反抗期の影に自己肯定感の危機!親にできること【反抗期を科学する・5】(3ページ目)

成長による自己肯定感の変化

ちなみにメタ認知の本質は、比較です。
例を挙げましょう。
あるところに、サッカーが得意な子どもが住んでいました。

成長による自己肯定感の変化

友達と遊んでいるとき、サッカーが得意だと感じていて、自信満々だったとします。
ほめられることが多いので、サッカーが大好きになります。テレビの中で、プロサッカー選手が活躍しているのを見て、カッコいいとあこがれ、自分もそうなりたいと夢を持つようになりました。このとき、彼の自己肯定感はまずまずの状態を保っています。

ところがメタ認知が発達してくると、自分という存在と、テレビの中のプロサッカー選手をまともに比較できるようになります。サッカーが得意だと言っても、それは自分の周りの小さな世界でのことだと理解し、プロサッカー選手が、自分とは全く違うレベルにある事実に気づきます。

「そんなの、当たり前じゃないか」と思うのは、私たち大人が、そうした事実に悲しいほど慣れているからです。なにしろ子どもは、自分だけの人生の始まりを生きています。
自分ほど尊くて価値のある存在はいないと心の底から信じてきたのに、思春期のある日、そうではないと気づきます。そしてこの事実は、その子の自己肯定感を砕きます。

落ち込んでいる子ども

サッカーが得意だと言っても、世の中にはサッカーが得意だという子どもが数えきれないほどいるという事実。世界中で苛酷な競争が行われていて、自分なんて箸にも棒にもかからない存在であること。そうした現実に打ちのめされるわけです。
野球が得意だと思っていた子どもも、絵を描くことが得意だと思っていた子どもも、ゲームも、歌も、どの世界も熾烈な競争ばかり。特に今を生きる子どもたちは、インターネットを通じて、世界と直接アクセスすることができますから、私たちが子どもだった頃より、さらに苛酷だと言えるでしょう。何しろ競争相手は世界中にいるのですから。

こんな風にメタ認知の発達は、自己肯定感の危機を作り出し、その結果、彼らは親たちが「反抗期」と呼ぶような行動を取るに至ります。