就任から1年 新校長が目指す中高教育のあり方

昭和学院中学校・高等学校
昭和学院中学校・高等学校(以下、昭和学院)に2024年度新たな校長が就任しました。山本良和新校長は筑波大学附属小学校から昭和学院小学校を経て同校の校長になった異色の経歴の持ち主です。生徒一人ひとりの可能性を大事にする同校にどんな新風を起こそうとしているのか、今後の展望をじっくりおうかがいしました。

児童の良さを引き出す入試を実施

中学入試についてうかがいます。

昭和学院の中学入試の特徴を教えてください。

山本校長 本校の中学入試は、受験生それぞれの得意分野が発揮できるよう2科目(国・算・英から選択)や4科目(国・算・英から2科目選択+理・社)の入試以外に、「算数1科」、「国語1科」、「マイプレゼンテーション」、「適性検査型」といった、多種多様な入試形態を用意しています。

中学入試を終えて、どのような感想を持たれましたか?

山本校長 受験生が自分らしさを一生懸命に発揮しようとしている姿が非常に良いなと感じました。また入試そのものにもこちらの価値観を押し付けるのではなく、受験生の良さを我々が見出し、意味や価値を付けていこうという本校の姿勢が現れていると思います。

算数教育・教師教育が生徒の力を伸ばす

山本校長は筑波大学附属小学校に在籍中、講師として昭和学院小学校に招かれたことがきっかけで、4年前に同小学校の副校長になり、1年後には校長に就任された経緯があります。小学校での授業や研究についてうかがいました。

筑波大学附属小学校で手掛けられた研究内容を教えてください。

山本校長 算数教育です。そのなかでも教師教育として、授業改善の方法を研究してきました。
授業改善は、数学的な見方や考え方をもとに「未知の問題に対して諦めず立ち向かう力」を身につけさせることを目的としています。数学的な見方や考え方は、知識や技能とは異なり、教えるという手法では育たないため工夫が必要です。

山本校長執筆の本
山本校長の著書の数々。教師教育についての研究が詰まっています

数学的な見方や考え方を育てるために、どのような授業を行われたのですか?

山本校長 例えば「解ける問題」ではなく「解けない問題」を出すんです。すると生徒は情報を噛み砕き、なぜ解けないのかを考える。そこで私が与えるのが「どの情報が足りないから解けないのか」を言葉にして表現する時間です。
生徒同士が知恵を出し合い、お互いの考えを想像し「分かった!」が繋がっていくような授業を行っていました。

小学校の校長から中学校・高校の校長へ

さらに小学校と中学校・高校の違いや、山本校長の教育モットーについてもうかがいました。

小学校の校長から、中学校・高校の校長になるのは珍しいと思いました。

山本校長 私が一番驚いたほどです(笑)。今年1年は、まっさらな状態で学校の教育活動全体を観察してきましたが、見るもの全てが新鮮でした。
本校の校長になるにあたって、理事長から「昭和学院の授業を変えてください」と託されました。これまで昭和学院小学校で行ってきた授業改善や、先生方の意識改革を評価していただいたのだと思います。

先生方の意識改革とは、具体的にはどのようなことをするのでしょうか?

山本校長 各先生が可能な時に自主的に自分の授業で見てほしいポイントや主張をA4サイズにまとめて書き、参観可能なほかの先生に授業を見てもらいます。
自分の授業に関する主張を書くと、教材の価値や内容、自分の教育観、生徒にどんな力を付けさせたいのかなどが整理され繋がっていきます。
また、工夫や試みがある授業では、生徒の反応が楽しみになります。そして日々の授業自体が楽しくなり、自分をアップグレードしていこうという意識が自然に生まれます。先生が笑顔で授業を楽しんでいれば、生徒も顔を上げて笑い、意見も言います。そんな授業、教師軍団に、本校もしていけたらと思い描いています。

小学校と中学・高校では、生徒の姿勢や学校に求められることは異なりますか?

山本校長 違いますね。目の前のことを一生懸命に頑張っているのが小学生で、中学生・高校生は、自分の将来や進路を考えるようになりますから。
その進路を決めるプロセスが、学校教育なんです。なので学校としては、中高生の生徒が自分自身のやってみたいことや、生き方を振り返る・見つめ直せるような機会を設けることが大切だと感じています。

山本校長
中高の校長になってからは、これから大人になっていく生徒たちに対して、何を大事にすべきかという点を常に考えています

「生き方を見つめ直せるような機会」としては、どのようなものが考えられますか?

山本校長 外部の講師によるキャリア教育などを通して、身近な大人の生き方に触れることも、生き方を見つめ直す機会の一つです。
さらに本校の「コース制」も挙げられます。関心があることを学べるコースを選び、各コースの中で生徒それぞれが自分のやりたいことを見いだせる。さらに中3と高2でコースを再選択できる仕組みも、自分を見つめ直す機会になると思います。
先生の話を聞くだけの授業では、主体的な学びにはなりません。自分で学ぶことを決めて、考えを表現する機会を自分で選択・判断できるような授業を行うべきだ、と私は考えています。

山本校長の教育のモットーはなんですか?

山本校長 「いっぱい失敗しましょう」です。
社会人の失敗は大変ですが、学校という世界の中では許されます。失敗というのは「うまくいくだろうと思っていたことが、うまくいかない」という体験です。
本校が設けている「探究学習」は、有意義かつ豊かな失敗体験を保証するものだと思っています。自ら問題を見つけ、解決方法の仮説を立てたうえで実際にやってみる。なかなか成果が上がらず、今の方法ではダメだと振り返り自分で決め直す。このプロセスが重要です。

昭和学院の教育施策や今後の展望

これから実施する予定の教育施策はありますか?

山本校長 生徒会を含め、生徒の自治的な活動を保証していくような施策を考えています。これは自主性に関わってくることで、自分が全校の仲間を動かすような、本物の体験をしてもらいたいんです。
人を動かすことや、反対意見をまとめることの大変さを知り、成長していく。このプロセスをカリキュラムに落とし込めたらと考えています。

山本校長
これからは探究活動の一環として、修学旅行の行き先も生徒自身が企画します。主体的に企画することで、中身の濃い本物体験になるでしょう

山本校長が考える、中高教育の今後の課題・展望を教えてください。

山本校長 これからの時代は生成AIが当たり前になり、人間の仕事が淘汰されていくでしょう。その中で人間の役割は、試行錯誤のうえで新しいアイデアを生み出すことだと思うんです。
より主体性が必要とされる世の中で、自分がどうあるべきか。そのベースとなるのが、中高時代の豊かな経験です。授業・部活動・探究活動・生徒会といった学校教育の中で、実感を伴った体験をどれだけさせられるのかが大切だと考えています。

夢を実現するプロセスをサポートする

将来の入学希望者に期待することを教えてください。

山本校長 失敗や間違いは当たり前なので、恐れずに自分のやりたいことをたくさん見つけて挑戦してほしいです。
自分が進みたいコースが必ずあると思うので、たくさんのやりたいことの中から、本当に自分がやりたいことを決めていく。そのプロセスを本校で実現してもらえたらと思います。

保護者へのメッセージもお願いします。

山本校長 コース制をはじめ、学校の教育体制として、お子さんが夢を実現するプロセスをサポートしていきます。学校の魅力を今以上に高め、「昭和学院に行きたい」と言ってもらえるように尽力してまいります。

編集後記

今回のインタビューでは、山本校長の教育に関する考え方をうかがう中で、生徒の将来に対する熱意を感じることができました。山本校長は、始業式や終業式でのお話も工夫されているそうです。3学期の始業式では巳年にちなんで「なぜ蛇が苦手な人が多いのか」を研究結果とともに話すなど、生徒の探究心に繋げられるようにしているとのことでした。昭和学院は、本当にやりたいことを見つけるためのサポート環境が整っています。山本校長が導く新しい昭和学院にご期待ください。

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