親も読みたい!勉強法・生き方の悩みに応えてくれる本(3ページ目)

たくさんの友達vs.親友一人だけ、どちらがいい?

『みんなに好かれなくていい』

みなさんは、「友達は多いほうが幸せ」と思っておられますか? SNSなどによってティーンエイジャーの間では、「友達が多い」のがよいことで、「友達が少ない・いない」ことが悪いことという風潮があるようです。それをテーマに取り上げたのが、受験勉強指導でも定評のある精神科医、和田秀樹さんによる『みんなに好かれなくていい』です。

友達が多いほうがいいと思うと、友達でいつづけるために、自分の気持ちを押し殺して相手に合わせることが増えてしまいます。嫌われたくないという思いが優先して、互いの本音を語りあうことが減ってしまいます。

このこと、果たして子どもだけにあてはまる状況でしょうか。もしかしたら親世代も同じ幻想に支配されてはいないでしょうか。ご自身はすでに幻想から抜け出していたとしても、わが子には、「友だち、たくさんできた?」なんて聞いていないでしょうか。

本書の帯には、「10人いればそのうちの数人は、あなたのことが嫌い・もしくは興味がないのが当たり前。そもそも無理な『みんな仲よし』幻想から、幸せに抜け出す方法」と書いてあります。目次を見ると、「親友一人いれば十分」、「『嫌われない』より、『好き』『好かれる』を考える」といったヒントになる言葉がのっています。

『みんな仲よし』幻想は、ある時期から日本の教育の場に蔓延していった幻想です。その幻想から抜け出すことは、人によってはとても困難なことかもしれません。でも、心からわかりあえる数少ない友を得ることは、10代の精神的な成長に必要不可欠といっていいと思います。子どもたちには、数に支配されず、深くわかりあえる親友を得ることを優先する心のありようを、本書を読むことで見つけてくれれば、と心から願いました。

現代人は相手の身になることが不得手

『相手の身になる練習』

『相手の身になる練習』は、医師にしてさまざまなボランティア活動を続けている鎌田實さんの手によるものです。自らの体験をベースに、「相手の身になる方法」を教えてくれます。

帯には「『人に迷惑をかけない』のは基本でも、結局みんな一人では生きられない。『相手の身になる力』をつけ、助け助けられる豊かな人生を送るための14のレッスン」とありました。この14のレッスンは、最終章にわかりやすく綴られているので、この最終章を読むだけでも、相手の身になる練習法はわかります。でも、本書の最大の魅力は、その前までの章なのです!

感激して涙が出そうになるエピソードがたくさん紹介されています。鎌田さんご自身の経験や災害支援活動で活躍している人、そこでの素晴らしい人間関係など、ニュース報道では知り得ない人々の良心のつながりとその成果がリアルに描かれています。“ボランティアってやってみたいけど、どうすればいいのか?”と思っている人がいたら、最初の一歩を踏み出すのに最高の指南書です。もちろんボランティアに限らず、日常生活の中で「相手の身になる」とはどういうことかを教えてくれます。

「人に迷惑をかけない」という古来の道徳観に現代的なプライバシー尊重が加わって、今の社会は、他人同士が助け合うことがとても難しい時代です。でも、誰かを助けることが、実は自分を助け、自分の成長につながるという実感が得られれば、そこから抜け出すことも可能だと思いました。本書には、その方法がしっかりと書かれています。ぜひ、親子で読んでいただきたい良書です。