反抗期がないのは良いこと?それとも…【反抗期を科学する・6】(3ページ目)

反抗期がなくなった背景

ところで、最近、子どもの反抗期がなくなってきた、という調査結果があるのを、皆さんはご存知でしょうか。

明治安田総合研究所の「親子の関係についての意識と実態に関する調査(2016年)」によると、子どもに聞いたところ、男子の42.6%、女子の35.6%が「反抗期と思える時期はなかった」と回答しているとのことですが、皆さんはどのように思いますか。

反抗期がなくなった背景

反抗期がないのは良いこと?

親子関係が良好であるなら、それにこしたことはないと思います。
子どもたちは、したたかにこの情報社会を生きていて、今まで私が書いてきたような比較の問題、自己肯定感の問題も、上手に乗り越えてきているのなら、それ以上いいことはありません。しかし、思春期の課題である「私は誰?」「私はここにいていいの?」という問いに回答することがあまりにも困難なために、直面しないように誤魔化していたとしたらどうでしょうか。表面上は穏やかでも、問題は単に先送りされているだけになってしまいます。

なぜなら、誰にとっても「自分を生きる」ことは大問題だからです。誤魔化し続けるわけにはいきません。

ゲームやネットに逃げ込む若者

例えば「自分を生きる」ことに直面することが難しく、バーチャルな世界に逃げていたり、生きることそのものをあきらめていたりしたとしたらどうでしょうか。実際、ゲーム依存、インターネット依存の若者が増えています。若者の自殺だって、増えています。とても気になるところです。

ゲームや異世界に逃げ込む若者

最近のマンガ、アニメ、小説には「異世界もの」というジャンルがあるそうです。主人公が何らかのハプニングの結果、この世界ではない異世界(多くの場合、ファンタジーゲームのような世界)に転生し、そこで主人公として颯爽と生きていく、という内容のようですが、こうしたことが流行ること自体に、そうしたファンタジーにすがらなければならない若者の生きづらさが見え隠れするように思います。

もっとも、こうしたファンタジーの世界に逃げ込んだり、問題を適当に先送りにしたりしながらも、本人のペースで、自分の人生に向き合おうと奮闘している若者がほとんどなのかもしれませんが。

反抗期は真剣に自分と向き合っている証

反抗期は真剣に自分と向き合っている証

問題は、少数ですが、バーチャルの世界に逃げ込んだまま、現実の自分の人生に戻れなくなっている人たちがいることでしょう。
言うなれば、思春期に自分自身の価値を問いかけ、それを見つけていくことは、エリクソンの心理社会的発達段階論を持ち出すまでもなく、思春期の大切な発達課題です。それをやり遂げてこそ、大人として成熟します。反抗的態度は、思春期課題に向き合う中で、彼らが必死で親にその苦しさを伝え、助けを求めている状態と思われます。

反抗期があることは、もしかしたら子どもが真剣に自分と向き合っている証かもしれません。