2025年度の「みらい科」ではビジネスプランの立案も

麴町学園女子中学校高等学校
麴町学園女子中学校高等学校(以下、麴町学園女子)では、自立した女性の育成に向けて、同校独自のキャリア教育である「みらい科」の授業を実施しています。「つながる力(人間関係・社会形成能力)」「自分を信じる力(自己理解・自己管理能力)」「出会う力(キャリアプランニング能力)」「しなやかさ(課題対応能力)」を伸ばすことを目的とする探究型学習は、2024年度にさらに進化しました。より充実したみらい科の特色に迫ります。

「地方創生☆政策アイデアコンテスト2024」で成果が実る

中学1年生から高校2年生まで、5年をかけて行われる「みらい科」の目的や学び、あるいは今後の発展について、みらい科推進室の難波俊樹先生にうかがいました。

みらい科推進室の難波俊樹先生
みらい科推進室の難波俊樹先生

みらい科について、設置の目的を教えてください。

難波先生 スタートしたのは2016年度です。21世紀になって社会が大きく変化する中、「科学の目を開くことをはじめ、広い知識や教養を身につける新時代の良妻賢母を育成する」「男子とならびそう、これからの広い女子教育を向上する女学校を設けたい」という建学の精神をより具現化するには、従来の教科の授業や学校行事に加え、新しい教育を実施する必要があると考えました。

みらい科の時間はどのような成長を促していますか。

難波先生 フィールドワークをはじめ、職業インタビューや職業体験などを通じて、自己効力感や主体性、あるいは好奇心が育成できていると実感しています。発表などにあたっても、生徒側から準備をしっかりしたいと要望が出される場面が多いです。将来を明確に考える生徒が増えていますし、みらい科での学びを生かして総合型選抜で難関大学へ進学する生徒も出ています。

今年度、プログラムをリニューアルした経緯と新たなみらい科の特徴について教えてください。

難波先生 運営が学年からみらい科推進室に移り、専門の教員チームが縦横のつながりを意識した継続性のあるプログラムがデザインできるようになりました。高校1年生までに、より幅広い経験を積むようなプログラムにアップデートしています。2学年が協働してグループワークに取り組む時間も設けましたし、みらい科の学習が教科学習への興味促進になり、教科学習の成果が世の中と関連していることに気づくきっかけとなるように授業が進められています。

2024年度はどのような活動を行いましたか。

難波先生 毎週水曜日に実施されているのですが、大きなところで言うと「地方創生☆政策アイデアコンテスト2024」の参加が挙げられます。ほかにはワークショップを通して思考法や発想法を養ったり、数学の楽しさを知ったりもしました。また、日本の稲作を救う一助となるべく、酒田米菓さまとの連携授業で「おせんべい」の商品化も進めています。

地方創生☆政策アイデアコンテスト2024に取り組んだ理由を教えてください。

難波先生 個々の興味関心によって、文理を問わずテーマが設定できる内容である点に魅力を感じました。取り組み自体は主体性をもって進めるように、教員側は細かい進捗管理をせずに生徒に任せていましたし、生徒たちはその思いに応えてくれました。実際、中学1、2年生のチームが「多良間村(たらまそん)の環境問題」をテーマに、全国から選ばれた9組のうちの1組として最終審査会で発表しています。

2025年度、みらい科ではどのような学びを予定していますか。

難波先生 中学3年生と高校1年生の協働で、ビジネスプラン立案の時間を設けたいと考えています。社会や企業の仕組みを学んだ後、社会課題を解決するビジネスを考え、事業プランを作成するものです。また、校名にもある「麹」について実験や実習などを行う探究学習も予定していますし、今後の食料問題を大きく変えるフードテックの最新情報に触れながら、産業の問題、社会課題、先端のバイオ技術など、個々の興味を堀り下げる機会を提供するプログラムも実施したいと思っています。

みらい科のプログラムを通して起こった自身の変化とは?

地方創生☆政策アイデアコンテスト2024の最終審査会まで残った中学2年生の2人に、みらい科の授業やコンテストについてお話をうかがいました。

地方創生☆政策アイデアコンテスト2024の最終審査会まで残ったR.M.さん(◯)とM.N.さん
地方創生☆政策アイデアコンテスト2024の最終審査会まで残ったR.M.さん(左)とM.N.さん(右)

みらい科で特に印象に残っている授業はありますか。

R.M.さん 地方創生に向き合った時間が印象深いです。その地方の力になれるように、いろいろな角度から考えて取り組みました。

M.N.さん 私も地方創生の授業です。チームのメンバーで、どのようなことをすれば地方の人が喜んでくれるのかをじっくり考えました。

お二人は地方創生☆政策アイデアコンテスト2024で「多良間村の環境問題」をテーマに、最終審査会で発表しています。政策を作成する上で苦労した点はありましたか。

R.M.さん スライドのつなげ方や話の流れを作るところに苦労しました。その点では先生方にアドバイスをもらって、より良いスライドに仕上げました。

M.N.さん スライドの枚数が多くなりましたし、内容にも苦戦しましたが、他の班や過去の政策のスライドを参考にしました。

地方創生☆政策アイデアコンテスト2024では沖縄県に注目し、「多良間村の環境問題」をテーマにしました
地方創生☆政策アイデアコンテスト2024では沖縄県に注目し、「多良間村の環境問題」をテーマにしました
サトウキビの搾りカスである「バガス」の処理が課題であり、その解決策を提案しました
サトウキビの搾りカスである 「バガス」の処理が課題であり、その解決策を提案しました

コンテストの参加で気づいたことを教えてください。

R.M.さん 自分の知っている場所でも、それ以外の場所でも、問題はまだまだあるのだと気づきました。

M.N.さん 地方や地域のために頑張れることが素敵なことだなと気づけました。

みらい科のプログラムを通して自身に変化はありましたか。

R.M.さん 自分の視野が広がったと思います。今はおせんべいの開発に取り組んでいるのですが、お菓子を見ると、その製品を作るためにもさまざまな人が苦労しているのだなと考えるようになりました。

M.N.さん もっといろいろな地域を元気にできる案を考えたいと思えるようになりました。みらい科で身につけた考える力と想像力は将来に生きると思います。

麴町学園女子だからこそできること

受験生やその保護者に向けて、難波先生に麴町学園女子ならではの特色を語っていただきました。

豊かで幅広い体験プログラムが用意されています
豊かで幅広い体験プログラムが用意されています

難波先生 麴町学園女子の取り組みのポイントとしては、豊かで幅広い体験プログラムが用意されている点が挙げられます。異なった背景を持つ教員たちが話し合いながら練り上げたプログラムを提供しており、週1回2コマの中で多くのテーマを取り扱い、理解を深める時間がしっかりと確保されています。みらい科の学びは進路選択や入試方法の多様化を意識したプログラムであり、卒業後や将来を見据えた能力の育成を意識している点も特色です。これらのポイントをすべて意識したプログラムを実施しているのは、麴町学園女子ならではだと考えています。

編集後記

5年間続くみらい科は縦割りグループで協働する探究型学習に進化しました。多様な人と幅広いテーマや課題に向き合うことで、「つながる力(人間関係・社会形成能力)」「自分を信じる力(自己理解・自己管理能力)」「出会う力(キャリアプランニング能力)」「しなやかさ(課題対応能力)」が育まれるのは間違いありません。高校2年次には論文を執筆。その研究を含めた成長が大学の総合型選抜により生きる展開が見込まれます。