センター試験速報 物理

2020年度

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全体概観

例年と変わらず大問数6題の出題。設問数に変化はなかったが、マーク数が2つ減少した。
第6問の選択問題では、ニホニウムに関する問題が出題されている。

難易度:昨年並み

昨年と形式は変わらず大問数は6題で、分野は第1問が小問集合、第2問が電磁気、第3問が波動、第4問が力学、第5問が熱力学、第6問が原子物理であり、第5問と第6問が選択問題であった。すべての範囲からまんべんなく出題されている。

第3問Aで出題された水面波のドップラー効果の問題のように、ドップラー効果の式を暗記しているだけでは正解できない問題が出題されるなど、単に公式にあてはめるだけでなく、与えられた物理現象を理解したうえで立式しないと正解できない問題が多く見られた。

第1問の小問集合では、力のモーメント、2つの直線電流による磁力線の様子、クインケ管、理想気体の状態変化、2物体の衝突が出題された。

第2問の電磁気では、Aがコンデンサーの直列接続・並列接続に関しての出題で、図1(b)を図1(c)に描きかえる意味が正しく理解できるかどうかで差がつくだろう。これができれば決して難しくない。

Bでは、磁場中と電場中を運動する荷電粒子についての出題であった。難しくはないが、問3、4ともに組合せ問題のため、両方が正解の選択肢を選ばないと満点にはならない。

第3問の波動では、Aがドップラー効果、Bでは光の干渉が出題されている。Aでは音波ではなく水面波のドップラー効果であり、ドップラー効果の原理を理解しているかが求められている。また、Bでは問3でヤングの実験、問4でニュートンリングがテーマとされた。

第4問は力学の出題で、Aは小物体の衝突と鉛直円筒面内の小物体の運動について出題された。問題集などでよく見られる設定なので、しっかり演習していれば確実に正解できる問題である。また、Bは鉛直ばねでつながれた2物体のつりあいと運動を考察する出題であった。基本に忠実に力のつりあいの式や運動方程式を立てられるかどうかが問われている。

第5問の熱力学は、水槽中に浮かぶ円筒容器に封入された気体の状態変化が出題されたが、熱力学の出題としては例年より難度が高い出題であった。

第6問の原子物理は、原子核と放射線に関する出題で、問1では新元素であるニホニウムの生成と崩壊、問2では結合エネルギーと質量欠損、問3ではα線β線γ線3種類の放射線の軌道が問われた。問3では磁場中ではなく電場中の軌道であったことに注意したい。

全体として分量が少し減っているが、難度は昨年並みと予想される。

設問別分析

【第1問】小問集合

問1では、点Oから一様な棒の重心までの距離を考えればよい。
問2では、1本の導線のまわりの磁力線を考え、2本の導線の流れる電流が同じ向きであることから選択すればよい。
問3では、経路ADCがどれだけ長くなると再び最小になるかを、λで表すとよい。クインケ管は引き出した距離と経路差が異なることに気を付ける必要があるが、今回の問題ではその旨が問題文に書いてあるので、それにならって解答すること。
問4では、ボイル・シャルルの法則と気体の内部エネルギーの式から考える。
問5では、衝突前の小球Aの運動する方向とそれに垂直な方向で、運動量保存則を考えればよい。

【第2問】電磁気

Aはコンデンサー回路についての出題である。
問1では、図1(b)、(c)より導体の部分を導線に描きかえればよいことに気づくかどうかで差がつく。
問2では、問1と同様に回路図を描きかえたうえで、導体Q、R間のコンデンサーの電圧を考えると正解できる。
普段自分で回路図を描いているかどうかで差がついただろう。

Bは磁場中と電場中を運動する荷電粒子についての出題である。
問3では、フレミングの左手の法則を用いて磁場中の荷電粒子にはたらく力の向きを考え、磁場は荷電粒子に仕事をしないことから判断する。
問4では、電圧によって生じた電場から荷電粒子がされた仕事と運動エネルギーの関係から考えるとよい。

【第3問】波動

Aは水面波のドップラー効果に関する問題である。
問1では、振動数と周期の関係など、物理量の理解が正確に出来ているかで差がついたであろう。
問2では、x軸の正の向きに波源が運動するとき波長がどのように変化するかを考えて、グラフを選択するとよい。

Bは光の干渉に関する問題である。
問3では、光の干渉条件の式から明線の間隔の式を求め、明線の間隔と光の波長やスリットの間隔の関係から正解を選択できる。
問4では、異なる媒質同士の境界面における反射による位相の変化と屈折率による光路長の変化について、正しく理解していると正解できる。

【第4問】力学

Aは小物体の衝突と鉛直円筒面内の小物体の運動に関する問題であった。
問1では、運動量保存則を考えるとよい。
問2では、まずエネルギー保存則から点Pにおける小物体の速さを求め、点Pにおいて小物体にはたらく重力と遠心力を考慮して垂直抗力が0以上となる条件を考えれば良い。典型問題のため、答えを覚えている受験生も多かったであろう。

Bは鉛直ばねでつながれた2物体のつりあいと運動を考察する出題であった。
問3では、小球1、2それぞれにはたらく力に着目して、力のつりあいの式を立てる。
問4では、問3と同様に小球1、2それぞれにはたらく力に着目して、ここでは運動方程式を立てる。

【第5問(選択)】熱力学

水槽中に浮かぶ円筒容器に封入された気体の状態変化に関する問題である。
問1では、浮力と重力のつりあいから考える。
問2では、垂直抗力がどうなると上昇を始めるか、水圧と気体の圧力による力のつりあいから考える。
問3では、体積が大きくなると浮力も大きくなるので、上昇を始める。温度はボイル・シャルルの法則から求められる。

【第6問(選択)】原子物理

原子核と放射線に関する問題である。
問1では、放射性崩壊による原子番号や質量数の変化から考える。
問2では、与えられた数値と核反応式から求める。
問3では、α線、β線、γ線がどのように帯電しているかから求める。

2019年度

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全体概観

出題分野が2016年以前の構成に戻り、第3問ではドップラー効果と単振動を組み合わせた問題が出題された。

難易度:やや難化

昨年と同様に大問数は6題で、分野は第1問が小問集合、第2問が電磁気、第3問が波動、第4問が力学、第5問が熱力学、第6問が原子物理であり、第5問と第6問が選択問題であった。すべての範囲からまんべんなく出題されている。昨年は力学が選択問題であったが、今年度は2016年以前と同様に熱力学が選択問題となり、力学はすべて必答問題となった。

第3問Bで出題された音源が単振動するときのドップラー効果のように見慣れない設定の問題もあったが、落ち着いて考えれば決して難しくはない。第3問は波動からの出題だがこの問題でも力学の知識が必要であり、物理では力学が特に重要であると再認識する出題内容であった。

第1問の小問集合では、運動エネルギーと運動量に関する正誤問題、2つの点電荷による電場の重ね合わせ、凸レンズ、シリンダーに封入された理想気体、ばねに取り付けられた小球の単振動の周期が出題された。
第2問の電磁気では、Aが半導体ダイオードに関しての出題で、半導体ダイオードの原理と半導体ダイオードを含む電気回路が扱われている。問2の設問は2015年の問題を応用した問題であった。Bは平行レール上を移動する導体棒の電磁誘導からの出題であり、2年連続で電磁誘導が出題された。
第3問の波動では、Aが光の屈折と干渉、Bでは音源が単振動するときのドップラー効果が出題されている。Aでは設問2問とも文章穴埋め問題が出題されており、問われている内容や設定を的確に把握することが求められている。
第4問は力学の出題で、Aは一定の加速度で動く電車内での、つるされたおもりと静かに放すボールの運動を扱い、慣性力に関する基本事項の理解について問われた。Bは糸につながれた小球の鉛直面内の円運動から出題された。
第5問の熱力学は、熱サイクルから出題され、問題でp-V図が与えられていた。問3ではp-T図への変換が出題されている。
第6問の原子物理では、X線発生装置(X線管)でのX線の発生を題材に、X線に関する基本事項が出題されている。

設問別分析

【第1問】小問集合

問1では、運動エネルギーと運動量に関する知識があるかどうかで差がつく。
問2では、x=2d で電場が打ち消し合うことから立式する。
問3では、倍率が1.0倍のとき、レンズとスクリーンの距離、レンズと物体の距離の関係がどうなるかを考える。
問4では、まずピストンにはたらく力のつりあいを考える。
問5では、ばねの単振動の周期は質量とばね定数から求められることを用いる。

【第2問】電磁気

Aはダイオードを含む回路についての出題である。
問1では、ダイオードに電流が流れる原理を覚えているかどうかで差がつく。
問2では、リード文にあるように半導体Aから半導体Bへの電流しか流れない。このことから、グラフを選択する。

Bは磁場中にある導体棒に電流が流れたときにはたらく力についての出題である。
問3では、導体棒に流れる電流を求めれば、磁場から導体棒を流れる電流にはたらく力の大きさが求められる。
問4では、導体棒が等速度になるとき、導体棒に電流が流れなくなり、磁場から力がはたらかない。

【第3問】波動

Aは薄膜や透明な壁による光の屈折に関する問題である。
問1では、空欄1はどの部分の光学距離が等しいかを考えて計算し、空欄2は位相の変化を考慮して、光の干渉条件の式を立てる。
問2では、図2から「透明な板から境界面への入射角」と「境界面から空気への屈折角」のうち、どちらの方が大きいかを読みとり、図3にあてはめて考える。

Bは単振動する音源によるドップラー効果に関する問題である。
問3では、選択肢にcosがないのでどうすればsinで表せるかを考えて、図5のグラフを式で表す。
問4では、ドップラー効果で音が最も高くなるときの音源の速度の向きや大きさを考え、P、Q、R、Sのうちどの点かを選択する。

【第4問】力学

Aは減速する電車内での慣性力に関する問題であった。
問1では、電車内の少年から見て、慣性力も含めたおもりの力のつりあいを考える。
問2では、ボールを静かに放すので、電車内の少年から見ると合力の向きにボールは等加速度直線運動を行う。

Bは鉛直面内で円運動をする小球に関する問題であった。
問3では、力学的エネルギー保存則から、運動エネルギーの変化を考える。
問4では、β=90°のときの小球の速さを求めて、円運動の運動方程式を立てる。

【第5問(選択)】熱力学

気体の定積変化と定圧変化に関する問題である。
問1では、アは過程A→Bでの温度変化の正負を求めれば、気体の内部エネルギーの正負がわかる。イは気体が外部にする仕事が0であることと熱力学第1法則から考える。
問2では、グラフで囲まれた面積が1サイクルで気体が外部にした仕事に等しい。
問3では、ボイル・シャルルの法則より、定積変化では圧力と絶対温度は比例し、定圧変化では圧力が一定であることから選択する。

【第6問(選択)】原子

X線スペクトルに関する問題である。
問1では、アは静電気力による位置エネルギーの変化がすべて運動エネルギーになると考え、イは運動エネルギーがすべてX線のエネルギーになると考える。
問2では、ウは元素特有のX線の名称を選び、エは電子のエネルギー準位の差を考える。
問3では、オは加速電圧が等しいときにX線の最短波長がどうなるかを考え、同じ金属からX線が発生するとき、特性X線の波長がどうなるかを考える。

2018年度

問題・解答はPDFファイルです。ご利用の端末や通信環境によっては表示に時間が掛かる場合がございます。

全体概観

昨年と比べ大問数、設問数、マーク数に変更はなかったが、分野の構成が昨年にから更に変更した。第4問Bで熱力学が出題され、選択問題である第5問が力学の出題となった。波動は全てが必答問題として出題されている。また第6問の原子物理で素粒子に関する記述が初めて出題された。

難易度:昨年並み

昨年と形式は変わらず大問数は6題で、分野は第1問が小問集合、第2問が電磁気、第3問が波動、第4問が力学と熱力学、第5問が力学、第6問が原子物理であり、第5問と第6問が選択問題であった。すべての範囲からまんべんなく出題されている。また、第6問問1で素粒子に関する記述が初めて出題された。初めて出題された。グラフの選択問題が昨年と比べて増加している。

第1問小問集合では、2物体の完全非弾性衝突、音の性質に関する正誤問題、複数点電荷による電場の重ね合わせ、気体分子の2乗平均速度、円板を切り取ったときの重心について出題された。

第2問電磁気では、Aがコンデンサー充電の過渡現象と抵抗で発生するジュール熱、Bが磁場中を一定速度で落下運動する長方形コイルの電磁誘導について出題された。

第3問波動では、Aが正弦波の式、波の反射と重ね合わせ、弦の振動、Bが2枚のガラス板の間での反射を繰り返す光波の干渉について出題された。

第4問は力学と熱力学の2分野から出題され、Aは力学から、ばねにつながった小物体のあらい水平面上での運動、Bは熱力学から、ばねつきピストンとシリンダーに封入された単原子分子理想気体の状態変化が出題された。

第5問は第4問Aに続いて力学からの出題で、太陽を周回する惑星の運動について問われている。

第6問の原子物理では、小問集合の形式で出題されており、原子核と素粒子に関する正誤問題、崩壊系列、半減期の3問である。

必答問題と選択問題の出題分野が一部変更になったが、全体として見ると分野の偏りなく多くのテーマから広く出題されている。また、力学の必答問題は第4問Aのみではあるが、第2問B電磁気や第4問B熱力学のように、力学の知識も使って考える問題が出題された。第6問では素粒子に関する正誤問題が出題された。よく見かける設定も多く、日ごろの演習量で差がついた可能性が高い。

設問別分析

【第1問】小問集合

問1では、一体となる直前・直後での運動量保存則の式から速さを求めればよい。
問2では、音の速さ、振動数、速さの関係式、うなり、ドップラー効果の式などをもとに考える。
問3では、まず点Pから等距離にあるA、DとB、Cのペアを考えて、二つの点電荷による電場をそれぞれ合成し、その電場をさらに合成する。点電荷に近いほど電場は強い。
問4では、気体分子の平均運動エネルギーの式と2乗平均速度の式から考える。
問5では、円板Aと物体Bの重心の位置を用いて、切り取る前の円板の重心の位置を表して考える。

【第2問】電磁気

Aはコンデンサーと抵抗を含む回路についての出題である。
問1では、はじめコンデンサーは導線と同様に考えてよく、十分に時間が経過するとコンデンサーは充電されコンデンサーに流れる電流は0に近づく。
問2では、コンデンサーに蓄えられた静電エネルギーがすべてジュール熱として発生すると考える。

Bは磁場中を運動する長方形コイルに生じた誘導起電力についての出題である。
問3では、磁場が正方形コイルを貫く面積の時間変化を考える。また、電流の向きはレンツの法則より求める。
問4では、コイルの鉛直方向での力のつりあいより求める。

【第3問】波動

Aは正弦波とその重ね合わせに関する問題である。
問1では、時刻t=0sでの波形よりαが求められ、0.1s間に進行した距離と波長からTが求められる。
問2では、アは図2の入射波と反射波の合成波を描いてみるとよい。イは、隣りあう節と節、節と腹の間隔から、x=1.0mでは節になるか腹になるかを考える。
問3では、図3から基本振動と2倍振動において問われている波形を考え、二つの波形を重ね合わせて合成波の波形を求める。

Bは2枚のガラス板での反射による光波の干渉に関する問題である。
問4では、ウは絶対屈性率の小さい物質から大きい物質に向けて伝わる波が、その境界で反射するとき位相が反転することから解答する。エは二つの透過光の経路差の変化から現象を求める。
問5では、空欄5は強めあう条件式を立て、波長を振動数fと光の速さcで表して代入する。空欄6は振動数を大きくしたとき、再び強めあう条件式が成り立つときとの振動数の差を空欄5の結果より求める。

【第4問】力学・熱力学

Aはばねにつながった小物体のあらい水平面上での運動に関する問題であった。
問1では、水平方向での力のつりあいの式を立てる。
問2では、アは水平方向にはたらく力の合力を考え、イは放してから次に速度が0になるまでの時間を単振動の周期で表すとどうなるかを考える。

Bはシリンダー内での単原子分子理想気体の状態変化に関する問題であった。
問3では、気体の体積Vとシリンダーの断面積Sを用いて、ばねの自然の長さからの縮みを表すと、ピストンにはたらく力のつりあいよりばね定数が求められる。また、理想気体の状態方程式を用いると、ばねのエネルギーが選択肢のように表せる。
問4では、単原子分子理想気体の内部エネルギーの変化量の式を用いる。
問5では、P-Vグラフのどの部分の面積が仕事を表すかを考える。

【第5問(選択)】力学

太陽を周回する惑星の運動に関する問題である。
問1では、近日点、遠日点での面積速度の式を立てる。
問2では、まず万有引力による位置エネルギーのグラフを選択し、力学的エネルギー保存則から運動エネルギーのグラフを選択する。
問3では、遠日点が近日点に比べて万有引力による位置エネルギーが大きいかどうかを考える。そのうえで、遠日点に到達するためには近日点での運動エネルギーがどうなるかを求めれば解答できる。

【第6問(選択)】原子

原子と素粒子に関する問題である。
問1では、素粒子と質量欠損の知識から選択する。
問2では、α崩壊、β崩壊で陽子の数と中性子の数がそれぞれどのように変化するかを考える。
問3では、半減期に関する模擬実験としてしばしば見られるものである。

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