾に通い始めるのがスタンダードです。そこまでに結論がでるといいですね。

仮にその時点で結論が出ていないのであれば、私からのアドバイスとしては、「とりあえず塾に通ってみたら?」です。中学受験をするかしないかは後で決めればいいのですから。

いきなり深夜まで勉強させられるわけではありません。小4のうちはだいたい週2回の通塾ですみます。自宅で夕食が食べられるように授業時間を設定している塾もあります。

中学受験をしようがしまいが、どのみち勉強はしっかりしておかなければいけないのです。中学受験をしないからといって小学生のうちはずっと遊んでいていいわけではありません。そのうえで、「大学入試改革が実行されたらどうなるか」について簡単に触れておこうと思います。

現在議論されている2020年度以降の大学入試改革では「脱ペーパーテスト」や「脱一発勝負」という方針が打ち出されています。要するに「付け焼き刃の学力」では刃が立たないような入試にしようということです。

「付け焼き刃ではダメ」ということは、受験の直前にいくら追い込んでも逆転ができなくなるということです。学年の低いうちからしっかりと学力の土台を作っておかなければいけないということです。そうすると、高校受験がない中高一貫校生のほうが圧倒的に有利になるだろうというのが教育関係者の大方の推測です。旦那様の推測とは逆ですね。中高一貫校生は特に中学生のうちに、高校受験勉強に時間を奪われず、しっかりと学力の土台を作ることができるからです。

今、改革に向けて、文部科学省では教育関係者へのヒアリングなどを行っています。漏れ聞こえてくるところによると、私立中高一貫校の先生たちは今回の改革におおむね賛成している人が多いようです。私がお話しした私立中高一貫校の先生たちも、総じて改革の方向性を歓迎していました。今回の改革に反対しているのは、むしろ地方の公立進学校の先生に多いらしいのです。

そのあたりのことについては、拙著『進路に迷ったら中高一貫校を選びなさい』(ダイヤモンド社)にくわしく書きましたので、よろしければご夫婦でお読みください。

おおたとしまさの心すっきり相談室 アーカイブ≫