センター試験速報 日本史B

2020年度

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全体概観

共通テストの試行調査に類似した、図版を読みとらせる設問が出題された

難易度:昨年並み

大問数6題、小問数36問の問題数は昨年と同様で、2016年度に変更された大問ごとの配点は、今年も踏襲された。昨年は視覚教材を用いた問題がみられなかったが、今年は図版資料の読み取り問題が3題出題された。なかでも複数種類の資料を読みとる問題は、共通テストの試行調査と類似した性格をもっていた。

時代

旧石器時代~弥生時代を正面から扱った問題は昨年同様みられなかったが、今年は縄文・弥生時代を対象とする問題がみられた。昨年は戦後史については、1990年代までが対象とされたが、今年は占領期までにとどまった。

分野

例年通り、政治・社会経済・外交・文化とバランス良く出題されが、昨年に比べ、文化史の割合が大幅に増加した。

出題形式

第1問は会話形式かその他の形式(2017年は「手紙」の形式)、第6問は人物史かテーマ史(2016年・2017年)だったが、今年は第1問が会話形式、第6問がテーマ史(近現代の風刺漫画)のパターンで出題された。図版を用いた年代整序問題は、今年もみられなかった。年代整序問題は1問増加した(2014年度5→2015年度3→2016年度4→2017年度6→2018年度5→2019年度4→2020年度5)。

史料(図版 平安京左京の図の一部〔『拾芥抄』より〕、写真「『続日本紀』の写本」、津田左右吉『古事記及び日本書紀の新研究』1919年、図版 国府〔下野国府〕、城柵〔徳丹城〕、『日本書紀』斉明天皇5〔659〕年7月戊寅〔3日〕条、紀伊国阿テ(注:漢字は低の旁)河荘の史料〔『高野山文書』〕、『鳥取藩史』第6巻、「田」の字の上であぐらをかいている人物にこん棒が振り下ろされている図〔農地改革指令の漫画、まつやまふみお画、湯本豪一『風刺漫画で日本近代史がわかる本』〕、が設問の素材として用いられた。

設問別分析

第1問 教育史と歴史観に関わる教育

2016年では大学生の日記、2017年では大学生の手紙という形式で問題文が構成されていたが、2015年までの会話形式が2018年に復活し、今年も踏襲された。
古代から現代まで出題範囲が広いのは例年通りであるが、近世や近代からの出題ではじまる形式だったため、やや戸惑ったかもしれない。昨年は図版を用いた問題がみられなかったが、今年は問2で出題された。

問2 一見しただけでは複雑そうにみえるが、図1で勧学院を確認し、図2では難しい読みとりも必要でないため、大学別曹や中世の教育に関する理解があれば容易に判断できただろう。

問3 古代から近現代の教育に関する問題。誤文の1~3については、誤りの要素が人物・時期・場所というようにそれぞれ異なるため、注意が必要だった。

問4 中世から近世初期までの、比較的時期の近い選択肢で構成された年代整序問題。朝鮮侵略の際に日本軍が鉄砲を用いていたことを把握していれば、IとIIの前後関係は判断できる。IIIは「宋人」に注目してもよいだろう。論理的に考えて前後関係を判断すべきである。

問6 受験生にとって初見と思われる史料の読解問題。aとbは「潤色」の語や注の説明などをヒントにして判断したい。

第2問 古代国家の辺境支配

「辺境」をテーマとする問題。東北・北海道史や南九州・琉球(沖縄)史は地域史のなかでも定番である。問3は、共通テストの試行調査にみられたような、複数の資料(図1・図2)を判断する必要のある問題だった。

問1 問題文には「九州南部」が明示されているため、旧国名とおおよその位置を理解していれば、判断は容易である。

問3 国府や城柵に関する詳細な知識をもっていなくても、2つの図と注を慎重に見比べれば判断可能な問題となっている。外郭の有無については、図で確認するだけでなく、「城柵」とはどのような施設なのかを考察しながら選択すべきだろう。

問6 大意をとるのは難しくはないが、史料の一部を読んだだけでは正答を選択できない。注を慎重に検討して記されていることを読みとり、選択肢の情報と照合させていく必要がある。

第3問 中世の社会

入浴・浴室・湯治などをテーマとする、中世の社会からの出題。第2問で2問出題されたためか、第3問では空欄補充問題がみられなかった。

問1 2文正誤は判断すべき文章が2つしかないため、易しいと思われがちであるが、もっとも正しそうなもの(誤っていそうなもの)を選択する4択と異なり、それぞれの文の正誤を厳密に判断する必要があるため、注意が必要である。Yは精読しなければ正誤判断が困難だったと思われる。

問2 教科書にも掲載されている基本史料。センター試験日本史Bでは、初見でも対応できるように注が施されているが、あらかじめ大意を把握していた受験生が有利であることはいうまでもないだろう。

問4・5 悪党や指出検地といった歴史用語を正確に理解していなければ、正誤判断は難しい。

問6 一般的に経済分野での年代整序問題は時期を明確にすることが困難であるため、出題されにくい。しかし、本問は、「現れた」、「~し始めた」といった表現で時期を特定している。社会経済の動きについては、大まかな時期を意識しながら学習を進めるべきである。

第4問 中世末から近世における銀と鉄の生産や流通

第4問での初見史料の出題は、定番となりつつある。また、空欄補充が小問1つ出題されるといったパターンも昨年と同様だった。2014年度・2016年度は地図問題、2013年度・2017年度は視覚資料問題が出題されたが、2018年度・2019年度と同様に、今年も地図問題や視覚資料問題は出題されなかった。受験生が苦手とする社会経済分野からの出題が半数以上を占め、得点差が開く大問だったと思われる。

問2 昨年と同様に「近世初期の外交」に関する年代整序問題が出題された。年代整序問題は、時代や歴史の流れ、背景や因果関係などもふまえて学習することが必要である。

問3 昨年の第1問では「古代から近代までの貨幣」に関する問題が出題されていた。

問5 昨年と同様に「近世の村」に関する問題が出題された。「国訴」の内容をしっかりと理解しておかなければ、正誤判定に迷ったはずである。

問6 読解タイプの史料問題。定番といってよい、注をよく読めば判断できる問題ではあるが、今年の史料読解問題のなかでは最も多くの時間を要としたと思われる。

第5問 幕末から明治前期の民衆運動

日本史A(第2問)との共通問題。かつては、2013年度の「明治期の特許制度」・2014年度の「明治期の租税制度」のように、テーマ的に難易度の高いものが目立ったが、2015年度の「明治期の立法機関」、2016年度の「明治期の地方制度」、2017年度の「大坂(大阪)」、2018年度の「軍制改革と西洋医学」、2019年度の「近世・近代における公家と華族」に続き、比較的取り組みやすいテーマ(「幕末から明治前期の民衆運動」)が取り上げられた。
第5問では、かつてグラフ・表を用いた設問がみられたが、昨年に続き史料や視覚教材を用いた問題が1問も出題されなかった。また、2018年度・2019年度と同様の範囲である「幕末から明治前期」が出題された。

問2 開国の影響に対する江戸幕府の対策は頻出であるが、正答を選択するためには、天保期の政策や幕府が実施した政策内容の基本的理解が不可欠である。

問3 2018年度でも血税を含む選択肢文があったため、過去問研究をきちんとしていた受験生は有利だっただろう。

問4 同時期(1884~1885)の出来事に関する設問。二科会の選択肢文が2015年度本試にあった。太政官制度の廃止や内閣制度の発足については、2019年6月全国統一高校生テストでも出題されていた。

第6問 近現代の風刺漫画

日本史A(第4問)との共通問題。
第6問は、これまで、人物をとりあげた問題(「漫画家手塚治虫」〔2014〕、「作家林芙美子」〔2015〕、「石橋湛山」〔2018〕)と、テーマ史(「オリンピック」〔2016〕、「近現代の公園」〔2017〕、「日米関係」〔2019〕)の2パターンがあった。今年は、テーマ史(「近現代の風刺漫画」)として出題された。来年度から実施される共通テストの試行調査でも、風刺画は多く取り上げられていたため、特殊なテーマとはいえないだろう。

問2 人物に注目すると前後関係を判断するのは難しくなるため、台湾出兵、日露戦争、西南戦争に注目したい。

問3 日露戦争との因果関係を考えて選択したい。

問4 大戦景気の時期に重化学工業だけが発展したととらえていると、誤文を選択できない。さまざまな視点からこの時期の社会や経済をとらえているかを問う設問となっている。

問6 第二次護憲運動は大正末期であるため、「大正期」を正確に把握しておかなければ判断しにくかっただろう。

問8 農地改革の目的を把握していれば、正答を選択するのは容易である。

2019年度

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全体概観

時事要素の強いテーマが問題文・設問となり、形式面でシンプルな問題が目立った

難易度:昨年並み

大問数6題、小問数36問の問題数は昨年と同様で、2016年度に変更された大問ごとの配点は、今年も踏襲された。昨年は、地図と写真の組合せや視覚資料を4つ用いた問題など、近年では珍しい形式の設問もみられたが、今年は視覚資料が全く用いられなかった。一方で、昨年と同様に、史料の読解を求める設問が目立った。第3問でテーマとされた年号(元号)については、2019年5月から新元号となることを意識した出題だと考えられる。

時代

旧石器時代~弥生時代を正面から扱った問題は昨年同様みられなかったが、戦後史からの出題が昨年度より2問増加し、幅広い範囲(1990年代まで)が対象とされた。

分野

例年通り、政治・社会経済・外交・文化とバランス良く出題され、昨年減少した対外関係史も例年並みの分量となった。

出題形式

第1問は会話形式かその他の形式(2017年は「手紙」の形式)、第6問は人物史かテーマ史(2016年・2017年)だったが、今年は第1問が会話形式、第6問がテーマ史(日米関係)のパターンで出題された。近年では図版を用いた年代整序問題が出題されていたが、今年はみられなかった。年代整序問題は1問減少した(15年度3→16年度4→17年度6→18年度5→2019年度4)。

史料

史料(円仁『入唐求法巡礼行記』、那須国造碑文、「安房国川名村と金尾谷村での採草地をめぐる争論」、「占領軍進駐ニ伴フ報道取扱要領等」)、が設問の素材として用いられた。

設問別分析

第1問 地名とその土地の歴史

2016年では大学生の日記、2017年では大学生の手紙というかたちで問題文が構成されていたが、2015年までの会話形式が昨年復活し、今年も踏襲された。北海道史や沖縄史を正面からテーマとしているわけではないが、2013年第1問(北海道や沖縄を対象とする会話文)と類似した要素をもつ設問が目立った。 古代から現代まで出題範囲が広いのは例年通りであるが、昨年と異なり、4つの図・写真を判断させる問題や、写真と地図を組み合わせる問題といった、やや複雑な形式の設問がみられなかったため、問3の史料読解に時間を割くことができたはずである。第1問特有の、複数の時代にまたがる設問(問2)に対応するためには、時代観を養っておく必要がある点に注意したい。

問2 時代が異なる誤文と論理的におかしい誤文が混在しているため、熟読しなければ正誤判断しにくい選択肢群だった。例えば「江戸時代→寛永通宝」だけを確認して、短絡的に判断しないようにすべきである。

問3 長文の引用であり、読解にやや時間がかかっただろう。しかし、史料前半部がX、後半部がYに対応しており、注を読んでいけば、史料全体をほぼ現代語に置き換えることができるようになっている。そのため、遣唐使や円仁に関する知識を十分にもっていなかったとしても、時間さえかければ判断できる設問だった。

問4 北海道旧土人保護法に関連する設問は2002年第5問、自作農創設特別措置法に関連する設問は2016年第6問で出題されている。

問6 徳永直に関連する設問は2012年第6問で出題されている。

第2問 原始・古代の歴史研究と資料

2017年、「世界の記憶」に「上野三碑」が登録された。そのうちの一つはBのリード文にある山上碑である。問題文は、近年の歴史研究を反映したものとなっていた。
史料問題については、鹿子木荘の史料(2015年度)・「魏志」倭人伝(2014年度)・『宋書』倭国伝(2013年度)というように教科書に記載されている基本史料が出題されるパターン、または、多くの受験生にとって初見となる史料(2018年の大仏開眼供養〔『続日本紀』〕など)が引用されるパターンがみられるが、今年は後者の初見史料(問5「那須国造碑文」)のパターンだった。

問1 「最も関係の深い出来事」という問い方は、センター試験日本史Bにおいて、やや珍しい出題形式である。史料は引用されていないものの、弥生時代の倭のようすを記した『漢書』地理志、『後漢書』東夷伝、「魏志」倭人伝の史料内容を把握していれば対応できただろう。

問5 史料読解問題は、純粋な日本語の文章読解力だけで解ける訳ではない。本問では、Yについては、(注2)「飛鳥浄御原宮の朝廷」を確認して天武天皇や持統天皇の時代を想起し、「大宝律令」(完成・施行は文武天皇の時代、当時の宮都は藤原京)とは時期的に異なると判断する必要がある。

問6 設問文を最後まで確実に読まなければ誤文を選択できない。設問文の前半は正文であっても、後半の部分に誤りがあることを見抜けなければならない。負名体制に関する理解を問う問題だったといえる。

第3問 中世の政治と社会

平成最後の年となった2019年には、年号(元号)に関する問題が出題されるだろうと予想できた受験生もいただろう。昨年は図(『大山寺縁起絵巻』)を用いた問題が出題されたが、今年は史料引用も図もなく、シンプルな問題群だった。

問2 「法や慣習を無視した専制的な政治」など、部分的には正しいが、設問文全体をよく読むと誤文と判断できるような選択肢がみられた。

問4 一見しただけでは、「『応永という年号』の時期の出来事」は、難しいと感じたかもしれない。しかし、問題文に「この年号が正長に改められたのは、元将軍義持の没後」とあり、これをヒントにできれば正解を導くことができる。なお、「寧波の乱」は、第2回センター試験本番レベル模試でも出題していた。

問6 室町時代から戦国時代の地方社会に関する正誤組合せ問題。やや判断しにくいが、この形式の設問は、a・b(もしくはc・d)のいずれかが正文または誤文であるため、2つの文を比較して判断すればよい。

第4問 近世の社会・政治・文化

昨年は、空欄補充が小問2つ出題されるパターンであったが、今年は1問のみに減少した。第4問での初見史料の出題は、定番となりつつある。問4は盲点ともいえる文化史分野からの出題で、得点差が開く問題だったと思われる。

問1 「小物成」は、第1回センター試験本番レベル模試で出題していたため、受験していた人は有利だっただろう。

問2 村請制、助郷役、村入用、結といった用語を正確に理解しているかが問われている。

問3 受験生にとって初見と考えられる史料。Xは史料と注を丁寧に読み進めれば正文だと判断できるが、Yについては「入会」から入会地(共同利用地)を想起し、「共同利用」は正しいと判断すべきだった。読解タイプの設問は、基本的な歴史用語の理解を確認する性格をもつものでもあると、認識しておきたい。

問3 空欄アの川柳と狂歌の判別で迷ったかもしれない。以前の問題になるが、「大田南畝」「狂歌」は1992年度本試験で出題されている。

第5問 近世・近代における公家と華族

日本史A(第2問)との共通問題。かつては、2013年度の「明治期の特許制度」・2014年度の「明治期の租税制度」のように、テーマ的に難易度の高いものが目立ったが、2015年度の「明治期の立法機関」、2016年度の「明治期の地方制度」、2017年度の「大坂(大阪)」、2018年度の「軍制改革と西洋医学」に続き、比較的取り組みやすいテーマ(「近世・近代における公家と華族」)が取り上げられた。
第5問では、かつてグラフ・表を用いた設問がみられたが、昨年に続き史料や視覚教材を用いた問題が1問も出題されなかった。また、昨年と同様の範囲である「幕末から明治維新」が出題され、井伊直弼・孝明天皇・廃藩置県など同一用語も多く、過去問演習を徹底していれば容易に解答できたと思われる。

問1 幕末・維新期の歴史用語や、やや区別のつきにくい歴史用語の判断が求められている。理解を優先して学習を続けていた受験生にとっては易しいが、単純に用語を暗記する作業を繰り返していた受験生は苦戦したかもしれない。

問3 「明治初期の東京」は、2020年に東京オリンピックを控えていることを考えると、時事的要素も意識した設問といえるかもしれない。

第6問 近現代の日米関係

日本史A(第4問)との共通問題。
第6問は、これまで、人物をとりあげた問題(「漫画家手塚治虫」〔2014〕、「作家林芙美子」〔2015〕、「石橋湛山」〔2018〕)と、テーマ史(「オリンピック」〔2016〕、「近現代の公園」〔2017〕)の2パターンがあった。今年は、テーマ史(「日米関係」)として出題された。日米関係は頻出テーマの一つであるため、多くの受験生が安心して取り組むことができたと思われる。

問2 大久保利通(2017年第5問)、吉田茂(2018)に引き続き、人物(幣原喜重郎)に関する設問が出題された。著名な政治家については、情報を整理しておきたい。

問3 広いスパン(明治期から昭和終戦直後まで)を対象とする設問。2015年度第1問では、海外移住者をテーマとする設問が出題されていた。過去問にしっかり取り組んでいた受験生は有利だっただろう。

問4 「抑制する」、「増加させる」、という歴史用語ではない語句の選択が求められている。用語を暗記しているかではなく、理解しているかを問う設問だった。

問6 昨年引用された史料(石橋湛山「池田外交路線へ望む」)は最後の設問として出題され、長文だったので、読解に時間が不足して焦った受験生もいただろう。今年の史料は引用部分が少なかったので昨年よりも取り組みやすかった。プレス=コードについて理解していれば読解の一助となったと思われるが、読解問題としては注も少なく、正誤判断のしやすい設問だった。

2018年度

問題・解答はPDFファイルです。ご利用の端末や通信環境によっては表示に時間が掛かる場合がございます。

全体概観

史料問題が増加し、読解力、判断力を測る問題が目立った

難易度:やや易

大問数6題、小問数36問の問題数は昨年度と同様で、昨年度変更された大問ごとの配点は、今年度も踏襲された。視覚教材を用いた問題の数はほぼ例年通りであるが、グラフ・表などの統計資料を読み取る問題や、図版を用いた年代配列問題は出題されなかった。その一方で、地図と写真を組み合わせた問題や視覚資料を4つ用いた問題など、近年にはみられなかった形式の設問もみられた。

時代

旧石器時代〜弥生時代を正面から扱った問題はみられなかった。昨年度姿を消した戦後史単独の問題が2題出題され、1970年代までを対象とする設問がみられた。

分野

政治・社会・経済・外交・文化の全分野から出題されており、2017年度減少した文化史からの割合が若干増加した。

出題形式

2015年度までは第1問で会話形式、第5問もしくは第6問で人物をとりあげた問題が定着していた。昨年度は、第1問が会話文ではなく手紙、第6問がテーマ史からの出題というように傾向はやや変化していたが、2015年度までのパターンが復活した。昨年度減少した年代整序問題は1問減少し(14年度5→15年度3→16年度4→17年度6→18年度5)、史料を読みとる力を重んじる問題が多くみられた。

史料・グラフ・写真・地図

史料(稲荷山古墳出土鉄剣銘、『続日本紀』〔大仏開眼供養会〕、『上田氏旧記』〔村の盗人に関する史料〕、石橋湛山「池田外交路線へ望む」1960年)、図版(東大寺領糞置荘開田図、伯耆国東郷荘の下地中分図、検地仕法、地券、樺太の日露国境碑、関東都督府、『大山寺縁起絵巻』)、地図(樺太・旅順)、が設問の素材として用いられた。

設問別分析

第1問 :地域とその歴史的文化財

「地域と歴史」を主題としたテーマ史が2年続けて出題された。会話文形式が定着していたが、2016年度では大学生の日記、2017年度では大学生の手紙というかたちで問題文が構成される形式となった。しかし、今年度は会話文が復活した。
原始・古代から現代までと出題範囲が広いのは例年通りであるが、(1)史料の読解を求める問題が出題されたこと(→問1)、(2)4つの図・写真を判断させる問題が出題されたこと(→問2)、(3)写真と地図を組み合わせた問題が出題されたこと(→問6)、が特徴として挙げられる。第1問特有の複数の時代にまたがる設問(問3・問5)が出題された。こうした設問は、時代観を養っておかなければ対応しづらいので注意が必要である。

問2 Ⅳの地券の説明文は、判断しにくかったかもしれないが、最終センター試験本番レベル模試で図版を引用していたため、受験した人はすぐに誤文だと判断できただろう。
問6 Xの写真(北緯50度線の境界標石)は、資料集などに掲載されている。初見であっても説明文から判断できるが、確認した経験があれば自信をもって解答できる。理解を深めるためにも副教材を活用しよう。

第2問 原始・古代の国家・社会と音楽との関係

本問の問題文でテーマの1つとされている「音楽」は、全国統一高校生テスト第1問でテーマとして取り上げていた。
第2問では、2015年度までは鹿子木荘の史料(2015年度)・「魏志」倭人伝(2014年度)・『宋書』倭国伝(2013年度)というように基本史料の引用が定番となっていた。昨年度、史料問題はみられなかったが、今年度は多くの受験生にとって初見となる大仏開眼供養会の史料(『続日本紀』)が問5で引用された。

問5 Xは「文武の百官を率ゐて」から判断できる。Yは史料本文が読み取りづらかったとしても、注の「日本古来の歌舞」や「外来の歌舞」から判断できる。初見史料では注が重大なヒントとなることを知っておきたい。

第3問 中世から近世初期までの地震とその影響

2016年度までは3年連続して近世初期までを対象とする問題が続き、昨年度は出題範囲が中世のみと変化したが、今年度は再び近世初期までを対象とするパターンに戻った。

問4 多くの受験生は、図(『大山寺縁起絵巻』)が初見だったと思われるが、この図を用いて田楽を問う設問は、全国統一高校生テストで出題していたため、同模試を受験していれば迷うことはなかっただろう。
問6 「桃山文化といえば千利休、千利休といえば侘茶」、といった単純暗記では誤文を選択できない設問となっている。侘茶とは何か、たとえば闘茶などとどこが違うのかというように、理解を優先した学習が求められている。

第4問 近世の外交・思想・宗教

第4問での初見史料の出題は、定番となりつつある。また、空欄補充が小問2つ出題されるといったパターンも昨年度と同様だった。問2は得点差が開く問題だったと思われる。

問2 ⅡとⅢの前後関係を判断できるかがポイント。Ⅲの「西洋砲術」の演習はなぜ必要なのか、対外的な危機と結びつけて考えれば、幕末に近い時期だと判断できたはずである。なお、「亜欧堂田善」は、2001年度の第4問でも出題されている。年代整序問題は、時代や歴史の流れ、背景や因果関係なども踏まえて学習することが必要である。
問4 「諸社禰宜神主法度」は、前後の問題文を熟読することで判断可能である。もちろん消去法でも絞れるが、出題者は問題文をよく読んで判断することを求めているといってよいだろう。
問5 読解タイプの史料問題。注をよく読めば判断できる問題となっている。

第5問 幕末から明治維新にかけての軍制改革と西洋医学

日本史A(第2問)との共通問題。かつては、2013年度の「明治期の特許制度」・2014年度の「明治期の租税制度」のように、テーマ的に難易度の高いものが目立ったが、2015年度の「明治期の立法機関」、2016年度の「明治期の地方制度」、2017年度の「幕末から明治期の大坂(大阪)」に続き、比較的取り組みやすいテーマ(「軍制改革と西洋医学」)が取り上げられた。

第5問では、かつてグラフ・表を用いた設問がみられたが、昨年に続き史料や図版を用いた問題が1問も出題されなかった。また、問題文も簡潔で読みやすいため、設問数が少ない第5問は、取り組みやすくなっている。

問3 センター試験の年代整序問題は、詳細な年代を問うものはほとんどみられず、本問も論理的に考えれば正答を導ける設問となっている。江戸後期に西洋医学が日本に紹介され、やがて外国人から医学の知識・技術を吸収するようになり、日本の医学者による世界的業績がみられるようになった、と段階的に理解できれば解けただろう。

第6問 石橋湛山

日本史A(第4問)との共通問題。2014年度では「漫画家手塚治虫」、2015年度では「作家林芙美子」というように、人物を取りあげた問題が定番となっていたが、2016年度では「オリンピック」、2017年度では「近現代の公園」がテーマとされた。今年度は人物を対象とするパターンが復活したが、首相にもなり、日本史Bの教科書に掲載されている石橋湛山が取り上げられた。昨年度は表の数値を判断する設問が出題されたが、今年度は比較的読みやすい史料を用いた設問がみられたのみであったため、比較的時間に余裕をもった受験生が多かったと思われる。

問2 新婦人協会の語句を問う本問は、形式面でも第3回センター試験本番レベル模試で出題した設問と一致していたため、受験した人は有利だったと思われる。
問5 戦中・戦後の文化は盲点となりがちである。しかし、戦後の法隆寺焼損と文化財保護法の制定とを関連づけるなど、考えて記憶する学習を進めていた受験生であれば、誤文を判断するのは難しくなかっただろう。また、文化財保護法は2012年度第1問、2010年度第6問の設問文、さらに2007年度第1問の問題文でも取り上げられており、過去問演習を徹底していたならば易しい問題だと感じたはずである。
問6 軍部大臣現役武官制を取り上げた問題。こうした問題に対応するためには、「同時期に何があったか」というようなヨコの視点だけではなく、「軍部大臣現役武官制がどのように展開したのか」といったテーマ史的なタテの視点で歴史をとらえておく必要があった。
問7 昨年度は第5問で大久保利通を対象として設問が出題されたが、本問では吉田茂に関する説明文の正誤判断が求められている。著名な政治家については、情報を整理しておきたい。

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