中学受験を人生の糧に!親から子に伝えたいこと ~二月の勝者×おおたとしまさ~

『二月の勝者』×おおたとしまさ 中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉

inter-edu’s eye
大ヒット中学受験マンガ『二月の勝者 -絶対合格の教室-』と、教育ジャーナリスト・おおたとしまささんがコラボレーションした、話題の新刊「『二月の勝者』×おおたとしまさ 中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉」が6月30日に発行されました。なぜマンガとコラボ?勉強よりも大切な言葉とは?現在、都内共学の私立中高一貫校に通うわが子(高2)の中学受験を体験した筆者がじっくり検証し、それらの疑問を明らかにしていきます。

冷徹なカリスマ塾講師、黒木蔵人が内に秘める「願い」が100の言葉に

「日々、努力を続けるわが子に、どんな言葉をかけてやれば良いのだろう?……そんな中学受験生の親たちの悩みに応える一冊」。このように本書に書かれた説明を、決して鵜呑みにしてはいけません。わが子に対し、「この本に書いてあったんだけど~」のような伝え方は絶対にNG。その理由を説明する前に、まずは本書が生まれた経緯や概要をたどってみましょう。

おおたさんは今回、なぜ中学受験マンガ『二月の勝者』とコラボすることになったのか。

本書「おわりに」で種明かしされているように、おおたさんにはもともと、「中学受験生の親が子に伝えるべきメッセージを具体的な言葉にして1冊の本にまとめたい」という構想がありました。2018年の著書『中学受験「必笑法」』(中央公論新社)をさらに具体的なフレーズにまとめようと考え、実際に100の言葉を準備していたのです。そこに『二月の勝者』とのコラボ話が沸き上がり、本書の誕生へとつながりました。

ここで、中学受験マンガ『二月の勝者』をご存じない方のために、簡単に内容を説明します。『二月の勝者』の舞台は、「桜花ゼミナール」という中学受験塾。主人公である冷徹なカリスマ塾講師・黒木蔵人や新米塾講師の佐倉麻衣らが、中学受験を選択したいくつもの親子とさまざまなドラマを繰り広げます。

「君達が合格できたのは、父親の『経済力』そして、母親の『狂気』」……などと、刺激的すぎるセリフを連発し、周りを凍り付かせる黒木ですが、おおたさんは「彼が子どもたちに向ける眼差しには何らかの『願い』を感じる」と共感します。そこで、「彼が内に秘める『願い』をともに叶えるために親としてできることは何か」を、100の言葉として表現し、本書ができあがりました。

本文は四つの章に分けられ、各章25の言葉とそれぞれの解説文、『二月の勝者』から引用したマンガの1シーンで構成されています。最初から順に読むのもいいし、そのときの自分が気になる言葉をピックアップして読むのもおすすめです。

言葉一つひとつに共感と発見が

では、わが子の中学受験を数年前に終えた筆者にとって、心にズシンと響いた項目を、いくつか引用しながら紹介しましょう。

まず、「そうそう、そうだよね!」と大いに共感したのは第8講「勉強の成果はいつどんな形で表れるかわからない」と、第46講「テストの成績がいいというのはカッコいいけれど、もっとカッコいいのは努力を続けられること。それは人生最強の武器になる」。

勉強でも仕事でも趣味でも、何かに取り組んだら、すぐに結果を欲しがっていませんか。こんなに時間をかけたのだから、こんなにお金を使ったのだからと、わかりやすい見返りを求めてしまう気持ち、よくわかります。この傾向は、受験の真っただ中にいると、特に顕著に表れます。筆者自身もそうでした。新小学4年生から大手塾に通い始めたわが子は、6年生になると、平日は週4日の塾通い、さらに週末や長期休暇には「○○特訓」や「▲▲模試」のようなオプションも数多く受講し、これだけ頑張っているのだから(=お金をかけているのだから)、成果が出ないわけがない、偏差値はもっと上がるはず……と信じて疑いませんでした。

けれども、そう思い通りに事は運ばず、意気込んで受けた模試で偏差値が下がってしまうこともありました。『二月の勝者』でも、「夏休みの頑張りが9月の模試に反映されていない!」と憤ったり、号泣したりする親子の姿が描かれています。そんな親子に対し、黒木講師は「今は力を溜めてかがんでいる状態だと思ってください。夏に頑張り切れた者には大ジャンプの時が必ず来ます。いいですか、夏の成果は9月には出ません」ときっぱり語っていました。

いま、高2になったわが子を見ていると、あのころの頑張りや努力の積み重ねが、さまざまな場面で力になっているのを感じます。毎日の学習習慣に始まり、部活や学校行事における集中力や粘り強さは、中学受験によって養われたものでしょう。また、難しいことや大変なことに果敢に挑戦する度胸やたくましさ、たとえ目標に届かなくても、「それならこれをやってみる」という切り替えの早さやメンタルの強さ(面の皮の厚さ?)もなかなかのもの。そう、あんなに頑張った見返りは、テストの点や入試の合否だけでなく、着実にわが子の心身の成長に寄与し、血や肉になっていたのです。なぜか、学習面の成長については、今のところ際立った成果は現れていないようですが……。

大人たちにも投げかけたメッセージとは

100の言葉の中には、受験生やその親というカテゴリーだけでなく、大学生や社会人、主婦など、どのような立場の人でもドキッとしてしまうサジェスチョンがたくさん登場します。たとえば、第13講「入試本番での唯一の味方はそれまでがんばってきた自分。そのときまでにどれだけ頼もしい自分をつくっておけるかの勝負だよ」。

受験生だけでなく、大人たちも日々、さまざまな場面で不安を抱えながら、仕事や課題と向き合っています。おおたさんは、「そのときに頼りになるのは『自分はできる限りのことをやってきたんだ』という自信です。そこに自信がもてないと、不安に勝てません」と不安に打ち勝つ方法を明かし、「早い段階からそのことをイメージできると、未来の自分のためにつらいところでのもうひと踏ん張りができる受験生になっていきます。またそういう未来志向の視点に立つことで、いまの自分と対話するだけでなく、未来の自分と対話できるひとに育ちます」と言葉にこめた意義を解説します。

未来志向の視点に立つことで、未来の自分と対話できるひとになる。大人になってしまった筆者には、「あなたはこれまで、できる限りのことをやってきましたか?」「ちゃんと昔の自分と向きあえる大人になっていますか?」と問いかけられているように読めるのです。この本は、受験生のためだけでなく、おおたさんが大人たちに投げかけたメッセージ集でもあると思います。

中学受験を親子の成長ストーリーに

最後に紹介したいのは、第83講「決断のあと、それを活かす努力をどれだけできるかでその決断の価値は変わる。つまり人生における『決断』の良し悪しは、決断したあとに決まる」。第一志望の学校に合格した子。第一志望に手が届かず、第2志望以下の学校に合格した子。中学受験の真っただ中にいると、前者は幸せを手にし、後者はその逆のように思えてしまいます。

しかし、おおたさんはこう解説します。「絶対にここがいちばんいい学校だと思って選んだ第一志望に進学できたとしても、そこで努力を怠ったらその道を選んで失敗だったことになってしまいます。逆に、いちばん行きたかった学校ではないところに進学することになっても、そこでこそ得られる経験から最大限に学べば、その道が正解だったことになります」。それはつまり「決断した時点ではその良し悪しはわからない。決断したあとの努力によって事後的に決定する」のであり、これこそが「人生の鉄則」だと語ります。

第一志望に合格したからといって、バラ色の未来が約束されているわけではありません。自分の人生を正解にするのも不正解にするのも、自分の努力次第だというわけです。

さあ、おおたさんからの挑戦状(?)ともいえる100の言葉を、どのように受け止め、活用するか。それは私たち大人や、それぞれの家庭の判断にゆだねられています。最初にお伝えしたように、本書に綴られた言葉を、右から左に子どもに棒読みで話しても、何の意味も持ちません。「ママは本に書かれたきれいごとを言っているだけで、本心ではいい点を取ってほしいと思っているんでしょ?」とすぐに見破られます。

本書に綴られた一つ一つの言葉を手がかりに、わが子の状態や家庭の受験方針と照らし合わせるところからスタートしましょう。自分の頭で考え、しっかり咀嚼し、腑に落ちたら、あなたの言葉で伝えてください。

ちょっぴり説教くさいけれど、温かくて、やさしくて、不思議とスーッと心に入ってくる100の言葉。中学受験を選んだ親子にとって、それぞれの成長ドラマを生み出すきっかけになるはずです。

書影

『二月の勝者』×おおたとしま 中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉
おおたとしまさ著 小学館刊 1,500円+税

大ヒット中学受験漫画『二月の勝者-絶対合格の教室-』と気鋭の教育ジャーナリストのコラボレーション。「中学受験における親の役割は、子どもの偏差値を上げることではなく、人生を教えること」と著者は言います。決して楽ではない中学受験という機会を通して親が子に伝えるべき100のメッセージに、『二月の勝者』の名場面がそれぞれ対応しており、言葉と画の両面からわが子を想う親の心を鷲づかみにします。

おおたとしまさ さん
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。麻布中学・麻布高等学校卒業、東京外国語大学英米語学科中退、上智大学英語学科卒業。
株式会社リクルートから独立後、数々の育児誌・教育誌の編集にかかわる。教育や育児の現場を丹念に取材し、斬新な切り口で考察する筆致に定評がある。
中高の教員免許を持ち、私立小学校での教員経験もある。著書は『名門校とは何か?』(朝日新書)、『ルポ塾歴社会』(幻冬舎新書)、『ルポ教育虐待』(ディスカヴァー携書)など60冊以上。