「葉の老化」の研究で世界大会へ!安田学園は「探究」が充実

安田学園中学校・高等学校
東京都墨田区に校舎を構える安田学園中学校・高等学校(以下、安田学園)は、創造的学力を形成する「自学創造」の教育を実践しています。その一環として疑問を論理的に探究する「探究プログラム」に力を入れ、高校1、2年生は個人研究に取り組みます。課題研究・探究の世界大会に参加した生徒と、探究プログラムの担当教員の声を通して学びの特徴に迫ります。

「第10回高校生国際シンポジウム」のポスター部門で「最優秀賞」を受賞!

一貫部先進コース5年生の北村幸洋さんは、生態学のゼミに所属し個人探究「常緑樹の葉の老化がアレロパシー効果を誘発する」を「第10回高校生国際シンポジウム」に応募。ポスター部門で最優秀賞を受賞しました。研究のきっかけや受賞の感想などをうかがいました。

一貫部先進コース5年生の北村さん。陸上部で部長を務めています
一貫部先進コース5年生の北村さん。陸上部で部長を務めています

探究プログラムの「個人探究」で「生態学」のゼミを選んだ理由を教えてください。

北村さん もともと人間や動植物における生物間のコミュニケーション能力や感情に興味を持っていました。いろいろなゼミがある中から生物学、生態学、心理学の3つを希望し、最終的に入ったのが生態学のゼミでした。

「常緑樹の葉の老化がアレロパシー効果を誘発する」というテーマで個人探究に取り組んだそうですが、このテーマを選んだ理由を教えてください。

北村さん 個人探究のテーマについて先生に相談したところ、本来希望していた動物を対象とする研究にはいろいろ制限があり難しいので、植物でやってみたらどうかと提案され、「植物もコミュニケーションをとるのかな」と興味を持ったのがきっかけです。先行研究を調べてみると、植物にもコミュニケーションが存在するという研究を見つけました。実証を進める中で植物が、自身の近くにある植物の成長を促進させたり阻害したりする化学物質「アレロパシー」の存在を知り、その現象を研究することにしました。

応募の動機、またその準備では学校からどのようなサポートがありましたか。

北村さん 先生からシンポジウムの話を聞き、自分の研究が専門家の方からどのように評価されるのかを知りたくて、試しに応募してみました。まさか受賞するとは思わなかったので驚きましたし、実験や論文のまとめ方など、先生にサポートしていただいたおかげです。

世界大会の「グローバルリンクシンガポール2025」に参加して得たものとは?

受賞を受けて「グローバルリンクシンガポール2025」に推薦された北村さんは、今年7月にシンガポールでの発表に臨みました。

「グローバルリンクシンガポール2025」でも発表を行いました
「グローバルリンクシンガポール2025」でも発表を行いました

「グローバルリンクシンガポール2025」に向けてはどのような準備をしましたか。

北村さん 海外の方に向けて英語でプレゼンテーションしなければならないことが、一番難関でしたし、準備に時間をかけました。英語でのプレゼンは初めての経験で、どう話せば熱意が伝わり、聞き取りやすくなるのかに留意しながら準備をしました。一人で練習するのは難しかったので、ELTの先生に英会話の課外授業をしていただき、原稿やスピーチの内容を見てもらったり、質疑応答の練習をしたりしました。

参加された感想をお聞かせください。

北村さん 自分の英語が通じたのは自信になりました。またマレーシアや香港、ベトナムの人たちとのグループ交流の場面では、各地の学校事情やそれぞれの発表内容などを聞けたことが新鮮で、刺激にもなりました。彼らとはSNSのアカウント交換をして、今も交流が続いています。

「グローバルリンクシンガポール2025」では自分の英語が通じて、自信をつけたと話します
「グローバルリンクシンガポール2025」で発表する北村さん。自分の英語が通じて自信がついた、とのこと

この探究プログラムを通じて、自分の中で一番成長したと思える部分を教えてください。

北村さん 自分のささいな疑問について深く研究できたうえ、それを公の場で発表し、専門家の方と意見交換する機会も与えていただきました。恥ずかしがらずに自分の意見を伝えられたのは自信になりましたし、発表すれば多くの方に共感してもらえることを知れたことも成長した部分だと思います。

今後についてはどのように見据えていますか。

北村さん 「第10回高校生国際シンポジウム」や「グローバルリンクシンガポール2025」で発表した今回の研究については、植物コミュニケーションの一部にすぎませんので、他の方法でも調査してみたいですね。また、植物だけでなく動物の感情やコミュニケーションについても興味があるので、実際にどういう仕組みがあるのか、社会的なメリットがあるのかなどを大学で研究していきたいと考えています。

中学1年生から取り組む「探究プログラム」は学びたい意思を強める

「生態学」のゼミで北村さんを指導した小島直樹先生に、探究プログラムが生徒に与える影響について聞きました。

北村さんを指導した小島先生(左)。理科主任で、生物クラブの顧問も務めています。北村さんの研究では一緒に研究方法を調べるなど、先生自身も勉強になったと語ります
北村さんを指導した小島先生(左)。理科主任で、生物クラブの顧問も務めています。北村さんの研究では一緒に研究方法を調べるなど、先生自身も勉強になったと語ります

「探究プログラム」のグランドデザインを教えてください。

小島先生 中学1年生では自然科学を探究し、動物の形や行動などを観察し、どういった性質があるのかを考察します。2年生は社会科学の探究で、新潟県十日町市のトキを放鳥している地域において環境と人間、野生生物の三者がどう関わっているのかを探ります。3年生は地域探究で、京都の街づくりを探究します。中学1年で個体、2年で空間、3年で時間と徐々に階層を広げ、調査した内容をポスターやスライドにまとめて文化祭などで発表します。

こうした経験を踏まえ、一貫4年生(高校1年生)から個人探究を行います。さまざまなゼミが開講されますので、興味のある分野のゼミに所属し、担当者と一緒にテーマを立てて実際に調査、探究を深め、年度末には発表会を行います。一貫5年生はキャリア探究で、それまでに得た深い学びや知的好奇心を糸口に、卒業後の進路や研究分野を考えていきます。

個人探究のテーマとして、これまでにどのようなものがありましたか。

小島先生 映画が好きで、単館映画館を後世に残し続けるためにはどうすればいいかというテーマに取り組んでいる生徒がいます。単館映画館の来館人数や売上、上映作品の内容などを調べ、館長にインタビューするアポイントメントも取っているようです。また、太陽電池に電気が流れる様子を可視化する、というテーマもありました。

探究プログラムは、生徒たちの学びにどのような影響を与えているのでしょうか。

小島先生 勉強する意味や意義を改めて本質的に振り返ることができると思います。問いを立てるという行為は、分かっていることと分からないことの境界に立たないとできません。そして、分からないことは調べて学ぶ必要がある。学校の教科は本来そういうものであるはずですし、そのことに改めて気づけると思います。また、そこで得たものを再び探究に生かすことができるといった相互作用も期待できます。

大学入試の総合型選抜にもつながりそうですね。

小島先生 実際、腸内細菌やバクテリアの研究をした生徒が医療や健康に関心を持ち、個人探究での取り組みやそこでの紆余曲折をまとめて筑波大学の医学群看護学類に出願し、見事に合格しました。その卒業生はこの4月から看護師として働いています。また、ミツバチの社会行動について研究した生徒は、生物の研究や成果を人類や環境に役立つ分野に応用したいということで農学に興味を持ちました。東北大学農学部の推薦入試に出願して合格し、この春から東北大に通っています。興味を持ったことに対して追求し続ける経験が、卒業後の進路選択にも大きな影響を与えています。

編集後記

陸上部に所属する北村さんと生物クラブの顧問を務める小島先生。「生態学」ゼミで出会うまで接点はなかったそうですが、取材中は和やかなかけ合いを見せる場面もあり、個人探究を通じて育まれた信頼関係が垣間見えました。北村さんは「頼りがいのある先生と一緒に興味のあることを存分に探究できるのが安田学園の魅力」と語っていました。

イベント情報

WEB予約制の学校説明会は毎月実施されています。

イベント名 実施日時 備考
中学入試説明会 2025年9月27日(土) 9:00~/10:00~/14:30~ 説明会と小6を対象とした授業体験を行い、説明会参加者を対象とした校内見学も実施します。
2025年10月11日(土) 9:00~/10:00~/14:30~ 説明会と、説明会参加者を対象とした校内見学も実施し、校内見学後には個別相談も可能です。
2025年11月1日(土) 9:00~/10:00~
2025年12月6日(土) 14:30~/15:50~ 2026年度入試出題方針の傾向と対策について解説し、説明会参加者を対象とした校内見学も実施します。