桜丘の探究は実学重視!挑戦した成果を進路に活かす

桜丘中学・高等学校
大学進学にめざましい実績を上げている桜丘中学・高等学校(以下、桜丘)。その理由のひとつに、同校が力を入れている探究学習が上げられます。生徒たちが夢中になって取り組み、さらに高校のコース選択にも直結しているとのこと。今回は中学での探究学習について注目しました。

桜丘が大切にしている探究の学びとは

中学3年間での探究学習について、探究科教科長・中野優先生にうかがいました。

中野先生の写真
探究科の中野先生

桜丘の探究学習における特徴について教えてください。

中野先生 本校では実学を意識し、成果物をつくるということに力を入れています。今の若者が社会に出る頃は、今ある職業に就くわけではありません。そこで、自分で何かをつくるマインドセットを意識したカリキュラムになっています。

学年ごとの取り組みもお聞かせください。

中野先生 1年生はまず表現することに前向きになるため、プレゼンテーションの機会を多く設定しています。またコンテストにチャレンジすることで、挑戦することに億劫にならず、失敗してもそれが成長のきっかけになるような取り組みをしています。
2年生では広島に研修旅行に行きます。従来だと平和学習が中心になると思いますが、原爆被害からの復興、今に至るまでには新しいものを生み出すくらいのエネルギーが背景にあったと思います。そうした社会の動きも学びます。

起業家精神教育プログラムもそのひとつですね。

中野先生 今年で2回目です。ひとつの商品には多くの仕事が関係していることを知り、自分の“得意”を形にすることを目的にしています。さらに実学を意識していますので、実際に事業計画書も作成し、それを元に銀行の融資担当の方にプレゼンをして融資が可能か審査してもらう、ということも行います。融資を断られてもそれも経験としてチャレンジさせています。

タブレットで調べる生徒の写真
事業計画をたてる生徒たち
融資を受けるためのシミュレーションシートに記入する写真
融資についてワークシートをもとにシミュレーション
銀行の融資担当にプレゼンする写真
銀行の融資担当者にプレゼン

3年生ではいかがでしょう。

中野先生 将来の目標から逆算し、実現するために大学にはどんな学問があるか、ならば高校はどのコースを選ぶか、と自分の進路につなげる活動が主となります。鹿児島のキャリア探究研修旅行はその活動のひとつです。今年は7コース設定し、生徒たちは自分の興味関心にあわせて選択しました。
1年生の時はとにかく楽しく、2年生はみんなで挑戦、3年生は個別で取り組みます。高校に進学しても同じ流れで取り組み、最後は大学進学という進路につながり、中学はいわば1サイクル目。ここでしっかり経験を積んでもらいます。

探究学習は日々の学習にどのように活かされているでしょうか。

中野先生 数学や理科でもただ教科書で覚えるのではなく、探究的な感覚をもって学んでほしいと考えています。高校では飛鳥山でフィールドワークを行いますが、いろいろなタイミングで「なんでこうなっているんだろう」と考える習慣は身についてきているようです。また、自分の意見を発することに非常に価値がある。そうした経験を積んできているので、通常の授業に関しても活発に取り組むようになってきています。

生徒の隠れた資質を可視化するコンピテンシー診断を導入

貴校ではAi GROW(アイグロー)というツールを利用したコンピテンシー診断を導入されています。探究学習を進める上での効果を教えてください

中野先生 ソフトスキルを育てていく際、教育効果を可視化することが非常に難しい面があります。このツールを利用することで、例えば起業家精神教育ではこのスキルを伸ばしたいという思いを持ちながら取り組めるので、定点観測がしやすくなりました。スコアをもとにエビデンスに基づいた生徒指導ができています。

この結果を基にした進路指導もされているそうですね。

中野先生 三者面談でお子さまの成長について話すほか、今は大学入試の志望理由書や推薦入試では在学中の活動でどんな成長があったかを求められます。自分の内面の変化を可視化できるという点で推薦入試にも良い影響が出てくると期待しています。

起業体験で創立100周年記念グッズを作成!

中学3年生の小澤拓真さん、落合優希さんにもお話をうかがいました。二人が中学2年のときに体験した起業家精神教育プログラムでは、各グループを会社に見立てて、桜丘の創立100周年記念グッズを考案しました。仮想上ではありますが学年の中で販売も行い、利益がいくらになるかなど、実際に近い体験をしました。

小澤さんと落合さんの写真
小澤さん(右)は鉄道総合研究部の部長。お母さまは桜丘の卒業生。落合さん(左)は書道部に所属。桜丘は特待制度が充実していたことから志望

制作された商品を教えてください。

小澤さんの写真
昨年参加した「エナジードサミット」(プレゼン大会)では三次選考まで残った。「もう一歩のところでした。探究活動での一番強い思い出です」

小澤さん 僕たちの班ではバックを考えました。男女関係なく使いやすいものをといろいろ話し合って企画しましたが、僕は社長という立場だったので全員の意見をまとめる役割でもあったのですが、これがものすごく大変で、実際に起業されている方もそうなのかと実感しました。

落合さん 私たちは自作した100周年記念キャラクターを使ってデザインしたシールです。グッズを作るまでに企画書やデザイン案など節目ごとに提出しないといけなかったのですが、すべてギリギリの提出になってしまい、計画性が大事だなと痛感しました。

制作過程で大切にしたことはなんでしょう。

小澤さん 値段の設定には注意しました。何個販売すれば利益が出るか、そのために材料費はいくらにするか班の中でも結構もめ、先生には何回も相談しました。最終的には一人あたりの利益が少なくても会社として成り立てばいいのではとアドバイスをいただき、原価プラス300円ほどで案を出しました。

100周年記念バックのイメージ図
小澤さんの班が制作した100周年記念バックのイメージ図
100周年記念バックを肩から提げたときのイメージ図
肩にかけた状態もシミュレーション

落合さん 私はCMです。商品を見せる点では大事だと思い、人の声を加工して100周年キャラクターをしゃべらせるという面白要素も入れて作成しました。実際、他の会社のCMもやはり面白要素を入れたものは売れ行きが良かったです。中学生って面白いことが好きなので、年齢層に合わせることは大事だと再確認しました。

三者面談では志望するコースを保護者の前でプレゼン

落合さんの写真
落合さんは書道部に所属。桜丘は特待制度が充実していたことから志望した

夏には高校の進学コースについて三者面談でプレゼンされましたね。

小澤さん いろいろな体験をしたいと思いAコース(※1)を志望しています。面談ではスライドを作成し先生や親の前でプレゼンしました。先生からはすごくいいプレゼンだと言っていただき、思いが伝わったかなと思います。

落合さん 高難度な授業に挑戦したいと思いSコース(※2)です。母に聞いてもらうので二人の共通の思い出でもある「暴れん坊将軍」と自分の将来をかけて「暴れん坊将来」というテーマでプレゼンしました。やっぱりネタに走っちゃって(笑)。先生も母も笑って、大丈夫かなと思いましたが納得してもらえました。

(※1)文理特進の「アカデミックコース」
(※2)難関選抜の「スーパーアカデミックコース」

鹿児島研修旅行は高校のコースも考えて選択するそうですがお二人は?

小澤さん 歴史が好きなので航空の歴史を学びたいと思い「JAXA/航空の歴史コース」です。鹿屋航空基地資料館では特攻隊員の遺書を読み、胸が締め付けられるような衝撃を受けました。

落合さん 私は「廃校利活用コース」です。進学したいコースから考えれば「鹿児島大学コース」なのですが、自分の興味関心を大切にしたいと思いました。とても楽しく興味深い内容で、コンピテンシー診断の結果も大切ですが、好きなことを忘れずに選択することも大事だと思いました。

鹿屋航空基地の見学を終えた生徒の写真
鹿児島研修旅行では鹿屋航空基地を訪問

今後の抱負をお聞かせください。

小澤さん 成績を落とさず部活と勉強を両立すること。また高校でもプレゼン力を活かした活動をしたいと思います。

落合さん 私も勉強に対しては気を緩めないようにしたいです。また中学3年間でスライド作りが好きになり、プレゼンも好きになりました。もっとレベルアップしていきたいです。

図書館にあるプレゼンテーション設備に並ぶ小澤さんと落合さんの写真
プレゼンテーションでよく使う図書館にて。二人とも「MCスピーチ」プログラムでのプレゼンテーションが印象深いとのこと

編集後記

「桜丘の探究科には探究の授業のみ担当する教員がいるので、コンテストのサポートも手厚い」と中野先生。今後は地域との連携を取りながら社会経験をもっと積ませて上げたいという構想もあるそうです。AIも活用しつつ、生徒たちの興味関心を大きく育てる環境が整っています。

イベント紹介

イベント名 日時 備考
第9回学校説明会 2025年1月11日(土)14:30〜16:00 校内見学・個別相談あり