簡単におさらい!思春期の発達段階
反抗期について、これまでの連載の中で、脳の発達、統計的研究、行動科学など、様々な面から考察してきました。この中に共通するキーワードは科学です。誰かの経験、特定の人の話によるものではなく、子どもの発達に関する様々な研究で分かっていることを、具体例をまじえて説明をさせていただきました。
そして、前回、私たち、ヒトの脳がリスクに敏感であること、その結果、子どもの行動の中で、良くない行動(反抗的行動)に注目しがちであることをお話ししました。(参照:反抗期を科学する・11)
考えてみれば、この『反抗期』という言葉もリスクに注目してのことです。連載の冒頭で指摘したとおり、『反抗期』と呼ぶことは親目線であり、本来、子どもの発達から考えるならば、『思春期』と呼ぶべきところなのです。(参照:反抗期を科学する・1)
では、『思春期』という発達段階について、これまでの連載を含め、整理してみましょう。
脳が成熟するのは20代半ば!
まず『思春期』は、脳のバランスが崩れる時期であると説明しましたね。
情動の脳である大脳辺縁系=ホットブレインが、冷静沈着な大脳皮質=クールブレインに比べて活動的になり、その影響から、思春期の子どもたちは、怖くなったり不安になったり、イライラしたり興奮しやすくなったりするというわけです。(参照:反抗期を科学する・3)
クールブレインは、遅れて発達し、だいたい20代半ばに、ホットブレインをコントロールできるようになります。つまり思春期の終わりが来て、脳も成熟した大人になっていくんです。だから、思春期は誰にでもやってくるし(私たちもそうだったんですよ)、そして去って行きます。
なぜ「反抗期」はあるのか?
そこで、考えたいんですけど、なぜ『思春期=反抗期』ってあるんでしょうか?
もしも『思春期』=『リスクのある時期』=『ない方がいい』ということでしたら、ヒトの長い進化の過程で、なくなっていった可能性だってあるんです(思春期がないヒトの方が生き残り、思春期があるヒトは淘汰される、のように)。それが未だに、私たち全員が思春期を迎え、多くの親がそれを『反抗期』と感じるほど、苦労してしまっているわけです。とするならば、きっと『思春期=反抗期』にも、何かいいところがあるはずだと思いませんか?
反抗期こそ楽しんじゃえ!
そんなわけで、『反抗期』についての連載の最後に、『反抗期』的な行動への具体的な対応と共に、『反抗期』の中に隠れている『反抗期』ならではの面白いところ、良いところを考えてみようと思うのです。
面白いところ1.反抗期の子どもは自己主張をする!
反抗期は自分探しの時期でもあります。そのため自己肯定感が危機に陥るのですが、だからこそ、彼らは自己主張をします。自分が親の付属物でないことを明らかにするために、反抗のために反抗、つまり親と違う意見であることを、ことさら強調して見せることがあります。(参照:反抗期を科学する・5)
親が嫌がること、前例踏襲ではなく新しいこと、今までの常識からはずれること、ルールの逸脱などを行うのですが、彼らのこうした行動に親が過敏に反応すればするほど、同じような行動をするようになります。
なぜなら、彼らの行動の目的が行動そのものではなく、親の反応(親が困ること)にあるからです(かといって、親が十分に反応しないと、さらに行動が激しくなる可能性があるので要注意)。親の付属物ではない、自分の存在意義を確認しようとしているのです。
よって、親の対応としては「これは私自身の反応がターゲットになっているな」と気づき、精一杯、困ってみせるのがいいでしょう。
親が楽しむポイント!
こうした行動、親にとっては厄介なこときわまりないのですが、よく考えてみると、我が子の成長を感じる、良いことではないでしょうか。
彼らが、自分の人生に目覚め、自分で人生を創ろうとしている!
それが『反抗』という行動だったとしても、喜ぶべきことで、そして、『喜ぶべきことだ』と考えられたなら、もうこっちのものです。
さてさて、我が子は何に引っかかる? どんな常識外れの自己主張をする? そんな風に面白がってみましょうよ。
彼らがいくら突拍子もないことを言ったとしても、それは親を試すための打ち上げ花火みたいなもの。彼らの言動に振り回されることなく、真顔で彼らに問いかけてみましょう。
「なるほど、君は自分の人生を生きようとしているんだね。それは親として喜ばしいことだよ」「でも、君の将来を考えたとき、それは本当に正しい選択だろうか・・・」
それから、彼らを「独立した人格」として尊重した上で、彼らの将来について語り合います。我が子と、我が子の未来について語り合うなんて、親にしかできない、とてつもなく価値の高いことだと思うのです。