
同じ方向を見る友達と、一緒に学んで成長しよう
小学生の頃には好きなだけ絵を描いていた女子美生も、高校卒業間近のタイミングになると、遥かに成長した画力を発揮するようになります。高校3年生が木炭デッサンの課題制作に取り組んでいる授業の様子を見学させていただきました。

女子美生は高校3年生にもなると高いレベルの画力を身につけていますね。
浜田先生
最上級生として精神的にほぼ大人ですし、アートに対してそれなりの自負心を持って取り組んでいますが、もっとうまく仕上げたいという気持ちがあるので私たち教員のアドバイスを真摯に受け止めてくれます。
先ほど見てもらったのはデッサン授業の最終回です。課題制作は好きなだけ時間をかけられるものではなく、決まった時間の中で計画的に進める必要があります。これはプロのアーティストでも、いろんな分野のお仕事でも同じことが言えますよね。全ての課題は授業の何回で行うというスケジュールを前もって伝えており、中学生のうちから時間配分をはじめとする制作計画を考えることも身につけられるようにしています。
取材撮影にも関わらず、皆さんは物凄い集中力を見せてくれました。
浜田先生
高校3年生はモチベーションが本当に高く、満足できるような作品づくりをしたいと努力を重ねてきました。取材の方がいらしても気が散らないのは、その結果身についた姿勢だと思いますが、そうした気持ちは中学1年のうちから養われています。例えばデッサンのように基礎的な描写力を育てる、まるで筋トレのような授業もあるのですが、そればかりになると養成学校のようになってしまいます。絵を描いたり物を作ったりすることには時間を忘れるほど夢中になれる生徒に対して、厳しくばかり言って将来の芽を摘んでしまうことは避けたいです。
中学生のカリキュラムには楽しみながら取り組める課題をたくさん用意しています。やり直しできない材料で制作する場合もあれば、なにかのキャンペーンを企画立案するという想定で、粘土でグッズ制作をし、ポスターを作りプレゼンもするという課題にチャレンジする場合もあります。楽しみながらあれこれ考え手を動かして、気づいたらいろんなことができるようになっている、という仕組みの課題です。そうした授業を繰り返しながら、生徒自身が得意分野を自覚するきっかけを作るようにしています。
女子美の授業風景を想像すると楽しい気持ちになってきますね。
浜田先生
美術力を高めようとする女子美生同士が、まったく異なるタイプなのにお互いの長所を見つけて自然とリスペクトし合うといった関係をよく目にします。
女子美生の共通点は、その子の背中を押してくれたご家族の気持ちにあると考えています。親御さんが「うちの娘は女子美に向いているんじゃないか」と応援してくれたこと自体が幸福で、生徒本人とご家族の関係性が良くないと女子美には入学していないでしょう。家庭的に恵まれた環境で育った生徒が集まっているからこそ、みんなが自然に前向きな気持ちで過ごせるんです。
高校生と中学生にはどんな違いがあるの?
中学生は楽しみながら広く学び、高校生になったらそれに加えて専門性を深めた学びを用意しています。はじめは誰もが初心者ですが、楽しみながらこつこつ努力を続ける中高6年間を通して、女子美生らしい技能とセンスを発揮できるように成長していきます。
高校2年生から選択できるコース制のうち、浜田先生が担当されている絵画コースの特色を教えてください。
浜田先生
コース名からは想像できないかもしれませんが、一言で例えるなら「アート」を学びます。油彩やデッサンなどで平面作品の画力を上げる、自由なドローイングで自分だけのセンスを磨く、立体、写真のコラージュや映像作品を制作するといった多様な課題に取り組んでいます。
いずれのコースでも女子美生には「力を抜くとかっこ悪い」という感覚があります。女子美祭や運動会などの学校行事に全力で体当たりしている先輩たちの姿を見て、そこから学び取った「女子美生らしさ」を授業内外を問わず存分に発揮していますよ。


高校3年生の卒業制作の出来栄えには毎年驚かされています。
浜田先生 中学生が卒業制作作品を目の当たりにすると、その規模に圧倒されたりクオリティの高さに「自分はできるのか」といった不安を覚えたりするようです。でも誰もが同じようなことを思っていて、高校3年生になったらいつの間にか実力が身についています。
学習面について気にしている保護者も多いと思われます。
浜田先生
先に述べたように中学生が放課後に居残りをして制作するということは基本的にはありません。授業の時間内に終わらせるようにしてほしい理由は、計画性だけでなく、学科の勉強も大切にしてほしいからです。
女子美生になったから美術だけをやっていれば良い、というものではありません。きちんと勉強しないと希望の学科に進学できるとは限らなくなるかもしれません。本当にやりたいことを続けるならば、苦手なことでも諦めない気持ちを持ってほしいと思います。また本校では、学科の勉強が美術の制作に役立つこともたくさんあります。
私自身、女子美(高校)の卒業生なのですが、もともとは女子美の存在を知らなかったんです。両親は知っていましたので応援してくれました。ここに入学したいと考えた理由の一つに、美術の授業が多い学校の中でも勉強がしっかりできる普通科だという安心感があったからでした。
入学して初めて知った女子美の真の魅力
浜田先生のように表現者として対等に接してくれる先生方や、精神面でも共に高め合うクラスメイト。昔も今も変わらない女子美の魅力は「人」にありました。
浜田先生も女子美生だったのですね!
浜田先生 そうなんです。かわいい制服を着られる嬉しさもありましたが、友だちと過ごす学校生活からポジティブな刺激を受けていました。インターネットが無くて情報収集が難しい時代に、「なんでそんなことを知っていたんだろう」と不思議に思うような知識、それも文学だったり音楽だったりするわけですが、そういったものをどこまでも追求する仲間のバイタリティに影響を受けていました。


どんなに時が経っても変わらない女子美の良さとはどんなものですか。
浜田先生
ICT環境などの新しいことをいち早く取り入れる一方で、「変えない」ことも大切にしているところでしょうか。タブレットをはじめとするICT機器の活用が当たり前になった今、紙に絵を描かない人たちが増えています。そんな時代だからこそ、みんなが同じようにやれることを目指す必要性はないと生徒にも話しています。もちろん新しい技術が使えることは大切ですが、そこに合わせるべきとは限らないんです。
ある専門学校では美術の授業で「紙に描く」ということが廃止になったそうです。パソコンやタブレットで絵を描くのは良いのですが、紙に絵を描くときとの違いを知っているのと知らないのとではかなりの差が生じます。筆を持った感覚だったり、キャンバスに向かった時の絵具の匂いだったり、現実の複雑な要素を知覚的に経験していないとわからないこと、表現できないことがあるはずです。美術を学ぶのであれば、そこは必要不可欠な要素であると思います。

アートが好きな受験生にとって女子美に通うのが最適解かもしれませんね。
浜田先生 そうですね。いろんなタイプの生徒が集まる学校ですが、美術、アートが好きで入学したという共通の理由を全員が持っています。誰もが自分の居場所を見つけて、毎日を楽しむことができる環境が用意されています。ぜひ女子美生になってください!
編集後記
生徒一人ひとりの視点に立ってデッサンを指導する浜田先生のはつらつとした表情がとても印象に残りました。アーティストとして作品と一対一で向き合う美術授業の奥深さを垣間見られたような気がします。
イベント名 | 日時 |
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ミニ学校説明会 ※要予約 |
2024年1月11日(土) 14:00~ |
高等学校卒業制作展 (於 東京都美術館) |
2025年3月1日(土) ~6日(木) ※展示時間9:30~17:30 |
入試報告会 ※要予約 | 2025年3月22日(土) 10:00~・12:00~ |