センター試験速報 世界史B

2020年度

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全体概観

大問数、設問数、マーク数はいずれも昨年と同様であった。例年の出題傾向を踏襲しているものの、受験生が比較的苦手としがちな文化史、戦後史、東南アジア史に関わる選択肢が多く、平均点は昨年より低くなると予想される。

難易度:やや難化

大問数は4問。設問数は2005~2019年に引き続いて各9問と例年通りであり、グラフの読み取り問題は5年連続で出題された。グラフ問題は、昨年空欄補充とグラフを組み合わせた新しい出題形式であったが、今年はab正誤組合せの形式であり、年号がわかれば正解にたどりつける従来の傾向に戻った。

地図問題も、昨年のように表示領域と時期の組合せではなく、今年は地名と位置の組合せを問う例年の形式に戻った。空欄補充問題が昨年の3問から2問へ減少した一方で、正文または誤文の文章選択問題の総数は、昨年と同様27問で変化なく、全設問数に占める割合は昨年同様高かった。日本史関連の事柄は第4問のリード文Bで取り上げられており、設問レベルでも、日本史の事項の選択肢を含むものは昨年と同様2問であった。

戦後史の出題は、昨年の3問から5問に増加しているが、全体としては各時代バランス良く出題されているといえる。文化史が正解となる問題が28点分出題されたうえに、受験生が比較的苦手としがちな戦後史・東南アジア史に関わる選択肢も例年より多く、幅広い知識が問われる問題となっており、平均点は昨年より低くなると予想される。

設問別分析

【第1問】文化の繁栄や受容

Aはフランドルの代表都市ブルッヘ(ブリュージュ)、Bはパルテノン神殿、Cはメキシコ市北部の礼拝堂に祀られる「グアダルーペの聖母」についてのリード文であった。Aではイタリアについての設問のほかに、交易や宮廷文化について、地域・時代ともに幅広く出題された。Bでは文化の受容についてab正誤組合せが出題された。Cでは指導者や南北アメリカについて出題された。全体的に、文化史を含めた幅広い知識が定着しているかが問われたと言える。

【第2問】戦争や対外関係

Aは英仏抗争史、Bは冷戦、Cは日中関係の発展における鄧小平の役割についてのリード文であった。Aではイギリスとフランスの抗争やその帰結についてab正誤組合せが出題された。Bでは冷戦に関する年代整序6択問題が出題された。Cでは鄧小平や中国の対外関係についてアジア史を中心に幅広い時代から出題された。全体としては、戦後史を含めた幅広い知識が問われた。

【第3問】図書館と書物

Aはカリフたちによって建てられた三つの図書館、Bは大英博物館図書部、Cはドイツを代表する啓蒙思想家イマニュエル=カントについてのリード文であった。Aの年表補充問題では昨年と同様、中世に関する知識が問われた。Bでは植民地化や1848年革命について地域・時代ともに幅広く出題された。Cではナチス=ドイツに関する地図問題を含め、西洋史を中心に出題された。全体的に、年表補充問題や地図問題などへの対応力が鍵となった。

【第4問】人やモノの移動

Aは漢の武帝が設置した敦煌郡、Bは播州高砂出身の船乗り徳兵衛、Cは第一次世界大戦により変容したドイツ帝国とオーストリア=ハンガリー帝国についてのリード文であった。Aでは漢の武帝やユーラシアの東西を結ぶ人やモノの動きについて、中国史を中心に幅広く出題された。Bでは移民や移住、芸能や文芸について、文化史の知識を含めた幅広い知識が問われた。Cでは近年定番となったグラフ問題が出題された。グラフについては、年代の知識を問う問題であったため、歴史の流れの正確な把握が求められた。

2019年度

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全体概観

大問数、設問数、マーク数はいずれも昨年と同様であったが、地図問題が昨年より1問増加して2問出題されたほか、昨年出題が無かった年代整序6択問題が復活するなど若干の変化があった。

難易度:昨年並み

大問は4問。設問数は2005~2018年に引き続いて各9問と例年通りであり、グラフの読み取り問題が4年連続で出題された。一方で、地図を用いた問題は、昨年の1問から2問へと増加し、そのうち1問は王家の支配領域と時期の組合せを判定する問題となっており、近年見られない傾向であった。また空欄補充問題が昨年の2問から4問へ、文化史の出題も6問から9問へと増加したほか、昨年出題されなかった年代整序問題が1問出題された。正文または誤文の文章選択問題の総数は、昨年の28問から27問と若干減少したが、全設問数に占める割合は昨年同様高く、正文選択の割合も昨年の25問から24問へと1問減ったものの昨年同様高かった。出題される時代は前近代が昨年の14問から18問に増加、近現代は昨年の22問から18問に減少しており、バランス良く出題されている。地域についても同様にバランスよく出題されており、日本に関する選択肢を含む設問も2問見られた。時代・地域混合の選択肢からなる設問も昨年と同様に多く、学習が手薄になりがちな文化史の問題も増加したが、全体としては、地域・時代ともに幅広い基礎力が問われる標準的な問題となっており、平均点も昨年並みと予想される。

設問別分析

【第1問】歴史的建造物や遺跡

Aはイギリスの国会議事堂、Bは考古学的な発見と歴史書の記述の信憑性の関係、Cはベラルーシ南西部の都市ブレストの建造物についてのリード文であった。Aでは建造物についての設問のほかに、反乱や独立運動、戦争について、地域・時代ともに幅広く出題された。Bでは冷戦期の出来事について年代整序6択問題が出題された。Cではポーランドを中心とする東欧史について出題された。全体としては、戦後史を含めた幅広い知識が問われた。

【第2問】記録や文字

Aはデンマーク王ハーラルの石碑、Bはモンゴル語で著された『元朝秘史』、Cはムガル帝国の歴代皇帝による回想録についてのリード文であった。Aでは文化史も含めた西洋史を中心に出題された。Bではティムールに関する地図問題を含めた内陸アジア史を中心に出題された。Cではインド史をはじめとして地域・時代ともに幅広く出題された。全体的に、文化史や地図問題などへの対応力が鍵となった。

【第3問】国際関係

Aはカナダを中心とした国際的経済関係、Bは近世ヨーロッパでの王位継承をめぐる争い、Cはイスラーム政権の君主による聖地の保護と巡礼路の安全確保についてのリード文であった。Aでは経済史を中心に、空欄補充とグラフを組み合わせた新しい出題形式がみられた。Bでは王家の支配領域とその時期の組合せを問う新傾向の地図問題のほかに、ヨーロッパ史を中心に幅広く問われた。Cでは宗教史を中心に出題された。グラフ・地図ともに、世界史の基礎的な知識に基づく考察力が問われたと言える。

【第4問】宗教と政治

Aは古代ギリシアの宗教と演劇、Bは中国の天子と祭祀、Cはアンデス地域で栄えた帝国における太陽崇拝についてのリード文であった。Aの年表補充問題では中世に関する知識が問われており、前近代における年表補充問題は近年見られない新しい傾向であった。Bでは中国史を中心に文化史の知識など幅広く問われた。Cではアメリカ史を中心に出題された。全体的に、文化史を含めた幅広い知識が定着しているかが問われたと言える。

2018年度

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全体概観

大問数、設問数、マーク数はいずれも昨年と同様であったが、地図問題は1問のみで、年代整序6択問題の出題が無いなど若干の変化があった。

難易度:昨年並み

大問は4問。設問数は2005〜2017年に引き続いて各9問と例年通りであり、グラフの読み取り問題が3年連続で出題された。一方で、地図を用いた問題は、昨年の4問から1問へ、空欄補充問題が昨年の4問から2問へと大きく減少し、2011年以来定着していた年代整序問題の出題がみられなかった。また文化史の出題が3問から6問へと倍増した。正文または誤文の文章選択問題の総数は昨年の20問から28問となり、特に正文選択は昨年の18問から25問へと大幅に増加した。出題される時代は前近代・近現代ともに昨年とほぼ同じ割合で、戦後史も昨年の3問と変わらなかった。地域についてもバランス良く出題されており、日本に関する選択肢を含む設問も3問見られた。時代・地域混合の選択肢からなる設問も昨年と同様に多く、学習が手薄になりがちな文化史の問題も増加したが、全体としては、地域・時代ともに幅広い基礎力が問われる標準的な問題となっており、平均点も昨年並みと予想される。

設問別分析

【第1問】世界史上の帝国や王朝の支配

Aはローマの支配の正統性と平和、Bは『アーサー王物語』とヘンリ2世の関係、Cは中国の王朝交替と正統論についてのリード文であった。Aではローマ帝国についての設問のほかに、支配の仕組みやローマ帝国の支配下にあった諸都市のその後の歴史について、地域・時代ともに幅広く出題された。Bでは叙事詩などについての文化史や帝国一般についての問題が出題された。Cでは中国史を中心とするアジア史について出題された。全体としては、文化史を含めた幅広い知識が問われた。

【第2問】宗教や宗教集団

Aはシク教とシク王国、Bは16世紀のヴェネツィアにおけるユダヤ教徒、Cは近代におけるムスリムの改革や抵抗運動についてのリード文であった。Aでは地図問題を含めインドを中心に出題された。Bではユダヤ教徒や商業など幅広く出題された。Cでは宗教関連の出来事を中心に出題された。全体的に、文化史や地図問題などへの対応力が鍵となった。

【第3問】世界史上の都市とその建造物

Aはパリの市壁やルーヴル城、Bはドレスデンの聖母教会、Cは上海の西欧風建築や現代のビル群についてのリード文であった。Aではヨーロッパの河川や君主を中心に出題された。Bでは東欧・北欧や第二次世界大戦期の出来事など幅広く問われた。Cでは中国史を中心に、近現代の中国と各国の貿易額を示したグラフ問題も出題された。グラフについては最近の傾向と同様に、正確な年代の知識が身についているかどうかが鍵となった。

【第4問】人の移動と戦争との関わり

Aはロシアのコサックと反乱、Bは20世紀の戦争と難民、Cはユダヤ人音楽家ヘルムート=シュテルンについてのリード文であった。Aでは政治史を中心に時代・地域ともに幅広い基本的知識が問われた。Bの年表補充問題では戦後史についての知識が問われた。Cでは20世紀を中心とする政治的出来事について出題されており、全体的に、近現代史の幅広い知識が定着しているかが問われたと言える。

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