地理が得意に!世界中の家がおもしろいドラえもんの本(2ページ目)

好奇心から始まる学びはしっかり身につく

本書の巻頭「この本について」に、こんなことが書いてありました。

人が生きていくうえで欠かすことのできない「衣食住」のうちの一つである住まい。人類は大昔から、生活スタイルや周りの環境に合わせてくらしやすい住まいをつくり、より快適で安心して生活できるように改良を重ねてきました。住まいは、まさに人の知恵と技術の結晶なのです。
住まいにはその土地の特色が表れます。熱い地域なら風通しをよくして涼しくする、寒い地域なら熱を逃がさないようにする、ほかに気候風土を生かした素材を使うなど、さまざまなくふうがされています。住まいの特徴を知ることは、その地域の気候や文化を理解することにつながります。

気候が乾燥している地域は、雨も少なく木も少ないからこんな素材で家をつくってきた、日本の豪雪地方には雪の危険を避けるはこんなくふうがある、といった例が多数紹介されています。巻頭のカラーページには、日本と世界の個性的な家が写真付きで紹介してあり、家づくりワールドにすんなり入っていけます。

どんな子でも、さまざまな家のどれかには関心を持ってくれそうです。そして、どんな住み心地か知りたい、こんな家が並ぶ国に行ってみたい、このへんてこな家をボクもつくりたいなど、本書を読みながら、子どもたちが一人ひとり個性的な想像の翼を膨らませていくようすを想像してしまいました。

さらに、家の中のさまざまな場所やアイテム、キッチン=台所やトイレ、お風呂などが、昔どうなっていたかも書いてあるので、自分が今使っている感じと比べ、今の時代に生まれてよかったとか、昔のスタイルを体験してみたいとか、いろいろと思うこともあるでしょう。未来のスマートハウスの話もあって、将来どんな機能がある住まいにしたいかなんて、親子会話のきっかけにもなるかもしれません。

学校や塾の授業は、集団指導で単元ごとに学習することが決まっているので、一人ひとり異なる想像力や好奇心を、学びに直接結びつけるのは難しいものです。だからこそ家庭では、その子が抱いた関心や好奇心を、できるだけ自由に羽ばたかせてあげたい。そのきっかけ作りに、身近な家を扱いながら情報が世界中に広がっていく本書は、とても有効だと思います。

20年度から始まった新学習指導要領が目指す「考える力」の育成や「学んだことを生きる力や将来の幸せにつなげる」という目標は、学習が、生活実感や暮らしの知恵とかけ離れてしまったことへの反省から提起されたもの。学んだことが、今の社会でどう生かされているのか、将来どんな形で実現されようとしているのか、自分がそれにどう貢献できそうなのか、そんなリアリティのある想像力を子どもたちが育てていってくれたら素晴らしいと思います。それは教養として身につくことで生涯の武器となるだけでなく、確実に各科目の成績向上にもつながっていきます。