センター試験速報 物理基礎

2020年度

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全体概観

例年通り第1問の小問集合、第2問の波動・電気、第3問の力学と、各分野からまんべんなく出題された。分野の偏りはなく、教科書の基本事項からの出題である。組合せ選択肢の問題は昨年より2問少ない4問出題、また適当なグラフを選ぶ問題は昨年と変わらず1問出題されている。

難易度:やや難化

大問3題の構成で出題された。
第1問は小問集合であり、並列のばね、等加速度運動、交流による送電の効率、うなり、熱に関する正誤問題からの出題であった。例年通り概ね物理量の定義や用語についての正確な理解に関する出題である。

第2問はA、Bからなる構成であり、Aが互いに逆向きに進む波とその重ね合わせ、Bが三つの抵抗と直流電源および切り替えスイッチからなる回路からの出題であった。抵抗回路の出題は昨年に引き続き2年連続である。

第3問はA、Bからなる構成であり、Aがゴムひもとエネルギー保存則、Bが斜方投射からの出題であった。斜方投射の計算は物理基礎の範囲外であるが、問題に計算方針を指示することで物理基礎の範囲とするという異例な手法での出題であった。

ゴムひもの問題、斜方投射の問題は今までに経験したことがあるかどうかが鍵となった。全く出会ったことがなければ、その場での考察は難しいだろう。制限時間に対する問題量としては適切であった。

設問別分析

【第1問】小問集合

第1問は、昨年同様に物理基礎のさまざまな分野を扱った小問集合であった。昨年同様、計算だけでなく、現象に関する正確な知識を問う問題が出題された。
問1は、並列の合成ばねを背景にした出題だが、合成ばね定数に関する知識などなくても、水平な棒とそれに糸で取り付けた物体を一体として、力のつり合いを立てれば解答できる。
問2は、運動エネルギーの大小関係とあるが、「同じ大きさの力で1秒間引いた」とあるので生じる加速度の大小関係を考えれば良い。
問3は、変圧器で昇圧してから送電すると送電の電流が小さくて済むため、送電線において失われるエネルギー(送電線の抵抗における消費電力)が抑えられるということへの理解があれば解答できる。
問4は、うなりの公式を覚えていればそれだけで解答できる。オはうなりの公式の説明に用いる考え方だが、この問い方だと何のために計算したのかがわからず、不思議に思った受験生もいただろう。
問5は、潜熱という言葉の定義を正確に理解しているかどうかが鍵であった。潜熱は融解熱、蒸発熱など状態変化に利用される熱の総称であるため、固体から液体に変化する際に物質に吸収される熱である融解熱も潜熱のひとつである。他の選択肢の間違いのほうが見つけやすいので消去法が考えやすいかもしれない。

【第2問】波動、電気

Aは、波の独立性と重ね合わせの原理に関する問題であった。
問1は、グラフを読めば解答できる平易な問題。ここではあまり差はつかないだろう。
問2は、単純な重ね合わせではなく、変位の時間変化グラフに直してからの重ね合わせなので理解に差が出る出題であった。
Bは、3つの抵抗と切り替えスイッチと直流電源からなる回路に関する出題であった。
問3は、電流の流れていない抵抗における電圧降下が0であることを正確に理解しているかどうかが問われた。
問4は、スイッチの切り替えで回路の合成抵抗がどのように変化し、回路全体での消費電力がどう変わるかが理解されていれば解答できる。

【第3問】力学

Aは、ゴムひもの先端に小球を結び静かに放す運動であり、物理の2次試験でよく見る出題である。
問1は、自由落下時間に関する問いであるため、等加速度運動に関する理解のみで解ける。
問2は、力学的エネルギー保存のみで解答できる。しかし、ゴムひもの振る舞いに慣れていなければ立式に不安を感じたに違いない。
Bは、斜方投射に関する出題であった。物理基礎では直線運動のみしか扱わないため、解法に誘導が与えられた。
問3は、水平方向の等速度運動を考えれば答えられる。
問4は、鉛直方向の等加速度運動を考えれば答えられる。
斜方投射の計算に関する説明は教科書に発展事項として載っていることが多いので、確認してみよう。

2019年度

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全体概観

例年通り第1問の小問集合、第2問の波動・電気、第3問の力学と、各分野からまんべんなく出題された。分野の偏りはなく、教科書の基本事項からの出題である。

難易度:やや難化

大問3題の構成で出題された。第1問の小問集合は、ばねの弾性力、摩擦による速度変化、電磁波の種類と周波数の序列、原子と放射線の基礎知識に関する正誤問題、比熱からの出題であった。原子と放射線の範囲からの出題は2015年以来である。

第2問は、Aが気柱の共鳴、Bが二つの抵抗と直流電源からなる回路に関する出題であり、設問ごとに異なる設定を用いて問われている。気柱の共鳴問題は現行課程において本試験では初めての出題である。

第3問は、Aが運動方程式およびエネルギーと仕事の関係に関する設問であり、Bが傾きの異なるなめらかな斜面をすべり落ちる二物体の運動の比較に関する問題であった。Aでは個々の物体に分けて考えることがポイントである。また、Bでは傾きによって到達時間は異なるが、到達速度の大きさは変わらないことがポイントである。Aでは2017年まで毎年出題されていたエネルギーの利用についても問2で問われている。また、Aの問題は2017年第3問Bとほぼ同じ設定の出題であった。

組合せ選択肢の問題は昨年より1問多い6問出題、またグラフの問題が1問出題された。昨年出題されなかったエネルギーとその利用は、小問集合での出題に加えて、第3問力学のなかで1問出題されている。
電磁波や原子に関する知識の出題、不慣れな気柱の共鳴問題、確かな基礎を問う力学問題が重なることで、難度はやや高かったと考えられる。

設問別分析

【第1問】小問集合

第1問は、昨年同様に物理基礎のさまざまな分野を扱った小問集合であった。計算主体の昨年とは異なり、現象に関する正確な知識を問うものが増えた。
問1は「床から離れる」ということが「垂直抗力がゼロ」であると理解できていればフックの法則で解答できる。
問2は、なめらかな面では等速度運動、摩擦のある面では加速度が負の等加速度運動であることを把握し、それぞれの場合の速度変化がどのように表現されるか理解できていれば解答できる。
問3は、電磁波の周波数に関する分類問題であり、知識問題であった。
問4は、原子と放射線に関する正確な知識が問われる問題となっている。最も適切である解答がぼんやりとした表現になっているため、別の選択肢の誤りをすべて指摘できなければ正答は難しい。
問5は、電力と比熱の定義を理解していれば解答できる基本的な問題である。

【第2問】波動、電気

Aは気柱の共鳴に関する問題であった。気柱の共鳴は現行課程の本試験では初めての出題である。そのかわりに、現行課程の本試験では初めて正弦波のグラフを用いた問題が出題されなかった。
問1は、共鳴時の管内での定常波の図が描ければ解答できる。
問2は、ヘリウムガスによって音速が大きくなっても定常波が生じる音波の波長は変わらないことがわかっていれば解答できる。

Bは二つの抵抗と直流電源からなる回路に関する出題であった。
問3は、この回路が並列回路であることがわかるかどうかがポイントであった。回路図を自分で描けるよう学習することが重要である。
問4は、抵抗値が長さに比例し断面積に反比例する、また抵抗に流れる電流の大きさが同じとき消費電力は抵抗値に比例する、という電気抵抗に関する基本事項が理解できていれば解答できる。

【第3問】力学

Aは運動方程式とエネルギーと仕事の関係に関する出題であった。ほぼ同じ設定の問題が2017年度第3問Bでも出題されている。
問1では、個々の力について「何が何を引く力であるのか」を把握すること、そして「どの物体について運動方程式を立てているのか」を明確にして、物体ごとに整理する力が問われている。
問2でも、エネルギーに関して物体ごとに整理する力が求められており、物理基礎でよく出題されているエネルギーの分類に関する問いも加えられている。

Bは同じ高度から傾きの異なる斜面をすべる2つの物体の運動に関する出題であった。斜面等をすべり下りる場合、一般に摩擦がなければ、エネルギー保存則より到達速度の大きさは等しくなる。一方で、到達時間は傾斜が急であるほど短い。このことはよく知られているので計算せずとも解答出来る受験生も多いだろう。
問3は、傾斜角度をθとおいて、垂直抗力と到達時間を実際に計算してみることで確認すると良い。
問4は、運動の方向に垂直な力は仕事をしないこと、また重力が保存力であることが理解できていれば、計算せずとも解答できる。

2018年度

問題・解答はPDFファイルです。ご利用の端末や通信環境によっては表示に時間が掛かる場合がございます。

全体概観

例年通り第1問の小問集合、第2問の波動・電気、第3問の力学と、各分野からまんべんなく出題された。分野の偏りはなく、教科書の基本事項からの出題である。組合せ選択肢の問題は昨年と同じく5問出題されている。また毎年出題されていた発電方式は今年度は出なかった。

難易度:やや易

大問3題の構成で出題された。第1問の小問集合は、仕事とエネルギー、3つの力のつりあい、電荷・静電気力の性質と電気量の単位、直接音と反射音を利用した距離の測定、熱平衡と熱容量の大小からの出題であった。問4では常温での音速が約340m/sであることを知識として知っていないと解答できない。

第2問は、Aがうなり、Bが電気抵抗とジュール熱に関する出題であった。うなりは昨年に続いて2年連続での出題である。

第3問は、Aが鉛直投げ上げと水平投射、Bが定滑車につるされたおもりに関する力のつりあいと等加速度運動に関する出題であった。Bでは物体B、Cを一体系とみることがポイントである。

設問別分析

【第1問】小問集合

第1問は、昨年同様に物理基礎のさまざまな分野を扱った小問集合であった。問1は直接仕事を計算しないで、仕事と力学的エネルギー変化の関係を使うと平易に解答できる。問2の3つの力のつりあいでは、力のつりあいの式を縦方向と横方向で立式すればよい。問3の電荷・静電気力の性質と電気量の単位は知識で解ける問題。問4の直接音と反射音を利用した距離の測定では、常温での音速が約340m/sであることを知識として知っていないと解答できない。問5の熱平衡と熱容量の大小では、熱容量と温度変化の積が熱量を表していることがポイントである。全体的に計算主体の出題であった。

【第2問】波動、電気

Aはうなりに関する問題であった。うなりは昨年に続いて2年連続での出題である。問1はうなりの合成波を知らなくても、与えられた二つの波を重ねあわせて、振動のピークとゼロになる時間を見極めることができれば、適切なグラフを選択することができるが、振幅が2倍になることには注意が必要である。問2ではうなりの振動数と周期の定義をしっかりと把握しておくこと。

Bはジュール熱と電気抵抗に関する出題であった。問3は単純なジュール熱の計算で易しい。一方、問4の抵抗値の計算は数値が煩雑なので落ち着いて計算しないとミスをしやすいが、問われていること自体は抵抗率、断面積、長さの比例・反比例関係である。

【第3問】力学

Aは鉛直投げ上げと水平投射に関する出題であった。鉛直投げ上げに関する出題は2016年に同様のテーマで出題されている。問1は最高点では小球の速度が0になることがポイント。問2は鉛直方向と水平方向に運動を分解して考えれば、鉛直投げ上げと等速直線運動の単純な合成であることに気付く。

Bは定滑車につるされたおもりに関する力のつりあいと等加速度運動に関する出題であった。問3では静止した状態での力のつりあい、問4では等加速度運動している状態での運動方程式を立式するが、両問とも物体BとCを質量2mの一つの物体とみることがポイントである。

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