ポストコロナ期をどう生きる? 未来を担う子どもたちへ知的刺激に満ちあふれるメッセージ集(2ページ目)

大人だって、コロナ禍での新しい社会の答えを知らない

なぜこのような本を編集しようと考えたのか。編者の内田さんは、「まえがき」に掲載した寄稿者への「寄稿のお願い」の中で、こんなふうに記しています。

「中高生たちはこの(コロナ・パンデミックという)”歴史的転換点”以降の世界を、これから長く生きなければなりません。彼らに”生き延びるために”有益な知見や情報を伝えることは年長者の義務だと僕は思います」

編者が寄稿者に求めたのは、「同時代を生きる少し人生経験の豊富な先輩として中高生にもわかりやすく誠実に説明」すること。専門家として当たり前の用語や概念も、根源的な意味に立ち返り、「噛んで含めるように」解説することを求めたのです。そのおかげか、「上から目線」な部分は皆無。大人が読んでも、「あの概念はそういう意味だったのか」と気づかされることの多い本となりました。

ここでは寄稿者の文を一部引用することで本書の魅力をお伝えいたします。

まずは30代と40代の識者からのメッセージです。

冒頭で、偉そうに何かを言ってくる大人は無視して構わないと言った。理由は(未来は自分たちで作ることのほかに)もう一つある。大人たちだって、これから作るべき新しい社会の答えを知らないのだ。答えはまだ誰にもわからないような危機に今人類は直面している。答えがわからないからこそ、一から一緒に、みんなで考えようという姿勢が、ますます大事になる。
(30代 経済思想 斎藤公平氏「ポストコロナにやってくるのは気候危機」より)

だから君がたった今、誰とも話が合わないことに悩んでいるとしても、君が美しいと思うことを、素晴らしいと思うことを、格好いいと思うことを、何らかの集団に属するために、作り笑いでやり過ごすために、無理に変えないでほしい。誰かに否定されても、簡単に取り下げないでほしい。
(40代 人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」キュレーター 後藤正文氏 「君がノートに書き付けた一編の詩が芸術であること」より)

われわれはこのコロナ禍を解決してくれる解決策がどこかにあるはずだ、と信じたい。しかしそんなものは「まだ」どこにもない。コロナ禍を乗り越える知見はコンテンツとしては「まだ」存在していないのです。それは身銭を切って必死に考え、調査し、研究している「誰か」がこれから生み出す「かもしれない」ものです。それを担うのが「知」の仕事であり、大学の仕事なのです。
(40代 ポピュラー音楽研究・メディア論 増田聡氏 「大学の学びとは何か」より)