反抗期がないのは良いこと?それとも…【反抗期を科学する・6】(4ページ目)

反抗期の子どもに親ができること

最後にもう1つ。
比較の中で、消えそうになっている子どもたち――そんな中、必死に反抗的態度を取り、親に向かってきている子どもたち――に対して、親ができることは、「比較しない」ことです。

反抗期の子どもに親ができること

それは、子どもが自分の母親を、絶対的存在として求めていることと同じです。誰にとっても、母親はただ一人、他の誰かに変わってもらう余地はありません。隣の家のお母さんがいくら優しくても、友達のお母さんがいくら面白くても、自分のお母さんになってもらうのはちょっと困る、そんな風に子どもが思っていることが常です。そして、それこそが比較なしの絶対的価値であり、そこに親であることの喜びがあると思うのです。

同じように、子どものことも、そんな風に価値付けしなければなりません。「うちの子(息子・娘)の◎◎は、唯一無二のかけがえのない存在である」という感覚です。

学力、運動能力、愛想の良さなど、他の子どもに比べて劣っているところはあるけれど、それでも我が子は特別なのだ――。そこを明確にすると、我が子を誰かと比較する必要なんて、全くないことに気づくんじゃないかと思います。

比較しないと甘やかすことになるんじゃないかと心配する人もいるかもしれませんが、そんなこと、考える必要はありません。これまで考察してきたとおり、今の子どもたちは、幼い頃から比較と競争の中で育ち、十分に傷ついています。そんな彼らを親がわざわざさらに追い詰める必要はありません。

比較ではない世界の中で、かけがえのない我が子の価値を認め、支える。たとえ反抗的態度だったとしても、それこそが、反抗期の子どもにとって、必要なことなのです。

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■出典元
株式会社 明治安田総合研究所

和久田 学(わくた まなぶ)先生

和久田 学(わくた まなぶ)先生

小児発達学博士、子どもの発達科学研究所主席研究員、大阪大学大学院特任講師、日本児童青年精神医学会会員及び教育に関する委員会委員、日本LD学会会員。教員経験ののち、連合大学院で博士号を取得した稀有な経歴を持つ研究者。日本の教育、子育ての世界に科学的根拠に基づく先進的な研究やプログラムを導入。「愛と科学は両立する」を信条に、子どもたちが本来持っている能力を存分に発揮できるよう、研究・開発・社会実装に力を注いでいる。
著書に『科学的に考える子育て~エビデンスに基づく10の真実~』(緑書房)、『学校を変える いじめの科学』(日本評論社)。その他論文多数。

子どもの発達科学研究所

子どもの発達科学研究所は、子育て、いじめ予防、就労支援等に関し、科学的根拠に基づくプログラムの研究開発と提供を行う日本では数少ない社会実装団体。なかでも脳科学、行動科学、疫学統計学による『3Ds(スリーディーズ)アプローチ』は、実効性の高いオリジナルプログラムとして注目を集めている。
また、子どもの「こころ」の発達や、子どもの「学び」に関する正しい支援・対応について学習する講座をシリーズで提供。教育関係者や保護者の方々から高い評価を得ている。幼児期から思春期における成長を科学で支え、健やかな未来へと導くため、当研究所は研究、開発、コンサルティングなど、幅広い活動を行っている。