センター試験速報 日本史A

2020年度

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全体概観

在日外国人や環境・エネルギー問題など時事的な問題が目立った。

難易度:やや難化

大問数5題、設問数32問はともに昨年度と同様で、日本史Bとの共通問題の配置(第2問・第4問)にも変更はなかった。在日外国人や移民、環境・エネルギー問題、または女性の社会における立場など、昨今、さかんに話題にされる時事的な問題がみられた。常に社会の出来事に関心を寄せていた受験生にとってみれば、落ち着いて解ける問題であったと思われる。

昨年の日本史Aと同様に図版などの視覚資料をともなう出題が随所にみられ、今年は昨年にはなかった地図問題が復活した。昨年出題された「表」を提示して読み取らせる問題が今年も第5問でみられた。また、第4問(日本史Bとの共通問題)では風刺漫画から歴史を考察させる出題もみられ、来年度から導入される共通テストを意識したとも考えられる。
出題形式は、空欄補充問題・年代整序問題・正誤判定問題などがバランス良く出題された。過去問演習を繰り返した受験生にとっては、しっかりと取り組める問題であったといえる。

出題範囲は、幕末から明治・大正・昭和・平成史と、日本史Aでみられるパターンが今年も踏襲された。出題範囲が限られていることもあり、「湾岸戦争」などの語句が今年も出題されていた。明治時代の比重が高く、平成史は1990年代初頭まで話題が及んでおり、昨年の2000年代初頭の「新ガイドライン」と比較すればややその範囲は狭まったが、網羅性を重視した学習が重要であることを改めて認識すべきだろう。令和と改元され平成時代が終焉を迎えたことから、歴史の考察が現在も日々続けられている平成史の学習に時間をかけていくべきだろう。分野は政治・外交・社会経済史・文化史など多岐に及んでいたが、特に受験生の苦手とする社会経済史や文化史がやや増加したことから、これらの分野での得点力の差が明暗を分ける可能性が大きいと思われる。

設問別分析

第1問 日本における外国人(会話文)

第1問は昨年同様に、会話文形式で出題された。日本へ移住する外国人の増大を背景とした時事的な問題であったといえる。出題範囲は明治から戦後まで広い範囲に及び、その内容は外交史が中心であった。問6の地図を用いた時代整序問題は、昨年の「写真」から時代整序を判断させる問題と類似するタイプの問題であった。

問2 条約改正に関する正文4択問題。条約改正のそれぞれの担当者が推進した交渉内容を理解できていれば、迷わずに解答を出せたであろう。

問3 田口卯吉が内地雑居について自らの見解を述べた史料の読解問題。昨年も同じ形式の問題が出題された。今年度は(注)が少なかったこともあり、本文中の語句を1つずつ冷静に分析する必要があった。

第2問 幕末から明治前期の民衆運動

日本史B(第5問)との共通問題。かつては、2013年度の「明治期の特許制度」・2014年度の「明治期の租税制度」のように、テーマ的に難易度の高いものが目立ったが、2015年度の「明治期の立法機関」、2016年度の「明治期の地方制度」、2017年度の「大坂(大阪)」、2018年度の「軍制改革と西洋医学」、2019年度の「近世・近代における公家と華族」に続き、比較的取り組みやすいテーマ(「幕末から明治前期の民衆運動」)が取り上げられた。

問2 開国の影響に対する江戸幕府の対策は頻出であるが、正答を選択するためには、天保期の政策や幕府が実施した政策内容の基本的理解が不可欠である。

問3 2018年度でも血税を含む選択肢文があったため、過去問研究をきちんとしていた受験生は有利だっただろう。

問4 同時期(1884~1885)の出来事に関する設問。二科会の選択肢文が2015年度本試にあった。太政官制度の廃止や内閣制度の発足については、2019年6月全国統一高校生テストでも出題されていた。

第3問 近代の都市

第3問は近代の都市をテーマに政治・外交・文化史が出題され、範囲は明治中期から大正時代であった。昨年の第3問は明治期に活躍した人物にスポットをあてた問題であり、今年はタイプの異なる問題文から歴史を考察させたといえる。都市化が進むなかで、環境や女性の生活に関する内容が出題された。

問2 1997年に二酸化炭素の排出を制限すると取り決めた京都議定書について出題された。国際規模で地球温暖化が深刻化している社会問題を意識させる問題であったといえよう。また、大阪で万国博覧会が開催された時期について正しい理解が必要であった。なお、2025年に万国博覧会が再度大阪で開催予定である。

問6 1920年代の都市化に関する誤文4択問題。「1920年代」という時期にこだわりすぎると、どこが誤りなのかを判断しづらい。文化住宅が和洋折衷の形式をもつ住宅であることを理解しておく必要があった。

第4問 近現代の風刺漫画

日本史B(第6問)との共通問題。これまで、人物をとりあげた問題(「漫画家手塚治虫」〔2014〕、「作家林芙美子」〔2015〕、「石橋湛山」〔2018〕)と、テーマ史(「オリンピック」〔2016〕、「近現代の公園」〔2017〕、「日米関係」〔2019〕)の2パターンがあった。今年は、テーマ史(「近現代の風刺漫画」)として出題された。来年度から実施される共通テストの試行調査でも、風刺画は多く取り上げられていたため、特殊なテーマとはいえないだろう。

問2 人物に注目すると前後関係を判断するのは難しくなるため、台湾出兵、日露戦争、西南戦争に注目したい。

問3 日露戦争との因果関係を考えて選択したい。

問4 大戦景気の時期に重化学工業だけが発展したととらえていると、誤文を選択できない。さまざまな視点からこの時期の社会や経済をとらえているかを問う設問となっている。

問6 第二次護憲運動は大正末期であるため、「大正期」を正確に把握しておかなければ判断しにくかっただろう。

問8 農地改革の目的を把握していれば、正答を選択するのは容易である。

第5問 近現代日本のエネルギー資源の調達と利用

日本史Aは昨年度同様、第5問が最終問題であり、設問数も8問と変更はなかった。「石炭・石油」といった、これまで日本が依存してきたエネルギーを題材に、外交史と社会経済史が中心に出題された。逆に真正面から政治を問う問題はみられなかった。また、問7の表を提示した問題は、昨年同様に「数字」を正確に分析させる内容であった。
全体的に、選択肢文中で「日本国憲法の改正」や「消費税」など、昨今でも連日ニュースなどで報道される話題と関連性をもったものが目立ち、社会に関心を向けることの重要性を受験生に投げかけているとみられる。

問3 日ソ関係に関する時代整序問題。Iの「関東軍特種演習(関特演)」の時期を正しく判断するのは難しい。日ソ中立条約が締結された後に独ソ戦争の勃発を受け、世界情勢がどのように変化したのかを推察する必要があった。

問6 ラジオ・テレビに関する誤文4択問題。ラジオ放送の開始は1925年の大正時代末期であったことを理解していれば、迷うことはなかっただろう。

問8 石油危機(石油ショック)に関する正文4択問題。石油危機の契機やその後の経済・国際関係を問う内容であった。昨年も「湾岸戦争」に関する設問がみられた。
来年度から思考力を重視する形式の共通テストが実施されるが、時代背景や動向の変化など思考力を問う観点はこの問とも共通すると考えられる。対策として、センター試験日本史Aの過去問を解くことも決して無駄ではないだろう。

2019年度

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全体概観

思考力を試す出題が増加。図版・グラフをともなう設問が復活した。

難易度:昨年並み

大問数5題、設問数32問はともに昨年度と同様で、日本史Bとの共通問題の配置(第2問・第4問)にも変更はなかった。過去問を何度も確認してシミュレーションを万全におこなった受験生にとっては、比較的解答しやすかったと思われるが、図版や史料など視覚資料に慣れてない受験生は苦戦を強いられたと考えられる。

昨年の日本史Aでは、図版などの視覚資料をともなう出題がみられなかったが、今年は復活した。近現代重視の日本史Aの傾向は踏襲されている。特筆すべきは「働き方改革」など昨今の時事的な話題を反映してか、労働問題やそれにともなう社会経済史の問題が増加した。さらに、写真や資料を読み取らせ、思考力・分析力を試す出題もみられた。

出題形式は、空欄補充問題・年代整序問題・正誤判定問題などがバランス良く出題された。過去問では定番であった地図をともなう問題は出題されなかったが、図版・グラフ・史料を読み取る問題では、習熟度の違いにより受験生の間で得点差が生じたと考えられる。

出題範囲は、昨年同様、近世後期から戦後まで幅広く、戦後は1990年代にまで及んでいた。網羅性を重視した学習が重要であることを改めて認識すべきだろう。分野は政治・外交・社会・経済・文化とすべての主要テーマに及んでいたが、文化史が減少し、「労働」や「貿易」に主軸をおいた社会経済史が増加した。 これらのテーマは多くの受験生が苦手とする範囲である。この箇所を着実に正解できた受験生は高得点を確保できたであろう。

設問別分析

第1問 歴史のなかで音楽が果たした役割(会話文)

第1問は昨年同様に、会話文形式で出題された。「合唱コンクール」という特殊なテーマ設定で、その時々に流行した音楽の時代背景を考察させる内容となっていた。あまり一般的ではないテーマであるが、設問自体の内容は基礎力を試す問題が大部分を占めた。

問1 芸能に関する空欄補充(語句選択)問題。作曲家「滝廉太郎」と新劇運動の「島村抱月」を比較させる問であった。空欄イは内容的に易しかったので、迷わずに解答を出せたであろう。

問3 「歌詞」の内容から世相を読み取る史料の読解問題。(注)をしっかり分析して、史料の内容にあてはめて考える問題だった。

問6 写真から、年代順を判断する年代整序問題。形式的には珍しい問題設定だが、I・II・IIIの写真の説明から判断できる基礎的な内容なので、確実に得点したい。

第2問 近世・近代における公家と華族

日本史B(第5問)との共通問題。かつては、テーマ的に難易度の高いものが目立ったが、今年も比較的取り組みやすいテーマ(「近世・近代における公家と華族」)が取り上げられた。形式面では、昨年に続き史料や視覚資料を用いた問題が1問も出題されなかった。また、昨年と同様の範囲である「幕末から明治維新」が出題され、井伊直弼・孝明天皇・廃藩置県など同一用語も多く、過去問演習を徹底していれば容易に解答できたと思われる。

問1 幕末・維新期の歴史用語や、やや区別のつきにくい歴史用語の判断が求められている。理解を優先して学習を続けていた受験生にとっては易しいが、単純に用語を暗記する作業を繰り返していた受験生は苦戦したかもしれない。

問3 「明治初期の東京」は、2020年に東京オリンピックを控えていることを考えると、時事的要素も意識した設問といえるかもしれない。

第3問 明治期に活躍した浮世絵師・小林清親

第3問は明治期に活躍した浮世絵師・小林清親が生きた時代がテーマだった。昨年の人物史は日本史Bと共通問題として第4問で「石橋湛山」が出題されたが、今年は人物史が日本史Aで単独でみられた。政治史が少なく、労働問題を中心とした社会経済史や文化史・女性史とバリエーションに富んだ出題であった。

問2 明治初期の生活様式や思想の変化に関する正誤判定問題。煉瓦造りの建物や、ガス灯は文明開化の象徴である。また、「福沢諭吉」の事績を問うた基礎的な内容であった。

問4 風刺雑誌『団団珍聞』に掲載された風刺画と資料を分析する問題。「足尾」から「田中正造」を判断することは容易だか、史料の内容は設問文や「注」に留意しながら注意深く判断する必要があった。

第4問 近現代の日米関係

日本史B(第6問)との共通問題。第4問は、これまで、人物をとりあげた問題と、テーマ史の2パターンがあった。今年は、テーマ史(「日米関係」)として出題された。日米関係は頻出テーマの一つであるため、多くの受験生が安心して取り組むことができたと思われる。

問2 大久保利通(2017年第5問)、吉田茂(2018)に引き続き、人物(幣原喜重郎)に関する設問が出題された。著名な政治家については、情報を整理しておきたい。

問3 広いスパン(明治期から昭和終戦直後まで)を対象とする設問。2015年度第1問では、海外移住者をテーマとする設問が出題されていた。過去問にしっかり取り組んでいた受験生は有利だっただろう。

問4 「抑制する」、「増加させる」、という歴史用語ではない語句の選択が求められている。用語を暗記しているかではなく、理解しているかを問う設問だった。

問6 昨年引用された史料(石橋湛山「池田外交路線へ望む」)は長文だったので、読解に時間が不足して焦った受験生もいただろう。今年の史料は引用部分が少なかったので昨年よりも取り組みやすかった。プレス=コードについて理解していれば読解の一助となったと思われるが、読解問題としては注も少なく、正誤判断のしやすい設問だった。

第5問 近現代の港湾

日本史Aは昨年度同様、第5問が最終問題であり、設問数も8問と変更はなかった。
日本の「港湾」を題材としながら、産業革命・貿易・労働・公害など多岐にわたる内容が問われた。社会経済史が中心で、政治史を真正面から扱った出題は少なかった。昨年にはみられなかった、グラフ・表を用いた問題が問8で復活した。
日本史Aは時事的な内容が盛り込まれる傾向が強い。今年度は、政府が推奨する「働き方改革」を意識しての出題といっていいだろう。

問4 人物の事績を問う内容。それぞれ、選択肢の人物は活躍した時期が異なっており、あまり時間をかけずに解答できたと考えられる。また、「学問・文学」に関する出題とはいえ、大正時代の労働問題が深く関連しているので、第3問の問4・問5と類似している内容といっていいだろう。なお、プロレタリア文学は、日本史B・第1問の問6でも出題された。

問7 戦後に日本が加盟した世界経済に関する機構についての設問。池田勇人内閣が推進した経済政策についての理解が問われている。

問8 統計表の数値や国名から、その地域について考察させる内容。国名を見て、どの国がアジアNIESに含まれているかを判断するなど、現代の世界に関する基礎知識の重要性を示唆している問題だった。

2018年度

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出典:東進ドットコム

全体概観

近代文化史の出題が増加。図版をともなう設問は出題なし。

難易度:平年並

出題形式

大問数5題、設問数32問はともに昨年度と同じであり、日本史Bとの共通問題の配置(第2問・第4問)も変更なしであった。過去問研究に力を入れていれば、比較的解答しやすかったと思われる。
過去3年間の日本史Aの問題は、図版・絵画の視覚教材をともなう出題が定番であったが、今年度は図版・絵画をともなう問題はみられなかった。近現代重視の日本史Aの傾向は踏襲され、自然科学や近代文化の出題が増加した。オリンピックや、2018年夏に節目を迎える高校野球の話題など、社会的関心が高い話題に関連した出題もみられた。

出題形式は、例年通り空欄補充問題・年代整序問題・正誤組合せ問題などがバランス良く出題されていた。地図や表は出題されていたが、図版・絵画が皆無であったことから、より解きやすく感じたであろう。
出題範囲は近世後期から戦後まで幅広く、戦後は昨年同様に1980年代にまで及んでいた。
分野は政治・外交・社会・経済・文化と満遍なく出題されており、なかでも近代は自然科学・文学・思想・言論と受験生にとってはやや苦手な範囲が目立ったが、設問自体は基礎力の重視が要求されていた。

設問別分析

第1問 紙幣に描かれた肖像・経済政策(会話文)

第1問はこれまでの形式が踏襲され、会話文形式で出題された。2017年度は『妖怪ウォッチ』などのキャラクターが出題され話題となったが、今年度は典型的なテーマ設定に戻ったといえる。

問1 近代医学の土台を築いた人物や近代文学に関する空欄補充問題。昨年度同様に近代医学に関する人物の事績を問う出題がみられたことから、十分に対策はとれていたであろう。なお、選択肢中にみえる「北里柴三郎」から細菌学を学んだ「志賀潔」が第2問の問3で出題されていた。
問3 近代教育史をテーマとした問題。就学率に関する内容は、その時期に関して理解しておく必要があり、差がつく問題だったと思われる。
問6 史料の読解力を試す問題。昨年度は1設問に2つの史料が掲載されたが、今年度は1つであり短文であった。「預貯金…封鎖」などの語句から戦後の金融緊急措置令を想起したい。

第2問 幕末から明治維新にかけての軍制改革と西洋医学

日本史B(第5問)との共通問題。
かつては、2013年度の「明治期の特許制度」・2014年度の「明治期の租税制度」のように、テーマ的に難易度の高いものが目立ったが、2015年度の「明治期の立法機関」、2016年度の「明治期の地方制度」、2017年度の「幕末から明治期の大坂(大阪)」に続き、比較的取り組みやすいテーマ(「軍制改革と西洋医学」)が取り上げられた。

第5問では、かつてグラフ・表を用いた設問がみられたが、昨年に続き史料や図版を用いた問題が1問も出題されなかった。また、問題文も簡潔で読みやすいため、設問数が少ない第5問は、取り組みやすくなっている。

問3 センター試験の年代整序問題は、詳細な年代を問うものはほとんどみられず、本問も論理的に考えれば正答を導ける設問となっている。江戸後期に西洋医学が日本に紹介され、やがて外国人から医学の知識・技術を吸収するようになり、日本の医学者による世界的業績がみられるようになった、と段階的に理解できれば解けただろう。

第3問 近世後期から近代の言論活動と表現活動

第3問は言論活動・表現活動をテーマに江戸時代後期から1970年代までの政治・外交・経済・文化と多岐に及ぶ内容であった。また、全体的に選択肢が短文であることから時間をかけてじっくり考える余裕のある問題だった。

問2 尾崎行雄の行動に関する年代整序問題。明治・大正・昭和戦前期にかけての俯瞰的な視野が求められていた。「翼賛選挙」が太平洋戦争中の出来事であることを理解していれば正答できただろう。
問6 1950年代の日本社会に関する問題。選択肢文中には「鉄腕アトム」や「日本万国博覧会」など、高度経済成長期の戦後文化や社会に関するものもみられ、網羅的な学習の重要性を改めて感じさせる問題だった。

第4問 石橋湛山

日本史B(第6問)との共通問題。
2014年度では「漫画家手塚治虫」、2015年度では「作家林芙美子」というように、人物を取りあげた問題が定番となっていたが、2016年度では「オリンピック」、2017年度では「近現代の公園」がテーマとされた。今年は人物を対象とするパターンが復活したが、首相にもなり、日本史Bの教科書に掲載されている石橋湛山が取り上げられた。昨年度は表の数値を判断する設問が出題されたが、今年度は比較的読みやすい史料を用いた設問がみられたのみであったため、比較的時間に余裕をもった受験生が多かったと思われる。

問2 新婦人協会の語句を問う本問は、形式面でも第3回センター試験本番レベル模試で出題した設問と一致していたため、受験した人は有利だったと思われる。
問5 戦中・戦後の文化は盲点となりがちである。しかし、戦後の法隆寺焼損と文化財保護法の制定とを関連づけるなど、考えて記憶する学習を進めていた受験生であれば、誤文を判断するのは難しくなかっただろう。また、文化財保護法は2012年度第1問、2010年度第6問の設問文、さらに2007年度第1問の問題文でも取り上げられており、過去問演習を徹底していたならば易しい問題だと感じたはずである。
問6 軍部大臣現役武官制を取り上げた問題。こうした問題に対応するためには、「同時期に何があったか」というようなヨコの視点だけではなく、「軍部大臣現役武官制がどのように展開したのか」といったテーマ史的なタテの視点で歴史をとらえておく必要があった。
問7 昨年は第5問で大久保利通を対象として設問が出題されたが、本問では吉田茂に関する説明文の正誤判断が求められている。著名な政治家については、情報を整理しておきたい。

第5問 近現代の日本の流通業

日本史Aは昨年度同様、第5問が最終問題であり、設問数も8問と変更はなかった。
第5問は近現代日本の流通業を主題に、社会経済史を中心とした問題であった。第5問では数値をグラフ化した問題が過去3年連続でみられたが、今年度はグラフではなく「世帯消費支出額に占める購入先別の構成比」に関する表が出題されていた。また、2年後にむかえるオリンピックを意識してか、近現代のスポーツの歴史も出題された。

問5 憲法に関する問題。大日本帝国憲法と日本国憲法の比較を意識したものといえよう。両憲法の制定過程や内容が理解できていれば容易に解答できる問題だった。
問7 中曽根康弘内閣の事績に関する問題。中曽根内閣の行財政改革を取り上げた問題だった。
問8 近現代のスポーツや運動をテーマとした問題で、2020年開催のオリンピックや、2018年に選手権大会が100回目の節目を迎える高校野球を意識した出題であったと思われる。オリンピックに関連する問題としては、2016年度第4問にも出題テーマとして取り上げられている。社会的関心を常に持つようにしたい。

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