個性?管理?奥深い学校制服の歴史と実情から見える日本社会の今(2ページ目)

制服モデルチェンジと教育改革は車の両輪

本書を読んで少し驚いたのは、制服をモデルチェンジした高校(中高一貫校を含む)が思いのほか多かったことです。著者の調べによれば、1980年代半ばから増え、1992年のピークには414校がモデルチェンジしたとのこと。その後バブル崩壊の影響と一通りモデルチェンジが終わったことで激減。しかし、今でも年間100校以上がモデルチェンジしているのです。制服のバリエーションの多さも感動的でした。

むろん、制服の自由化を進めた学校もあります。1970年代から私服通学OKを続けている学校も残っています。この傾向は伝統校ほど強いとのこと。しかし、どちらかといえばそれは少数派になり、むしろ、私服からふたたび制服に戻した学校が増えているようです。

かつては生徒管理の象徴のように扱われたこともある制服ですが、いまや多くの生徒が制服を支持しているわけです。といってもただの制服ではありません。生徒はやはり、おしゃれでかわいい制服を着たい。少子化が進む現在、学校側も生徒の意向は無視できません。統一した制服に「生徒管理」の側面が残っていることは確かですが、「かわいい」「かっこいい」を重視する生徒にとって、そんなことは気にもならないでしょう。

1980年代から始まった制服のモデルチェンジは、生徒の意識まで変えてしまったと言えるのかもしれません。「”かわいい”が管理を駆逐してしまった」と記しています。

「生徒は『かわいい、かっこいい制服を着たい』、学校は『人気が集まって多くの生徒がほしい』、制服メーカーは『オリジナルの制服を売りたい』・・・三者の思いが一致したところから、制服がさまざまな形で進化を遂げたといえよう」(第1章)

実際に制服モデルチェンジの効果はかなり高そうです。第1章に掲載された、モデルチェンジを行った女子高校の難関大学合格実績の推移の表を見ると、それがよくわかります。また、地盤沈下の激しかった高校で制服を復活させたところ、難関大学の合格率が高くなった事例も珍しくはないようです。

むろん、生徒の大学進学実績を伸ばすには制服を変更するだけではダメで、教育プログラムの改革は不可欠。「制服が伝統を作り、その結果として大学進学実績にも影響を与える」のです。あくまでも教育改革の一貫として制服モデルチェンジを行った学校が成功を収めているのです。