反抗期は親目線でしかない!?正しく理解すれば怖くない【反抗期を科学する・1】

この連載は「反抗期を科学する」と題して、多くの親御さんが頭を悩ませる、お子さまの反抗期の実態に迫ります。教えてくださるのは、公益社団法人子どもの発達科学研究所の和久田学先生です。難しく感じるテーマを、楽しくわかりやすく解説してくださいます。

反抗期って何?

和久田 学(わくた まなぶ)先生
和久田 学(わくた まなぶ)先生
小児発達学博士、子どもの発達科学研究所主席研究員、大阪大学大学院特任講師、日本児童青年精神医学会会員及び教育に関する委員会委員、日本LD学会会員

『反抗期』がテーマなのですが、この『反抗期』という言葉、普通、私たち研究者や子どもの発達の専門家と言われる人たちは使いません。通常、私たちは、『思春期』と呼ぶのですが、ここに非常に大きな考え方の違いがあるのですが、おわかりでしょうか。

実は『反抗期』というのは、親目線なのです。親にとって『反抗』と思われる行動も、子どもにはそんなつもりはない、ということが多くあります。もちろん「反抗期」という言葉がピッタリとくるような場合もありますが、結果として「反抗」に見えるけれど、実はそうではないことの方がずっと多いんじゃないかと思います。

では『反抗期(親目線での)』とは何かと言いますと、『思春期』や『青年期』特有の『情緒や行動が不安定になっている状態』を意味します。

私たちの『反抗期』=『思春期』を思い出してみましょう。

反抗期=思春期

反抗期って何?

あの頃(おそらく中学校に入った頃から、高校卒業まで。場合によっては20代の最初まで。個人差あり)、私たちも、何だか分からないけれど、イライラしたり、怒りっぽくなったりしました。自分でも思ってもみないような行動(衝動的行動、攻撃的行動)をしたり、逆に簡単に落ち込んで死にたくなったりしました。

こうしたことは『思春期』の行動の特徴です。そして、これらを親目線で考えると『反抗期』に見えてしまいます。そして、『反抗期』と親目線でのみ捉えていくと、「反抗しなければ何でもいい」「いい子に見えれば、それでいい」のように、子どもの発達を支えることとは無関係の、大人の都合優先の支援や働きかけになってしまって、もしかしたらあまり良いことが起こらないかもしれないというわけなのです。

さて、ここで確認しましょう。

私たちの願いは、子どもの健全な発達や将来の幸せですよね? もちろん、子どもの健全な発達や将来の幸せにくっつく形で親も幸せになりますが、あくまでも主体は子どもです。親の幸せのために子どもを犠牲にした、なんてことはあってはならないと思いますが、そこは同意していただけますでしょうか。

とするならば、余計に『反抗期』を『思春期』として捉え直し、『思春期』がどのような時期であり、どのように対応すべきなのか、を考えるべきなのですが、そこにいよいよ『科学』を登場させなければなりません!