センター試験速報 地理B

2020年度

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全体概観

例年どおりの分量・構成だが、形式は前年よりシンプルに。地誌の題材には馴染み深い地域が選ばれ、全体的にやや易化か

難易度:やや易化

難易度

難化した前年に比べるとやや易化したものと思われる。
自然環境、集落などに関する前半では、特に統計判定問題を中心に思考力を問われる設問が多かった。
地誌の題材は過去2年と違い馴染みの深い地域であったが、産業の分野で迷いやすい問題も含まれている。
地域調査の問題はきわめて平易であった。
出題形式も簡素化しており、全体としては取り組みやすいセットといえる。

分量

前年並み。大問6題構成が2006年以降変わっていない。
設問数・マーク数は35ずつで前年と同じ(2016年以降連続)。
大問ごとの配点や設問数も前年と同じ。

出題形式

組合せ式の問題が18年の17問、19年の14問から、本年は11問(6択式8問、4択式3問)に減り、単純に図表から4択で解答を選ぶ形式が、19年から倍増した(18年6問、19年7問、20年14問)。
例年同様に統計資料や図表を多用し、地理的な考え方や理解を問う問題が中心である。図表の点数は、前年の39点から37点とやや減少した。また、2014年以降複数出題されていた写真を用いた問題は1つだけであった。

出題内容

各大問の分野構成は例年通りである。
産業の分野があてられる第2問では、4年続けて「資源と産業」がテーマとなった。
地誌を扱う第4問では、長らく地誌の大問単位では取り上げられていなかった2地域である東南アジア(2001年以来)とオセアニア(1996年以来)が組み合わせて出題された。
比較地誌の第5問では、ともにBRICSの一員である中国とブラジルが扱われた。
地域調査の第6問では、山梨県の甲府盆地周辺が題材となった。地形図の読図は前年同様に一点だけであった。会話文を用いた出題は2014年から定着している。

設問別分析

【第1問】世界の自然環境と自然災害

例年通り第1問は自然環境に関する出題であり、6年続けて自然災害に関する設問が盛り込まれた。問1・問5・問6など、やや判断に迷う設問が並び、出鼻を挫かれた受験生もいたであろう。

問1 4高地の標高や地形に関する説明文の正誤判定。消去法を利用したい。

問2 4地点の気候ハイサーグラフの判別。ウは暖流と偏西風で温和。

問3 地震の震源と火山が分布する地域の判別。大地形の分布を想起。

問4 気圧帯の模式図に関する説明文の正誤判定。きわめて易しい。

問5 経線上の樹高に関するグラフの判別。目新しい題材であり迷いやすい。

問6 災害発生頻度に関する統計地図の判別。ハイチ大地震などの知識があれば処理しやすい。

【第2問】資源と産業

第2問は例年、産業分野に当てられている。そのうち「資源と産業」というテーマは2017年から3年連続の出題となった。日ごろからの統計問題への取り組みが試されたが、比較的易しめなので失点を防ぎたい。

問1 マンガン鉱の輸入量を示すグラフの判別。「鉄鋼の生産」がヒント。

問2 水産業と水産資源に関する説明文の正誤判定。他国の200海里は遠洋。

問3 2カ国の輸出品目の統計における品目判別。シンガポールに農業はない。

問4 米の生産・貿易に関する統計地図の判別。標準的であり落とせない。

問5 風力発電が盛んな国名の選択。単純な設問。恒常風+資源の乏しさ。

問6 4カ国の経済・第三次産業に関する統計の判別。スイスは金融業盛ん。

【第3問】都市と村落

第3問は2016年以来、集落(都市・村落)と生活文化を組み合わせた大問になっていたが、本年は集落単独であった。問1・問5・問6など思考力を問われる設問が並んでおり、落ち着いて考えられたかが鍵。

問1 大都市の分布に関する統計の判別。途上国の方が都市の拡大が盛ん。

問2 首位都市と2位都市の差が小さい国名の選択。首都に集中しない国。

問3 都市問題・対策に関する説明文の正誤判定。ジェントリフィケーション。

問4 ホンコンで働く外国人の統計の国名判別。①④で迷うが増加がポイント。

問5 日本国内の人口移動に関する統計の県名判別。鳥取は人口自体が少ない。

問6 都市(宇都宮市)内部の機能分化に関する統計地図の判別。難問。

【第4問】東南アジアとオセアニア

地誌を扱う大問の地域として東南アジアが出題された例としては2001年まで、オセアニアに至っては1996年まで遡らなくてはならない。馴染み深い地域であり、標準的な内容であるが、問3・問4の産業分野はやや難しい。

問1 4地点のうち最も深い場所を含む海域の選択。すなわち海溝を考える。

問2 4地点の雨温図の判別。Dは南半球の西岸海洋性気候区。

問3 農作物の産地分布を示す統計地図の判別。やや難。さとうきびが決め手。

問4 鉱産資源の産出量に関する統計の判別。③④には絞れるだろうが…。

問5 4カ国間の輸出額を示す流線図の国名判別。シ=中国をまず判断。

問6 生活文化と民族・宗教に関する説明文の正誤判定。やや細かいが頻出。

【第5問】中国とブラジル

2016年度から導入された比較地誌の大問。本年は過去2年に比べて馴染み深い国が選ばれた。問2・問3など、やはり産業分野の設問でやや迷う。とはいえ、全体としては標準的である。

問1 2河川の統計グラフの判別組み合わせ。アマゾンの特徴がわかりやすい。

問2 2カ国の農産物の生産統計の判別。カとキの判別は迷いやすい。やや難。

問3 4カ国の製造業生産額グラフの品目判別。これも迷うだろう。消去法で。

問4 4カ国の貨物輸送に関する統計の判別。絶対量が大きいのは米・中。

問5 2カ国と日本出身者の居住者数を示すグラフの判別組み合わせ。良問。

【第6問】地域調査(山梨県甲府盆地周辺)

例年通り地理A(第5問)との共通問題である。会話文形式の出題が定着した一方で、3年続いて新旧地形図の比較が出題されなかった。全体として、常識的に対応できる取り組みやすい問題が並んでおり、取りこぼしは避けたい。

問1 3地点の気候に関する資料の判別組み合わせ。頻出の内容・形式。

問2 鳥瞰図における方位選択。特別な知識は不要で、きわめて易しい。

問3 地形図中の土地利用に関する説明文の正誤判定。4つとも決めれば楽。

問4 養蚕業に関する資料に関する会話文の適語補充。常識で判断可能。

問5 小売店の分布を示す統計地図に関する説明文の正誤判定。読めば分かる。

問6 人口統計に関する説明文の正誤判定。人口増加=社会増加+自然増加。

2019年度

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全体概観

例年どおりの分量・内容だが、形式面では前年よりシンプルに。馴染みの薄い地域の地誌は、受験生を悩ませたか。

難易度:やや難化

分量

前年並み。大問6題構成が2006年以降変わっていない。 設問数・マーク数は35ずつで前年と同じ(2016年以降連続)。 大問ごとの配点や設問数も前年と同じ。

出題形式

組合せ式の問題が前年の17問から14問(6択式10問、4択式4問)に減り、 そのぶん、単純に図表から解答を選ぶ4択の問題が増加した。例年同様に統計資料や図表を多用し、地理的な考え方や理解を問う問題が中心である。図表の点数は、前年の32点から39点と大幅に増加したが、これは主に統計表が大きく増えたことによる。また、写真は3点(第6問・問3の図中の写真も含めると4点)であった。

出題内容

各大問の分野構成は例年通りである。
産業の分野があてられる第2問では、3年続けて「資源と産業」が出題された。地誌を扱う第4問で「地中海沿岸地域」が取り上げられるのは2013年以来である。
また、第5問では2016年度から2~3カ国の比較地誌が出題されているが、今回は「ウクライナとウズベキスタン」という受験生には馴染みの薄い2カ国が選ばれた。
なお、第6問は「地理A」と共通問題である。

難易度

形式的には手間のかかる設問が減ったものの、内容的には、特に第4問・第5問において、受験生にとっては手薄になりやすい国や地域が扱われた上に、やや細かい知識を必要とする問題が並んでいるため、難易度は上がったと思われる。

設問別分析

【第1問】世界の自然環境と自然災害

例年通り第1問は自然環境に関する出題であり、5年続けて自然災害に関する設問が盛り込まれた。全体的に標準的な設問が並び、学習の成果が反映されやすい内容であった。

問1 4地域の植生と土壌に関する説明文の正誤判定。
問2 4地点の地形断面図の判別。大地形の分布を考える。
問3 4河川の月別平均流量グラフの判別。過去頻出の内容である。
問4 4地点の気候ハイサーグラフの判別。各々の気候区を想起したい。
問5 北極海の海氷分布に関する説明文の正誤判定。目新しい題材である。
問6 熱帯低気圧・台風に関する説明文の正誤判定。

【第2問】資源と産業

第2問は例年、産業分野に当てられている。そのうち「資源と産業」というテーマは2017年から3年連続の出題となった。日ごろからの統計問題への取り組みが試された。

問1 4作物の栽培地域の変化を示すグラフの判別。やや手間がかかる。
問2 コーヒー(アラビカ種)原産地の選択。珍しく単純な設問である。
問3 コーヒー豆の流通に関する説明文の正誤判定。
問4 農畜産物の生産統計における国名判定。標準的。
問5 4カ国の輸出品目統計における国名判定。
問6 日本の事業所分布の統計地図の判別。アとイの判別がやや難しい。

【第3問】都市と村落、生活文化

集落(都市・村落)に関する問題は2009年以降続けて出題され、近年は生活文化との組み合わせが定番になっている。難しめの設問が並んでおり、落ち着いて考えられたかが鍵。

問1 パリ周辺の景観を示した写真の判別。センター特有の出題だがやや難。
問2 4首都の機能集積を示した統計の判別。
問3 4都市と河川に関する説明文の判別。問2と共に知識が必要。
問4 旧宗主国と植民地の組み合わせの正誤判定。これも珍しい単純な設問。
問5 奈良盆地の地形図3葉の歴史順整序。形式として目新しい。
問6 日本の文化・レジャー施設の分布図の判別。やや考えにくい。

【第4問】地中海沿岸地域

地誌を扱う大問の地域として「地中海地域」が出題された例としては、2004年、2013年などがある。扱われた内容が細かく、受験生にとっては厳しい大問だったのではないか。

問1 4地点の自然環境に関する説明文の正誤判定。
問2 4つの海峡に関する説明文の正誤判定。やや細かい。
問3 農作物の産地分布を示す統計地図の判別。
問4 3カ国の輸出品目に関する統計グラフの判別。
問5 都市の成り立ちや現状に関する説明文の正誤判定。
問6 4カ国の移民送出国に関する統計の判別。かなり難しい。

【第5問】ウクライナとウズベキスタン

新課程の実施に伴い2016年度からは比較地誌の大問に衣替えされた第5問だが、扱う国の数が前年の3カ国から2カ国に戻った。しかし、いずれも学校の授業などで扱われることの少ない馴染みの薄い国であり、得点しづらい設問が並んだ。

問1 2カ国の地形および気候環境に関する統計の判別。
問2 2カ国の農産物と鉱産物の生産統計の判別。
問3 2カ国のGDP推移グラフに関する説明文の正誤判定。
問4 3カ国の食肉生産、食料供給に関する統計の判別。
問5 2カ国の言語と都市景観の判別。昨年の「ムーミン問題」を思い出させる。

【第6問】地域調査(宮崎市)

例年通り地理A(第5問)との共通問題である。2年続いて新旧地形図の比較が出題されず、地形図読図のウエイトが低下している。全体としては標準的な難易度の大問である。

問1 3都市の交通の発達に関する資料の判別。ユニークな題材である。
問2 宮崎市の観光統計に関する説明文の正誤判定。特別な知識は不要。
問3 地形図と景観写真に関する説明文の正誤判定。
問4 土地利用を示した新旧数値地図に関する説明文の正誤判定。
問5 市町村別農作物生産を示す統計地図の判定。
問6 口蹄疫に関する会話文の適語補充。過去の出題と比較して斬新な内容であった。

2018年度

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全体概観

比較地誌が前年までの2カ国から、3カ国の対比に変化した。スマートフォンやTVアニメなど、多様な題材を扱う出題がみられた。

難易度:昨年並み

分量

前年並み。大問6題構成が2006年以降連続している。設問数・マーク数は前年と同様に35ずつであった。
大問ごとの配分は前年と同様であったが、第3問の設問数が増え、そのぶん第6問の設問数が減り、一昨年と同じに戻った。

出題形式

組合せ式の問題が前年の12問から17問(6択式12問、4択式5問)に増加。そのぶん、文章の正誤判定問題は減少した。
例年同様に統計資料や図表を多用し、地理的な考え方や理解を問う問題が中心である。図表点数は大きく増加した前年(31点)とほぼ同じ32点で、そのうち写真は2点であった。

出題内容

各大問の分野構成は例年通りである。産業の分野があてられる第2問では、2年続けて「資源と産業」が出題された。
地誌を扱う第4問で「西アジア」が取り上げられるのは2014年以来である。
また、新課程の実施に伴い2016年度から比較地誌が出題されている第5問だが、これまでの2カ国の比較形式から、3カ国の比較に変更された。

第2問では、スマートフォン製造に用いる資源や技術が取り上げられた。
第5問では、北欧の童話をモチーフにした「ムーミン」などの日本のTVアニメーションが題材となった。
第6問では、例年おなじみの新旧地形図の比較問題が出題されなかった。

設問別分析

【第1問】世界の自然環境と自然災害

例年通り第1問は自然環境に関する出題であり、4年続けて自然災害に関する設問が盛り込まれた。全体的に標準以上の設問が並び、理解が不十分な受験生にはやや得点しづらい大問である。

問1 大地形の分布に関する理解が決め手となる。標準。
問2 それぞれの湖に関する知識ではなく、周辺の自然環境の理解が必要。
問3 成帯土壌チェルノーゼムに関する基本的な出題である。
問4 植生に関する文章の正誤判定だが、丁寧な判読が必要。
問5 サヘルに関する正誤判定だが、常識的にも判断できそうである。
問6 エルニーニョ現象に関する問題だが、冷静に考えれば難しくない。

【第2問】資源と産業

第2問は例年、産業分野に当てられている。そのうち「資源と産業」というテーマは2008、2011、2014、2017年と3年周期で出題されてきたが、この周期が崩れて2年連続の出題となった。得点しやすい設問が並んでいるので、ここで稼ぎたい。

問1 スマートフォンに用いる資源や技術の分布。ボーキサイトの判定が鍵。
問2 九州に分布する半導体産業の立地条件。基本的な理解があれば十分。
問3 世界の工業地域に関する文章判定。標準的な設問である。
問4 自動車産業に関する統計判定。アジアの判定だけなら難しくない。
問5 科学技術と農業に関する正誤判定。基本用語の理解が決め手となる。
問6 日本のサービス業の分布。大都市圏への集積度が判定のポイント。

【第3問】生活文化と都市

集落(都市・村落)に関する問題は2009年以降続けて出題されている。近年は生活文化との組み合わせが定番になっている。前年は設問数が一つ減ったが、本年は以前の6問に戻った。難問はみあたらないので、とりこぼしに注意したい。

問1 宗教に関する統計判定。ドイツ=新教と単純化していると、やや迷う。
問2 衣服の地域性に関する問題だが、文章から画像を思い浮かべたい。
問3 マレーシアの民族問題。用語の知識に関する標準的な設問である。
問4 都市人口に関する統計判定。できれば4カ国とも判定してほしい。
問5 旧城下町の都市景観に関する文章判定。これも4地点とも判断したい。
問6 日本の都市ごとの人口ピラミッドの判定。労働力の分布を考える。

【第4問】西アジアと周辺地域

地誌を扱う大問の地域として西アジアがとりあげられるのは、2014年以来である。やや難度の高い設問が並ぶ大問であった。

問1 地形環境に関する問題。アルプス=ヒマラヤ造山帯の位置を考える。
問2 農業生産に関する問題。D=アフガニスタンの知識は乏しいだろう。
問3 各国の宗教別人口の判定。「外国籍の住民を含む」が重要なヒント。
問4 産業と経済に関する3指標の判定。やや難しいので冷静に対処したい。
問5 外国からの訪問者と日本からの直行便の統計を判定する。難問である。
問6 3カ国における紛争に関する組み合わせ問題。正確な理解が必要。

【第5問】北欧3カ国の比較

新課程の実施に伴い2016年度からは比較地誌の大問に衣替えされた第5問だが、これまでの2カ国の対比であったものが、3カ国(ノルウェー・スウェーデン・フィンランド)の比較として出題された。地誌に関する標準以上の知識と理解が求められている。

問1 3地点の気温の年較差。ヨーロッパの気候における海洋の意味を考える。
問2 3カ国の発電エネルギー。頻出だが、地誌的な知識が必要である。
問3 3カ国の貿易統計判定。スを先に判定できれば、あとが決めやすい。
問4 アニメーションを題材にした設問。「海賊」「ウラル語族」が鍵。
問5 形式が目新しい統計判定。北欧=高福祉・高負担という理解が必要。

【第6問】地域調査(岐阜県高山市)

例年通り地理A(第5問)との共通問題である。設問数は、昨年一つ増えたものが、元に戻されて6問となった。例年出題される新旧地形図の比較がなかった。全体としては標準的な難易度の大問である。

問1 3都市の気候判定。日本海側・太平洋側・内陸の特徴をつかむ。
問2 統計地図における指標の意味が分かっていれば、常識で判断できる。
問3 会話文の判定。会話内容を丁寧に読解しないと混乱しそうである。
問4 地形図の判読。基本的な地図記号の知識で判定可能である。
問5 観光に関する統計の読み取り。下線部だけを見ていると間違いやすい。
問6 標高と植生帯との組み合わせ。一般的な理解を当てはめて考える。

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