「当たり前の行動」に注目すると反抗期のリスクが減る理由【反抗期を科学する・11】(3ページ目)

親の注目を得たい!例えそれが問題行動だとしても…

次の図を見てください。

良くない行動(リスクのある行動:4)

良い行動(リスクのない、当たり前の行動:6)

子どもが「良くない行動」をとると、図らずも親の注目を集め、親とのコミュニケーションが成立してしまいます。一方、良い行動をとると、親の注目を得られません。(つまり無視されていると同じです)

親の注目を得るためなら手段は…

そうなると、子どもは無意識のうちに、親の注目を得る、親とのコミュニケーションを取ることを目的として「良くない行動」をするようになり、逆に親に無視されるような行動(良い行動)を減らしてしまいます。
親が逆のことを望んでいるのにもかかわらず、です。
では、どうすればいいのでしょうか。

簡単なことです。子どもの良い行動に注目するのです。
反抗期であっても、子どもたちは、24時間・365日、ずっと反抗しているわけではありません。たとえ反抗的態度をとることがあっても、学校に行って、勉強や部活で頑張ったり、友人関係を深めたりしているはずです。親と楽しい会話をすることもあるでしょう。それ以外にも、きょうだいの仲が良い、規則正しい生活をする、お手伝いをする、挨拶をするなど、何か良い行動をしているはずです。

「当たり前」の良い行動にこそ注目!

「当たり前」の良い行動にこそ注目!

親は、『反抗期』と考えたくなる行動を、意図的にスルー(もしくは淡々と対応)して、その周辺にある、良い行動を一つでも多く見つけます。

そして、注目していることを彼らに知らせます。
「学校に毎日、行くのも大変なことだと思うよ」「部活、頑張っているね」「友達を大切にすることって、いいことだよ」「挨拶って、当たり前のことだけど、してくれるのは嬉しいよ」
言葉にするのもいいでしょうし、それが難しかったら、にっこりと笑って見せる、目を合わせる、だけでもいいと思います。

実際、思春期という不安定で大変な時期に、そうした良い行動を続けていくことは価値があることなので、そこを評価します。
そうすると、良い行動が増えてくるはずです。
そして、同時にそれ以上、『反抗的行動』が増えないどころか、良い行動が増えるにしたがって、徐々に減っていく可能性が高いことが分かっています。この方法、時間は少し掛かりますが、効果があることが既にたくさんの研究で証明されています。

反抗期でも「当たり前に頑張っている」!

反抗期でも「当たり前に頑張っている」!

私たち、ヒトの脳の特性として、リスクに敏感なので、ついつい子どもの良くない面に注目しがちなのですが、あえて彼らが「当たり前に頑張っていること」に注目していくことが、反抗期に限らず(子どもに限らず)、いつも大切です。

このやり方、Positive Behavior Support(前向き行動支援)と言って、効果は絶大、エビデンスありの方法ですので、ぜひやってみてください。

次回の更新は10月25日(月)予定です。

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和久田 学(わくた まなぶ)先生

和久田 学(わくた まなぶ)先生

小児発達学博士、子どもの発達科学研究所主席研究員、大阪大学大学院特任講師、日本児童青年精神医学会会員及び教育に関する委員会委員、日本LD学会会員。教員経験ののち、連合大学院で博士号を取得した稀有な経歴を持つ研究者。日本の教育、子育ての世界に科学的根拠に基づく先進的な研究やプログラムを導入。「愛と科学は両立する」を信条に、子どもたちが本来持っている能力を存分に発揮できるよう、研究・開発・社会実装に力を注いでいる。
著書に『科学的に考える子育て~エビデンスに基づく10の真実~』(緑書房)、『学校を変える いじめの科学』(日本評論社)。その他論文多数。

子どもの発達科学研究所

子どもの発達科学研究所は、子育て、いじめ予防、就労支援等に関し、科学的根拠に基づくプログラムの研究開発と提供を行う日本では数少ない社会実装団体。なかでも脳科学、行動科学、疫学統計学による『3Ds(スリーディーズ)アプローチ』は、実効性の高いオリジナルプログラムとして注目を集めている。
また、子どもの「こころ」の発達や、子どもの「学び」に関する正しい支援・対応について学習する講座をシリーズで提供。教育関係者や保護者の方々から高い評価を得ている。幼児期から思春期における成長を科学で支え、健やかな未来へと導くため、当研究所は研究、開発、コンサルティングなど、幅広い活動を行っている。