反抗期の問題リスクになるもの ~危険因子と保護因子を知る【反抗期を科学する・7】(2ページ目)

反抗期に問題を起こす子

反抗期に問題を起こす子

さて、そういう視点で、反抗期(思春期の危機)を考えてみることにしましょう。

この連載でも既に話題にしましたが、思春期は、反抗期の問題の他に、暴力行為、不安や抑うつ、ネットやゲームへの依存、非行、引きこもりなど、様々な問題のリスクが高まる時期です。これは、この時期、子どもの脳のバランスが崩れていることの影響なのですが、そうは言っても、全ての子どもが思春期になると何らかの問題を起こすわけではありません。

問題を起こす子どもと、そうではない子どもが存在するわけで、その理由について、これまでの例と同様に、個人にかかわることと環境にかかわることの両面から考えてみたいのです。

危険因子 ~問題リスクを高めること~

実は、思春期の問題リスクを高めること(これを危険因子と言います)が何か、ということについて、既に世界中で研究がされていて、このことについて、ある程度、結論が出ています。

注意してほしいこと

では、思春期問題のリスクを高める危険因子が何かということになるのですが、そのことを具体的に説明する前に、注意して欲しいことを1つ、確認させてください。

注意してほしいこと

これから挙げる危険因子は、単なる統計的な研究の結果にすぎないということです。
例えば、喫煙が様々な病気の危険因子であることは、皆さんもご存知ですよね?
しかし、これは統計的なことで、「喫煙をすると必ず病気になる」ことではないですし、「喫煙しなければ病気にならない」ことを意味しているわけでもありません。喫煙する人は、しない人に比べて、病気リスクが高まるということだけを示していて、それ以上でも以下でもありません。

先ほど、子どもの学力と保護者の学歴の関連について書きましたが、もちろん例外はたくさんあるはずです。ただ、統計的に検討すると、保護者の学歴が高ければ、子どもの学歴も高くなる傾向があり、それは科学的に偶然ではない(つまり関係がある)と証明されていることになります。

思春期の問題リスクを高める危険因子

さて、思春期の問題リスクに話を戻しましょう。
子どもが思春期に問題を起こすリスクを高める要因、つまり危険因子ですが、代表的なところを次の表に挙げてみたいと思います。

思春期の問題の危険因子

個人にかかわること 発達障害、知的発達の遅れ、低出生体重、アレルギー
環境にかかわること(家庭) 貧困、保護者との関係の悪さ、虐待(されること、目撃すること)、保護者のメンタルヘルスの問題、兄弟の問題、地域からの孤立
環境にかかわること(学校) いじめ、悪い友達の存在、間違った教育、孤立(友達がいない)

くどいようですが、これらは単にデータを統計的に処理してわかったことにすぎません。例えば表の中に「発達障害」とありますが、「発達障害」イコール「思春期の問題を起こす」ではありませんし、「発達障害」でないからといって、思春期の問題を起こさないことを保証しているわけでもありません。確率の問題でしかないことに注意してください。

危険因子をどうしたらいいのか?

危険因子をどうしたらいいのか?

しかし、こんな風に科学的に「危険因子」とされているものを見てみると、考えさせられることも事実です。
低出生体重やアレルギーが、思春期の問題に影響を与えているなんてこと、考えてもみなかったと思う方も多いと思いますし、逆に兄弟の問題、友達の問題が思春期の問題に影響を与えているという結果に、「なるほど、そうだと思った」と納得されている方も多いように思います。

ただ、この危険因子を見せられたところで、「じゃあ、どうしたらいいのか?」ということの回答は出てきません。そこで私たちが考えなければいけないのが、危険因子の反対、保護因子の存在なのです。