
関心事だから前のめりに取り組み、自分の知見も広がる!
日大豊山では高校1年生と2年生が本格的に探究学習に向き合います。どのような目的のもと、準備と発表が行われているのでしょうか。高校3年生のH.S.くんと、総合学習係の主任として探究学習を統括する林小春先生に話をうかがいました。


日大豊山は探究学習に力を入れており、年度末には2年生による探究発表会も行われますね。
林先生 本校の校訓は「強く 正しく 大らかに」というものですが、探究学習では関心のある題材について粘り強く正確な情報を探り、大きく多様性を認め合ってほしいという目標があります。もう一つの目標として、大学の志望理由書を書く前に社会課題に目を向けてほしい、その興味から進路を選んでほしいというものがあります。
どういった内容の発表があったのでしょうか。
林先生 探究の対象は多岐にわたりましたね。「環境問題」や「いじめによる不登校」、「ヴィーガン」や「ジェンダー」など、それぞれの興味に応じたテーマで探究していました。
H.S.くん 私は小学6年生ぐらいのときから法律に興味があったので、性犯罪の規定が改正されたことによって性犯罪をなくすことができるのかをテーマに、「不同意わいせつ罪・不同意性交等罪で性犯罪は防げるか」という発表を行いました。他の人の発表だと、「幸せとは何か」という題材が印象に残っています。アンケートやインタビューを活用して抽象的な概念を結論づけたものでした。
発表するにあたりどのような準備をするのですか。
林先生 高校1年の最初にアンケートの取り方やインタビューの仕方、参考資料の集め方や実験のやり方など、客観的な裏づけを得る方法を学びます。インターネットで調べて終わりではなく、多角的な視点を身につけてほしいからです。1学期にテーマを決めて2学期に調べて3学期に発表する流れが基本です。
H.S.くん 私自身はインタビューの仕方が特に役立ちました。高校2年生のときの社会人セミナーというイベントで講演をしてくださった弁護士の方に連絡をとり、いろいろとお話をうかがいました。あとは、裁判の傍聴によく行っているので、性犯罪関係ではどのようなケースが多いのか、実例も自分の考察に落とし込みました。振り返ると、発表まで、みんなが真面目に取り組んでいたのが印象的でした。それぞれ興味があることなので前のめりになり、その結果、自分の知見も広がるので、探究学習の時間はとても重要だと思います。
高校3年生では思考の整理から始め、800字の小論文を執筆
高校1、2年生での探究学習は、高校3年生になると小論文執筆に発展。調べ、考え、書く学びは、生徒たちの成長に好影響を与えています。


ポスターセッションや発表会の効果をどのように感じていますか。
林先生 生徒たちの「知の共有」の場になっています。友人や先輩の発表を聴いて新たに知ることは多いですし、対話型の質疑応答を通してそれぞれの知識や視点が増えていっている実感があります。「知の共有」は、準備の段階から意識しています。クラスやコースの垣根を超えて、同じようなテーマを扱う生徒たちをグループに分けて意見交換をしてもらう場面も設けました。そこで新たな視点を得たり、調べている質や量を参考にしたりして、自分の探究をより充実させていきます。
H.S.くん 私自身は準備段階で友人と進捗を話し合っている際、「こういう視点はどう?」「こういうアンケートを取ってみたら?」といった意見をもらい、とても刺激的でした。私は冤罪や死刑制度を調べている人とグループが一緒になったのですが、法律を倫理的な観点から見る手法は新鮮でした。
探究学習での経験を、高校3年生の学びにはどのように落とし込んでいるのですか。
林先生 高校2年生のときに探究した内容を800字の小論文にまとめます。まずグループによる思考の整理から始めて、例えば死刑制度に賛成か反対かを答える場合、何を根拠にそう主張するのかを議論し合います。
H.S.くん 客観的に納得してもらうには、論理的に自分の意見をまとめなければいけません。主張とそれを裏づける根拠や事実とを結びつける作業を通し、考える力が相当鍛えられました。
林先生 考える力や書く力は伸びますよね。800字という限られた文字数で根拠を示して主張を伝える文章力は、大学の志望理由書や総合型選抜にもどんどん活用してほしいと思っています。
H.S.くん 私自身、探究や小論文の経験が総合型選抜に生きて、関西の大学の法学部から合格通知をいただきました。将来の夢は弁護士になることで、さらには法教育にも携わりたいと考えています。

探究学習の成果や経験によって、大学の選択肢が増えていく
日大豊山の探究学習は高校3年間の学びにとどまりません。大学の進路選びやその先の人生にも大きく役立っていきます。
探究学習の成果や経験は大学進学にも影響していきそうです。
林先生 そうあってほしいですね。本校は約70%が系列の日本大学に進学するのですが、今後は探究学習の実績や小論文を書く力を生かすことで、大学の選択肢が増えていくといいなと思っています。
H.S.くん 私の周りでも探究学習の成果を一つのアピールとして、総合型選抜で他大学に合格した友人が何人かいます。
林先生 正解のない問いに向き合う時間や社会をより良くするために頭を働かせる行為は、大学に入ってから、あるいは仕事を始めてからも続くものです。ぜひ日大豊山で経験した探究学習を忘れず、社会に貢献する人材になってほしいです。
H.S.くん 私自身も探究の授業の延長線上という意識で、大学で法学や法社会学に打ち込みたいと思っています。

大学進学のその先まで見据えている点は魅力ですね。
林先生 探究学習は知的好奇心を追求する部分があって、それはまさに生涯続く学びの本質だと考えています。その土台を作るために中学3年間は調べ学習や発表の機会を多くしていますし、高校では学びの軸となる思考力、判断力、表現力を伸ばせるように工夫しています。
H.S.くん とことん考える探究の授業は法教育にも通じる要素があると思っていて、いずれ小学生や中学生、高校生や大学生に法律の捉え方を教えたり、法的思考力を身につけてもらったりする立場になったときに応用できる気がしています。
編集後記
高校生が取り組む探究学習は、大学進学やその先に通じる学びであることが分かりました。2023年度の卒業生の現役大学進学率の95.3%という数字が示すように、日大豊山は確かな進学実績を残してきました。今後は取材に応じてくれたお二人の言葉どおり、探究学習の実績や経験を活用して総合型選抜などを用いることによって、大学選びの選択肢がさらに増えていく展開が見込まれます。その魅力を存分に体感できる学校説明会やイベントも要注目です。