
教員は黒子に徹し、学ぶ楽しさと将来への“ヒント”を伝える
大久保校長がこれまでの教員人生で大切にされてきたことを教えてください。
大久保校長
大きく分けて二つあります。一つは、生徒に学ぶ喜びを伝えること。孔子の『論語』にも、「これを知る者はこれを好む者にしかず。これを好む者はこれを楽しむ者にしかず」と説かれています。楽しみながら学ぶことが一番良いのです。ですから、生徒が充実感を持って学べるような場面を提供するよう心がけてきました。
二つ目は、生徒の成長を黒子に徹して見守ることです。例えば生徒が高い壁を登ろうとしているならば、上から手を引き上げるのではなく、自身が踏み台となって後押しする。目指す場所へ、生徒自身の意思と力で辿り着けるよう支えるのです。これこそが、本校の掲げる「豊かな人生を自らデザインできる自立した女性を育てる」というビジョンにつながると信じています。
そう考えるようになったターニングポイントはあるのでしょうか。
大久保校長 私が教師になって数年の頃、医者になった教え子が「先生の言葉がきっかけで、医者になろうと決めました」と言ってくれました。とても嬉しかった反面、教師の影響力の大きさも痛感しましたね。また、表舞台で何でも「これだ」と一つの答えを教え導くのではなく、陰ながら生徒へヒントを届けることが、真の教師の役目でもあると実感しました。

麴町学園女子の印象をお聞かせください。
大久保校長 赴任してまず驚いたのは、4月に行われた防災訓練です。在校生約800人が私語ひとつせず、粛々と教室から体育館へ向かい、クラスごとに素早く整列したのです。40年以上教員を務めてきましたが、こんなに厳粛な防災訓練は初めてでした。全校集会などでも、少し声をかければピタリと私語を止めるなど、メリハリをしっかり持った生徒が多い印象です。これが女子校の教育であり、麴町学園女子の生徒の成長なのかと思いました。
赴任後初の大きなイベントともいえる体育祭はいかがでしたか。
大久保校長 こちらにも非常に驚きました。静まり返っていた防災訓練とは打って変わって、会場(エスフォルタアリーナ八王子)が大きな歓声で埋め尽くされたのです。全力で競技に打ち込むだけでなく、仲間を応援することにも全く妥協がありません。ひたむきに情熱を注ぐ生徒たちの姿に圧倒され、閉会の言葉で思わず「感動した!」と叫んでしまいましたね。


海外はもちろん、日本国内でも多様性を学ぶ重要性を伝えたい
麴町学園女子独自の英語教育「アクティブイングリッシュ」については、どうお考えでしょうか。
大久保校長 主体的に英語を使って会話する「アクティブイングリッシュ」は、英語4技能をバランスよく身につけるメソッドで有名な安河内氏を特別顧問に迎え、共同で考案した英語力育成プログラムです。読む・書くだけでなく、聞く・話すといった「使える英語」を体へ浸透させる狙いがあり、いわばこちらは“麴町メソッド”とも言えるでしょう。この教育の成果が実り、例えば高校2年生時の修学旅行先であるニュージーランドやアイルランドでは、物怖じすることなく現地の方と会話を楽しんでいます。
「アクティブイングリッシュ」は今後も続けていく方針ですか。
大久保校長 もちろんです。ですが、この創立120周年を機に「グローバル教育」の在り方を少し見つめ直したいとも考えています。 “グローバル人材”というのは、英語を話せるだけではなく、さまざまな地域や文化の人と自分の違いを知り、それを相互に理解して協力し合えることだと思います。留学なども一つの手段ですが、日本国内でも学べることはたくさんあります。むしろ中学高校時代には「日本の各地域やさまざまな人とふれあうこと」も大切だと私は思うのです。例えば同じ日本国内でも、自分たちと同じ10代前半から半ばの子たちが、どのような環境で育ち、どのような境遇に置かれているか。多様性を知ることで、他者への想像力やコミュニケーション力が備わっていくと信じています。
「みらい科」の魅力についても教えてください。
大久保校長
多様性を知る意味でも、「みらい科」は非常に良い取り組みだと考えております。本校ではこれからの社会で求められる能力を「つながる力(人間関係・社会形成能力)」など4つ挙げており、「こうじまちコンピテンシー」と名付けています。こちらを体得することで、一般的に言われる「グローバル」な目線も「ローカル」な目線も持てる女性へと成長できるのです。この取り組みの一環で参加し、地域の課題について考案した「地方創生☆政策アイデアコンテスト2024年」では中学1・2年生の合同チームが最終審査会まで進むことができました。

創立120周年を節目に、さらなる教育のアップデートを
今後の麴町学園女子の取り組みとして、大久保新校長が考えていることはありますか。
大久保校長
海外だけでなく国内の各地域にも赴き、各地の特色や文化、そして課題に触れられるような機会を設けたいと考えています。こうした出会いをヒントに、想像力も磨かれ、自分が将来やりたいことも見えてくるはずです。創立120周年を節目として、私はもちろん全職員で、本校の新たな教育の形をアップデートしていく所存です。
なお120周年記念行事として2025年7月末には、小説『女の子たち風船爆弾をつくる』にまつわる講演会を行いました。戦時中、麴町学園女子を含めた高等女学校の生徒らが、対米戦に使われる風船爆弾を作っていたという姿を描くお話です。著者・小林エリカさんと、実際にこの体験をした麴町学園女子の卒業生を迎え、当時の状況や思いを振り返りました。新たな麴町学園女子の取り組みを象徴するような講演会でした。
改めて、受験生に向けてメッセージをお願いします。
大久保校長 受験生の皆さんはぜひ「好奇心」「行動力」「やりぬく力」を磨いてみてください。仮にうまくいかなくても失敗から学び、人生の財産になるものも数えきれないほどあります。こういった「好奇心」「行動力」「やりぬく力」の姿勢を持つからこそ、国や地域の境界線、他者との境界線を悠々と越えて手と手を取り合えるような人材へと成長していきます。本校ではそのようなチャンスがたくさんある環境です。
編集後記
アクティブイングリッシュやみらい科の授業、そして体育祭をはじめ、諸行事においても、つねに全力投球している生徒たち。その中で、自分らしい生き方とは何かを自分自身で見つけ出せるよう支えてくれる先生方がいます。大久保校長を迎えて新たな風が吹き、130周年を見据えて、麴町学園女子はさらにパワーアップしていきそうです。
イベント紹介
| イベント名 | 実施日時 | 備考 |
|---|---|---|
| 首都圏模試保護者会/会場校説明会 | 2025年9月15日(月・祝) |
・首都圏模試センター保護者会 9:00~9:50 / 14:00~14:50 ・学校説明会 9:50~10:45 / 14:50~15:45 |

