我が子の2月1・2・3日…濃厚な時間を回想する【future vol.10】(2ページ目)

2月2日

6:00起床。午後入試の結果を伝えると意外と冷静な表情。「本番は今日だから」そうです。全部が本命校という言葉は間違いではありません。でも、一番本当に行きたい学校は今日受ける学校です。小学3年生のときに来た文化祭で惚れ込んだあの日から本人も夫も私も熱望校でした。ずっと偏差値が届かなくて、過去問で合格ラインを超えたのも数回。厳しい入試になることは目に見えていましたが、「ママ、合格取ってくる!」と行って私のもとを離れていく後ろ姿を見て、昨日よりもたくましくなったように思えました。

待合室に入り、席を確保すると深呼吸。スマホを開く気持ちにもなれない。昨日とは違う緊張感が私を襲います。本人が一番緊張している。塾の先生がおっしゃっていた言葉がよぎります。「実力が出せればいけるはずです」ここに来るのは最後かもしれないけれど、3年間でよくここまで来たよね。熱望した学校の偏差値がもっと低かったら良かったのにと、何度思ったことか…。

2月2日

「それでも挑戦できる位置にまで這い上がってきたんだから、長男は凄いよ!」なんて思っていたら救急車のサイレンが聞こえてきて、明らかに近くで止まった。待合室は何だかザワザワ。「我が子に何かあったのでは?」と、緊張が増すけれど…「特にアナウンスもないし何だったんだろう」と思ったのもつかの間、今度はスマホを手にする人が目立つ。あ!9:00に昨日の午前校の発表だった!長男より先に見て心の準備とともにダメだった場合はさらに入試の手続きをしなくてはいけないので、スマホで確認…。
「合格」
2番目に行きたい学校に合格した。これでもう新たに出願する必要もない。今受験している学校と、明日の力試しの受験。これで長男の受験が終わる。始まってしまうと本当にあっという間に過ぎていく。あっけないくらいに時間が過ぎる。

入試を終えて校舎から出てきた長男は入試期間中最初で最後の弱音を吐いた。「ママ、ごめんね。難しかった。問題と友達になれなかった」この時点で長男は2番目に行きたい学校の合格を知らないのできっと心に余裕もなくいろいろなことにつぶされそうになっていると感じたので、「ちょっと散歩しよう! このまま受験生の波に乗って駅に行って電車に乗っても良いことない気がする。これまでさんざん中学受験の波に乗ってきたから、ちょっとくらい遠回りしよう!」

景色の良い神社まで足を運び、そこで合格発表を一緒に見る。ウルウルしながら一緒に喜んだ2月2日。「ママ、2番目の学校大好きだからうれしい。○○部活があるのも2番目だけだし、絶対入部する!制服もカッコいいし…でも、1番目の学校…行きたかったな…ダサい制服着たかった…」

まだ結果は出ていないし分からないよ? と、持ち上げるのはやめて、ただひたすらうなずいた。「お腹空いたしパスタ食べて帰ろう!」コロナを警戒して控えていた外食を解禁して1時間だけ塾で最後の自習をして帰宅。帰路で長男は「あ~塾楽しかったな。もっと塾にいたかったな」とつぶやいたのが今でも印象に残っています。

2月3日

5:30起床。6:30出発。3日間のうちで一番早い始動です。ネルシャツに紺のラルフローレンのパーカーというスタイルで降りてきた長男。「あれ? 今日はオックスフォードシャツとカーディガンじゃなくていいの?」って顔を多分私がしたのでしょう。聞く前に長男が、「今日はもう通うことのない学校だからさ。好きな服装で行こうと思って。入試終わったら学校に行くかもしれないし」と言い出した。長男は大事なことを忘れている様子…「ねぇ、14:00に熱望校の結果発表だけど一緒に見ないの?」あっ…って顔をしながらはにかみ、お決まりのぜんざいを食べる。「毎日よく飽きないね」って笑いながら、中学受験最後の朝を終え、穏やかに会場で別れた。もう4回目ともなると親子ともども慣れてきていた。

保護者控室はひろ~いアリーナ。とにかく寒い! そしてちょっと大きいと感じるクラシック音楽が流れている。さすがに3日目…ちょっと眠気と疲労が身体を襲いかかってきます。スマホを取り出し…徒歩10分の美容室を勢いで予約。会場を後にして1年ぶりにカットとトリートメントを施してもらうことにしました。3年半頑張ってきて、本番はたった3日。でも、3日で終わらせてくれる長男に感謝しなくてはいけないと思いながら意識せずに伸びてしまった髪をバッサリ。
「春の卒業式と入学式にはダウンスタイルで参列したいので少し短めにお願いします」とオーダーしている自分がいました。そして再び会場へ。温かい飲み物で暖を取りながら、私は無意識に2年後の次女の受験のことを考えて、受験日本番の持ち物などのメモを取っていました。それもこれも、2月1日の受験校の合格がもたらしてくれる余裕でしょうね。

14:00の合格発表

入試を終えて自宅の最寄り駅までひとまず帰り、駅まで迎えに来てくれていた夫と落ち合います。乗車したのが13:57。長男が「難しかった」と言った熱望校の入試結果まで後3分です。

時間が経つにつれ「もしかして合格しているかもしれない。長男が難しいと感じたということは、ほかの人も感じたかもしれない。合格者平均点が低い可能性だってあるかも!」と、淡い期待は膨らみます。

しかし、結果は「不合格」泣くわけでもなくただ無言でうなずく長男の姿に思わず「繰り上げ合格があるかも! 1週間待ってみよう!」と、問題を先延ばしにするような発言をしてしまいます。私自身に言い聞かせるように…。そして、遅くなったけどお昼ご飯を食べよう!と、夫が提案するも、「お腹空いてない」とつぶやいてふさぎこんだ長男。この日はコンビニでおにぎりやらサンドウィッチやら長男の好きなものを選んで家で食べることにしました。

中学受験が終わった日

帰宅するときょうだいが長男にまとわりつきます。お疲れ様! と、くっつき、長男のswitchをすぐに遊べるように充電しといたよ! と…。満面の笑みで持ってきます。「あ、switchの存在忘れてたわ!」と普段通りの明るくヘラヘラ笑う長男の姿が切ないような…なんとも言えない気持ちになりました。

でも楽しそうにswitchをきょうだいでプレイする姿に安心したのか、単なる疲れか、私が2時間ぐっすり眠ってしまいました(笑)この日の夜、これまでのテキストやプリントやノート、過去問をコピーした大量の紙を全て本人がまとめました。「すごい量だね。ここにある知識が全て長男の頭に詰まっていると思うと、我が子ながら本当によく頑張ったと思うわ」と言うと、「ママ、大学の志望校は変えない。頑張るよ」と言っておちゃらけて見せた長男。明日から録画した鬼滅の刃全部順番に見ていかなくちゃ! と、ヤル気に満ちて? 眠りにつきました。

振り返って

中学入試本番の3日間は例えるなら、我が子の出産当日から退院までの時間と同じくらい濃厚で、相手が意思をぶつけてくるぶんもっともっと濃厚で、1年経った今でも通塾する6年生の姿を見ると1年前の我が子と重ねてしまいウルウルきてしまいます。

小さな体に大きなリュックで頑張る全国の受験生に、勝利の女神がほほ笑むことを願ってやみません。今回の記事は参考になるような内容ではなく、どちらかというとたくさんいる受験生のうちの1人の出来事といった内容となってしまいましたが、もし何か1つアドバイスできることがあるとすれば、これから訪れるであろう反抗期に備えて? 入試の待ち時間にその日その日の状況や気持ちを書き留めておくことをおすすめします。読み返すととっても長男が愛おしくなります(笑)

書初めの課題の字が一発勝負の適当な字でも、学校課題のスタディサプリの動画を3倍速で再生しながらぼーっとしていても、やるときはやる子だと、思い出させてくれる一生のお守りになると思います(笑)

futureさん

futureさんのプロフィール

啓明館に通塾する5年生女の子(2024年中学受験予定)のママ。中学1年生になる男の子も小3から啓明館に通塾。4月から中高一貫校に進学しています。

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