「当たり前の行動」に注目すると反抗期のリスクが減る理由【反抗期を科学する・11】(2ページ目)

次のうち問題があるのはどの行動?

次のうち問題があるのはどの行動?

例を挙げましょう。
これは、ある高校生女子が自宅に帰ってきたあとの行動です。

  1. 夕方、いつもの時間に「ただいま」と帰ってくる。
  2. 手洗い、うがいをする。
  3. 洗濯物や弁当箱を所定の場所に出す。
  4. 親が「今日、学校、どうだった?」と聞くと、それに「別に」と不機嫌そうに答える。
  5. 着替えをする。
  6. 宿題をする。
  7. 親が夕食の支度を手伝って欲しいと頼むと、それを無視して自室にこもってしまう。
  8. 家族で楽しく夕食。食事中は、テレビや学校の話題で盛り上がる。
  9. 夕食後は自室に戻って静かに過ごす。
  10. いつも決まった時刻(11時半頃)に就寝する。

この高校生女子の行動で、親が気になるのはどれでしょうか。
おそらく(4)と(7)の行動に「うちの子、反抗期かもしれない」「うちの子、昔は素直だったのに…」と心配する、というのがありそうな話なのですが、そこで考えてみて欲しいのです。

無視されている!多くの良い行動

無視されている8つの良い行動

(1)から(10)までの行動のうち、問題となっているのはたった2つであり、あとの8つは問題ありません。いえ、問題ないどころか、良い行動だと言えます。高校生とはいえ、ちゃんと挨拶(1)するのは大切なことです。手洗い、うがい(2)、片付け(3)、着替え(5)、就寝(10)といった習慣も大切ですし、自分から宿題を行うこと(6)は特に素晴らしいことと言えるでしょう。さらに、夕食の時は、ちゃんと家族との会話(8)だってあります。

こうして考えると、全体として、この高校生女子は、とても良い子で、(4)と(7)の問題なんて、注目する必要がないと思うのですが、いかがでしょうか。

リスクへの注目は逆効果!

そして、行動科学によると、親が子どもの『リスクのある行動=良くない行動』に注目するのは、逆効果であることが分かっています。
この例ですと、良い行動(1・2・3・5・6・7・9・10)は、親にとってリスクのない「当たり前」のことばかりなので、見えなくなってしまいます。一方で、リスクがある行動だけが親の脳の中でクローズアップされることになり、親は当然、それを子どもに注意することになるでしょう。

リスクへの注目は逆効果!

そうすると子どもは反発します。何しろ、良い行動もちゃんとしているのに、そっちは評価せず、良くないところばかりを注意される、つまり「不当な評価」をされていると感じるわけですから。
子どもにしてみると、私はしっかり頑張っているのに、親は文句を言ってくる、がっかりだ、ということですね。

さらに深刻なのは、「リスクのある行動(良くない行動)への注目」は、そうした「良くない行動」を増やす可能性があることです。