瀧野川女子から“ビジネスウーマン”を社会へ!実践的な情報教育

瀧野川女子学園中学高等学校
「創造性教育」を核とした先端実学教育を掲げる瀧野川女子学園中学高等学校(以下、瀧野川女子)は、「キャリア教育優良学校」として文部科学大臣表彰も受賞する伝統校。独自のカリキュラムを備えた「情報教育」では、最先端技術を基礎から学びます。今回は、高校1年生必修の「ロボティクス実習」の様子をレポート。2名の生徒に実習の感想を、指導教員の先生方に実習の狙いについて話していただきました。

瀧野川女子の「ロボティクス実習」レポート

生徒たちは4~5人ほどのグループに分かれ、先生のスライドと自身のiPad Proの画面とを見比べながら受講していました。

まずはロボットの「手」を組み立てます。机の上に並ぶのは、テグスや木片、釘、ビニールテープなどの身近な材料。自分の手指を観察して関節や構造を考えながら、工夫して「手」を作ります。「手」の原型ができたら、機械との配線をつなぎ、実際に動作させるための機能も整えます。

木片ブロックで制作した手にコードをつなげている写真
ブロック型の木片などを用いて「手」を作成。写真は指を動かすためのコードをつないでいるところ

続いてプログラミング工程へ。今回の実習では生成AIの力も借ります。グループに1台ずつ据え付けられたiMacで、生成AI『Gemini』を開く生徒たち。プロンプト(AIに与える指示や質問のこと)を入力し、「手」を動かすためのコードを出力します。正しく設定したコードをシステムへ入力すると、ロボットの「指」が曲がる仕組みです。

先生が時々アシストに入り、「カンマが全角になっていないかな?」「指番号を表す数字は、実際の指と合っているかな?」と、解決のヒントを提示します。細かく微修正を加えたコードを入力すると、ウィーンと音を立てて「指」が動き始めました。生徒たちからは「わぁ!」「びっくりした!」と驚きの歓声が上がります。和気あいあいとした楽しい雰囲気の中、すべてのグループがロボットの「指」を自在に動かすことに成功しました。

瀧野川女子の授業の様子
実習の様子。材料選びから工夫して作ったロボットの手に、指を動かすために必要な配線を組んでいきます
授業中の様子
チームで協力しながら進めます
瀧野川女子の授業の様子
先生の得意を活かし分担して講義します

生徒たちが語る実習の魅力と学び

実習を終えた高校1年生のS.S.さんとM.S.さんに感想をうかがいました。

瀧野川女子S.S.さん
S.S.さん。幼い頃からものづくりに関心があり、工学系の進路も視野に入れている
瀧野川女子M.S.さん
M.S.さん。工作やプログラミングにやや苦手意識があるが、「知っておいて損はない」と前向きに挑戦

実習で面白かったことや、やりがいを感じたことはありましたか。

S.S.さん 初めて本格的なプログラミングに触れられたことです。私は工学系の進路に興味を持っているのですが、プログラミングは簡単なものにしか触れてきませんでした。今日は「手」という外観を作った後に「動かす」工程に踏み込めたのが良かったです。生成AIを使いながら、コードの仕組みを知ることもできて感動しました。

M.S.さん 私は今日の実習を通して、身近にある機械の中身を少し想像できた気がして、改めて「機械ってすごいな」と感じました。手をかざすと自動で水が流れるトイレや、日々何気なく使っているスマホなど、人が要求する動きをプログラミングしてつくられているんだなと思いました。機械の機能やその裏側の仕組みについて具体的に想像できて、興味深いなと感じました。

工夫した点や試行錯誤した点があれば教えて下さい。

S.S.さん 「効率のいい作り方」を常に考えながら作業を行いました。お手本を注意深く観察して、「ここはつながっているな」「ここは切る必要があるな」など、気づきを得ながら効率よくスピーディーに仕上げるための作業工程を頭の中で組み立てました。

M.S.さん 工作に苦手意識があったのですが、グループの友達からのアドバイスをよく聞きながら作業に向き合ったことで、見本通りに仕上げられました。苦手意識があったとしても、ちゃんと理解して知っておくべきだなと感じました。

実習を通して、考え方の変化や、成長を感じた点はありましたか。

S.S.さん プログラミングは難しそうだという印象を持っていたのですが、日本語で説明用のメモを追記できるという仕組みなどを知って、少しハードルが下がったかもしれません。また、自分にとってものづくりは得意分野だということを再確認できました。工学の分野をもっと深掘りしてみようと思います。

M.S.さん 「特定の目的のためにものを動かす」という機械の仕組みは、一つひとつが複雑で、さまざまな専門知識が必要だということが分かりました。一方で、実際に機械を組み上げる工程は細かい作業の積み重ねでした。グループのみんなと作業を行うのは楽しかったので、少し苦手意識を克服できたかもしれません。

情報教育で未来を生き抜く力を育む!

「ロボティクス実習」の指導教員である3人の先生方に、実習の狙いや今後の展望についてうかがいました。

瀧野川女子の先生方
左から、理科(物理)の明石俊哉先生、情報科の山岸容子先生、理科(化学)の齋藤敦先生

「ロボティクス実習」の概要を簡単に教えてください。

明石先生 人間の手のひらを再現する実習を通して機械工学系のことを学ぶという講義でした。手のひらにあたる部分には「サーボモーター」という機械を用い、電気信号を送って力を加えることで動かします。実際に動くものを作ることで、ものづくりを経験的に学んでもらいたいと考えています。

実習の狙いを教えてください。

明石先生 本校は、世の中にまだないものを生み出すことを重視する「創造性教育」を行っています。女子校にはどうしても文系の生徒が多い傾向があるのですが、機械工学系の経験を積むことで「こういうの好きかも」と気づいてもらえたら嬉しいです。実際に、文系の進路を考えていた生徒がこの実習をきっかけに「楽しいからもっとやりたい」と、希望者向けの発展講座に参加してくれたことがありました。

齋藤先生 私たちの生活を支えるのはアプリケーションだけではなく、実際に動くハードウェアもとても重要です。生徒たちはデジタルネイティブ世代なので、デジタルなプログラムにばかり目が行きやすく、アプリケーションを作るというアイデアが出てきがちですので、デジタルとハードウェアのつながりも教えていきたいと思っています。

山岸先生 「創造性教育」の先にある「ものづくり」の最初のきっかけになればいいなと思います。コンピューターや機械を道具にすればこんなことができるという気づきを得る機会にして欲しいです。

瀧野川女子の授業の様子
先生からのアシストを受けコードを仕上げます

理工系の学びやものづくりの体験は、女子生徒にどのような影響を与えていると感じますか。

齋藤先生 もちろん個人差はありますが、女子は男子に比べると手先が器用な生徒が多いんです。数学などの理系科目に対して苦手意識を持っている女子生徒でも、手先が器用であれば工学の道もアリかもしれないと気づいてもらえたら嬉しいですね。

山岸先生 「こういうものを作りたい」という思いを持ってものづくりをする上で、理系・文系に囚われずに取り組んでほしいです。文系だからと拒絶するのではなく、機械やAIが「やりたいこと」を実現する道具だと実感できれば、理系科目が苦手で文系を選ぶ生徒たちの、心理的なハードルも下げられると考えています。

瀧野川女子でのロボティクスや情報教育の発展について、今後の展望を教えてください。

山岸先生 今回の実習はあくまで入門なので、より自由度の高い課題に取り組める実習を行いたいと考えています。「手」を作るなど指定せず、「道具としてどんなものが作れるのか」「何が作りたいか」から考えてもらえるといいですね。

編集後記

従来の理系科目の分野を横断し、さまざまな知識にもとづいて行われる「ものづくり」。瀧野川女子のロボティクス実習では、生徒たちが実際に手を動かして工作やプログラミングに取り組むことで、創造性教育の先にある「ものづくり」の魅力を体験していました。自分が作りたいものを作るために、性別や苦手意識に囚われず、工学などの理系分野に挑戦する女子生徒も今後ますます増えていくのではないでしょうか。

イベント情報

イベント名 日時
学校説明会&授業見学(対象:小学3年生〜6年生) 2025年10月18日(土)9:30〜12:00
入試チャレンジ(対象:小学5年生〜6年生) 2025年10月25日(土)13:30〜16:00
入試チャレンジ解説会(対象:小学5年生〜6年生) 2025年11月1日(土)13:30〜16:00
秋のオープンスクール(対象:小学2年生〜6年生) 2025年11月8日(土)9:00〜12:30
学校説明会&授業見学(対象:小学3年生〜6年生) 2025年11月15日(土)9:30〜12:00